自然環境保全地域 指定

自然環境保全地域

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/29 17:44 UTC 版)

指定

自然環境保全地域、原生自然環境保全地域は環境大臣が、都道府県自然環境保全地域は都道府県知事が、それぞれの一定の要件に該当するもののうち、その区域における自然環境を保全することが特に必要なものを指定することができるものとされる(自然環境保全法第14条、同法第22条、同法第45条)。各都道府県知事宛自然保護局長通知『自然環境保全法の運用について』では、「原生自然環境保全地域においては、原生の状態を維持するため、自然環境保全地域においては、すぐれた自然環境を保全するためそれぞれ厳しい行為の制限を行つていくこととしており、また、当該地域における土地利用のあり方等と関連するところも大である」とし、指定に関する指示が行われている。

利用を前提としていない自然環境保全地域等は、日本国憲法で規定される私権の制限が大きく、観光振興につなげることも困難なことがあり、地元も前向きではない傾向があるといい[2]、下記のとおり指定地点数も伸びていない。自然保護推進の立場からは、日本自然保護協会もこうした現状を問題としている[4]

指定の目安

自然環境保全地域については、概ね次のとおり(自然環境保全法第22条、自然環境保全法施行令第4条)。

原生自然環境保全地域については、#原生自然環境保全地域を参照。

保全計画と保全事業

自然環境保全地域等における自然環境の保全のための規制又は施設に関する計画を「保全計画」、自然環境保全地域等に関する保全計画に基づいて執行する事業を「保全事業」という。

原生自然環境保全地域、自然環境保全地域に関する保全計画は、いずれも環境大臣が決定する。ただし、原生自然環境保全地域については、関係都道府県知事及び中央環境審議会の意見をきいて決定するものとされている。環境大臣は、保全計画を決定したときは、その概要を官報で公示し、かつ、その保全計画を一般の閲覧に供しなければならないものともされている(自然環境保全法第15条、同法第23条)。自然環境保全地域の場合、同法第23条第2項により次の事項が定められる。一 保全すべき自然環境の特質その他当該地域における自然環境の保全に関する基本的な事項、二 特別地区、海域特別地区の指定に関する事項、三 当該地域における自然環境の保全のための規制に関する事項、四 当該地域における自然環境の保全のための事業に関する事項。原生自然環境保全地域においては、環境大臣が保全計画により自然環境保全法第19条に基づく立入制限地区を指定することができる。

原生自然環境保全地域、自然環境保全地域に関する保全事業は「国」が執行するものとされている。地方公共団体は、環境大臣に協議し、その同意を得て、原生自然環境保全地域に関する保全事業の一部を執行することができるものとされている(同法第16条、同法第24条)。

保全事業の執行として行われる行為は、原生自然環境保全地域における禁止行為(自然環境保全法第17条)、自然環境保全地域の特別地区における許可の必要な行為(同法第25条)の対象とはならない(禁止行為等については#規制参照)。

自然環境保全法上は、都道府県自然環境保全地域における保全計画、保全事業に関する規定は特にないが、これは都道府県の権限で行われるものであるということで、保全計画、保全事業を欠くことを予定したものではないという[5]

環境以外の関係行政

自然環境保全地域等の所管は環境省等環境行政であるが、自然環境保全地域等における規制は、下記のものなど多くの行政分野が関わることとなり、環境省もネットで公開している通達などで他省庁との協調への配慮を示している。ユネスコ世界遺産自然遺産)への推薦に際しては、これらの諸官庁が共同で取り組んでいる[6]

  1. 林野庁
    国有林には、自然環境保全地域等(森林生態系保全地域などと呼称している)に指定されている区域もある。農林水産省も、「適切な森林施業を通じて自然環境の保全にも積極的な役割を果たしていく」とし、環境行政側に農林漁業との調整を求めている[7]
  2. 文化庁
    自然環境保全地域等の環境が「文化」に関係することもある[8]
  3. 国土交通省
    国土利用計画法第9条に基づく土地利用基本計画における自然保全地域に関係する[9]。環境省は、自然環境保全地域、原生自然環境保全地域の「指定等を予定する区域を国土利用計画法第9条の規定に基づき都道府県知事が策定する土地利用基本計画の自然保全地域とする等の変更手続が必要である」という内容の通達を発している(『原生自然環境保全地域及び自然環境保全地域の指定等について』公布日 2005年10月1日)。

環境省は「自然環境保全行政は、農林漁業、鉱業、電源開発、電気事業、ガス事業、都市計画、道路、河川、文化財、運輸、通信等に関する他の行政及び諸産業に関連するところが大きい」としているところで[5]、公益事業が並ぶその中でも上記のとおり農林漁業に対する配慮は突出している。なお、自然環境保全法成立当時も、当時の環境庁と農林省建設省との一致が困難であったという[2]


出典

  1. ^ 自然公園においても、特別地域、海域公園地区、普通地域等の区分けがある。一方で、自然公園特別地域における第一種から第三種までのような細分化は、自然環境保全地域の特別地区には規定されていない。
  2. ^ 環境省は、『自然環境保全法の運用について』で、「原生自然環境保全地域及び自然環境保全地域は、自然環境を適正に保全し、将来の国民に継承していくという性格の地域であり、すぐれた自然の風景地を保護するとともにその利用を増進を図るという性格の地域である自然公園とは、その性格を異にする」としている。
  3. ^ 自然環境保全法第14条では、「森林法(中略)第二十五条第一項 又は第二十五条の二第一項 若しくは第二項 の規定により指定された保安林(同条第一項 後段又は第二項 後段において準用する同法第二十五条第二項 の規定により指定された保安林を除く」とも規定されている。)の区域を除く。





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