葵祭 祭儀

葵祭

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/18 00:57 UTC 版)

祭儀

前儀

さまざまな前儀(5月3日流鏑馬神事・5月12日御蔭祭・御阿礼神事)が行われるが、中でも流鏑馬神事(やぶさめしんじ)が有名である。糺の森(ただすのもり)の真中にある全長500メートルの馬場(ばば)を、公家風の装束姿や武家風の狩装束姿の射手(いて)たちが疾走する馬上から、3つの的を射抜くというものである。

「矢伏射馬(やぶさめ)」とも書かれる流鏑馬は、その文字が示すように矢を射ること。馬を走らせながら正確に的を射抜く高度な技術が必要とされるため、人気の行事の一つである。

雄略天皇の即位の年(457年)、「騁射(うまゆみ)」を行ったと『日本書紀』が伝え、「賀茂祭に民衆を集めて騎射を禁ず」の記事が『続日本紀』にしるされるなど、古い歴史を持つ日本古来の馬術とされる。

射手のかけ声「イン、ヨー」とは「陰陽」のこと。みごと矢が的中すれば五穀は稔り、諸願は成就すると言い伝えられている。文亀2年(1502年)に中絶したが、昭和48年(1973年)、下鴨神社式年遷宮の記念行事として復活。「糺の森流鏑馬神事保存会」によって公家装束による流鏑馬が保存・伝承されている。

また、上賀茂神社では競馬会神事(くらべうまえじんじ)などが執り行われる。

宮中の儀・路頭の儀・社頭の儀

葵祭は、宮中の儀・路頭の儀・社頭の儀の3つから成るが、うち宮中の儀は現在では行われていない。

5月15日乗尻[* 1]を先頭に検非違使[* 2]山城使[* 3]内蔵寮史生[* 4]馬寮使[* 5]舞人[* 6]近衛使(勅使)代[* 7]陪従[* 8]内蔵使[* 9]からなる騎馬の文官・武官を中心とする本列(勅使列)と、斎王代(後述)をはじめとする女人列、これら平安時代の衣装を身にまとった人々が牛車とともに京都御所から下鴨神社を経て上賀茂神社まで約8kmの道のりを行列する路頭の儀(ろとうのぎ)が行われる。

下鴨神社と上賀茂神社においては、実際の勅使である掌典職の掌典が祭文を奏上する社頭の儀(しゃとうのぎ)がとり行われる。

有料拝観席の受付は

  • 路頭の儀(行列を見る)有料拝観席(御所と下鴨神社参道)の受付→京都市観光協会
  • 社頭の儀(儀式を見る)有料拝観席(下鴨神社楼門内)の受付→下鴨神社

と管轄がことなる。


注釈

  1. ^ のりじり。古くは六衛府の衛士が勤めたとされる騎馬隊。
  2. ^ けびいし。「検非違使尉」と「検非違使志」といった検非違使庁の官吏。
  3. ^ やましろのつかい。賀茂神社は、京職の管轄外で山城国の国官の管轄であったため、国府次官の「山城介」を警備と監督にあてた。
  4. ^ くらりょうのししょう。下鴨神社・上賀茂神社に献上する御幣物を管理する役人。
  5. ^ めりょうのつかい。左馬允という左馬寮の官吏を充てた。
  6. ^ まいびと。神事用の歌舞「東遊(あずまあそび)」を舞う武官。
  7. ^ このえのつかい。かつては、近衛中将が賀茂祭の勅使として遣わされる慣例があったため。もっとも、実際の天皇の使いである勅使として天皇から掌典職の掌典が遣わされているが、勅使は行列には加わらず、「近衛使代」と呼ばれる代行者が行列に参加している。
  8. ^ べいじゅう。歌楽を奏する武官。
  9. ^ くらのつかい。内蔵寮の官吏で、勅使が神前で奏上する御祭文を奉持する。
  10. ^ くろうどどころばいじゅう。斎院の蔵人所(物品会計を司る役)の雅楽を演奏する役人。
  11. ^ みょうぶ。一般女官の総称。小袿、単、打袴。
  12. ^ にょじゅ。女官の下位で、食事を司る。小袿、単、打袴。
  13. ^ わらわめ。行儀見習いとして奉仕する少女。
  14. ^ むまのりおんな 神事を司る女官で、騎馬で参向する。
  15. ^ ないじ。身分の高い貴族の娘から選ばれた女官。
  16. ^ おんなべっとう。斎院の内侍以下女官を監督する役。
  17. ^ うねめ。斎院の神事を司る女官で、斎王代同様、額の両側に日蔭糸を垂れ流す。青海波といわれる彩色模様の装束。

出典

  1. ^ 「年中行事事典」p221 1958年(昭和33年)5月23日初版発行 西角井正慶編 東京堂出版
  2. ^ 古都の秋彩る歴史絵巻 京都・時代祭”. 日本経済新聞 (2016年10月22日). 2021年1月7日閲覧。
  3. ^ 葵祭の行列が今年も中止に 京都三大祭、新型コロナ感染防止で”. 京都新聞 (2021年3月15日). 2021年6月6日閲覧。
  4. ^ 笠谷和比古「徳川家康の源氏改姓問題」『日本研究』第16号、国際日本文化研究センター、1997年9月、33-48頁、doi:10.15055/00000770ISSN 09150900NAID 120005681725 
  5. ^ 「葵祭」の「葵」って?
  6. ^ 平安城加茂社葵祭文化庁 文化遺産オンライン 歌川芳艶画 1863年(錦絵,孝明天皇が賀茂上下社に行幸の図)
  7. ^ 【京都御所と葵祭】斎王物語
  8. ^ 裏千家HP>千 万紀子様、第54代斎王代に
  9. ^ 京都女性憧れ「斎王代」に同大生 「精いっぱいご奉仕」
  10. ^ 葵祭の斎王代に29歳女性会社員 行列4年ぶりに


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