荒神
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/17 06:56 UTC 版)
仏教における荒神信仰
仏教系では仏・法・僧の三宝を守る神様とされる。荒神の尊像は、三面六臂または八面六臂(三面像の頭上に5つの小面を持つ)で、不動明王に通じる慈悲極まりた憤怒の形相である。六臂の持ち物はその像によって差異があるが、一般には 右手…独鈷・蓮華・宝塔(五鈷杵・金剛剣・矢)。左手…金剛鈴・宝珠・羯磨(金剛鈴・弓・戟または槍)のような形がとられている。江戸時代には民家の台所には必ずといってよいほど祀られていた。そしてその祀り方は御札あり、御宮あり、幣束もあっていろいろな形がとられていた。
民間習俗における荒神信仰
- あやつこ(綾子[5])
子供の「お宮参り」の時に、鍋墨(なべずみ)や紅などで、額に「×」、「犬」と書くことをいう。悪魔よけの印で、イヌの子は良く育つということに由来するとされ、全国的にでは無いが、地方によって行われる所がある。
古文献によると、この「あやつこ(綾子)」は紅で書いたとされるが、紅は都の上流階級でのみ使われたことから、一般の庶民は「すみ」、それも「なべずみ」で書くのが決まりであったという。この「なべずみ」を額に付けることは、家の神としての荒神(こうじん)の庇護を受けていることの印であった。東北地方で、この印を書くことを「やすこ」を書くと言う。宮参りのみでなく、神事に参列する稚児(ちご)が同様の印を付ける例がある。
「あやつこ(綾子)」を付けたものは、神の保護を受けたものであることを明示し、それに触れることを禁じたのであった。のちには子供の事故防止のおまじないとして汎用されている。柳田國男の『阿也都古考』によると、奈良時代の宮女には「あやつこ(綾子)」の影響を受けたと思われる化粧の絵も認められ、また物品にもこの印を付けることもされていたらしい。
語源
- 語源は不明である。
日本の古典にある伝承には、和魂(にぎみたま)、荒魂(あらみたま)を対照的に信仰した様子が記されている。民間伝承でも、温和に福徳を保障する神と、極めて祟りやすく、これの畏敬(いけい)の誠を実現しないと危害や不幸にあうと思われた類の神があった。後者は害悪をなす悪神だが祭ることによって荒魂が和魂に転じるという信仰があった。そこでこの「荒神」とはこの後者をさしたものではないかとの説もある。ただし同様な思想はインドでも、例えば夜叉・羅刹などの悪神を祀りこれを以って守護神とする風習があり、またヒンドゥー教(仏教からすれば外道の宗教)の神が、仏教に帰依したとして守護神・護法善神(いわゆる天部)とされたことも有名であり、純粋に仏教の枠内でも悪神を祀って善神に転じるということはありうる。神仏習合の文化の中で、陰陽師(おんようじ)やその流れを汲む祈祷師(きとうし)が、古典上の(神道の)荒ぶる神の類を、外来の仏典に基づく神のように説いたことから発したのではないかとの説、古来からいう荒魂を祀って荒神としたのではないかという説もある。しかし、祀って和魂なり善神なりに転じたのであればもはや荒魂でも悪神でもなくなるため、守護神になった上で「荒神」とネガティブな呼称でよばれ続けるのは他に例がない。
- ^ 荒神-”あらがみ”と”こうじん” アラハバキ解・汎日本古代信仰の謎に迫る
- ^ 荒神(あらがみ) とは? goo辞書
- ^ あら‐がみ【荒神】 weblio辞書
- ^ 鈴木正崇「伝承を持続させるものとは何か―比婆荒神神楽の場合」『国立歴史民俗博物館研究報告』186集、2014年、 1-29頁
- ^ 漢字表記の出典:広辞苑第五版(版:岩波書店)
- ^ スペシャルドラマ「荒神」メインビジュアル・放送日決定! NHK
- ^ 講座日本の民俗宗教 3/五来重/〔ほか〕編 - オンライン書店e-hon
- ^ 講座日本の民俗宗教 - Webcat Plus
- 1 荒神とは
- 2 荒神の概要
- 3 仏教における荒神信仰
- 4 創作の題材としての荒神
荒神と同じ種類の言葉
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