結核性髄膜炎
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/21 13:59 UTC 版)
Tuberculous meningitis | |
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CT scan showing tuberculous meningitis | |
分類および外部参照情報 | |
診療科・ 学術分野 | 神経学 |
ICD-10 | A17.0, G01 |
ICD-9-CM | 013.0, 322.9 |
eMedicine | neuro/385 |
MeSH | D014390 |
病態
結核性髄膜炎は結核菌が血行性に髄膜へと急性に拡散して生じるわけではない。1933年にRichとMcCordockらは82例の結核性髄膜炎の剖検例を報告し、結核性髄膜炎の病因に関して規定した。結核の初期感染時、あるいは慢性結核の経過中に身体中のどこかの潜在性結核病変がたまたま再燃し、脳実質あるいは髄膜に粟粒結核病巣が作られるのである。感染初期の段階で少数の粟粒大の結核結節が脳実質や髄膜に散布される。結核結節は融合と増殖によって成長し、通常は乾酪化する。乾酪化病巣が髄膜炎を惹起する傾向を示すかどうかは、病巣がくも膜下腔にどれだけ近いか、免疫によって線維性被膜が形成される速度によって規定される。上衣下の乾酪化病巣は数ヶ月ないし数年間も非活動性のままでいて、後にくも膜下腔へ結核菌や結核抗原をばらまくことによって髄膜炎を引き起こすことがある。
結核性髄膜炎の神経合併症は結核菌や結核抗原がくも膜下腔へ散布され、これに対して過剰反応が引き起こされることで生じる。この結果、濃厚な浸出液が分泌され、それは脳底槽を充満し、脳底部で脳血管をとりまき、その結果ウイリスの動脈輪を形成する血管を絞扼することとなる。数日のうちに増殖性くも膜炎が形成される。炎症性浸出性腋芽脳底槽に存在することによって髄液流がせき止められ、その結果閉塞性水頭症が発生する。線維素性癒着ができるとくも膜顆粒による再吸収が阻害さる。髄液の再吸収が阻害されると交通性水頭症がおこる。結核の血管壁への直接浸潤によってしょうじた血管炎ないしくも膜炎のために血管が脳底部で圧迫されて脳虚血や脳梗塞が生じる。
症状
結核性髄膜炎は真菌性髄膜炎とともに亜急性から慢性の経過をたどる髄膜炎の代表であるがその症状は一様ではない。髄膜刺激症状が出現する前に発熱、頭痛、悪心、嘔吐、食思不振などが2週間あるいはそれ以上続くことがある。これを前駆期という。経過とともに髄膜刺激症状をしめすことが多い。また性格変化、記憶障害といった緩徐進行性の認知機能低下で発症することもある。
- 成人結核性髄膜炎患者において、発熱は全症例の79%、頭痛は71%、髄膜刺激症状は56%にみられた[1]。
検査
- 頭部MRI
初期は異常が認められないこともある。結核性髄膜炎は脳底髄膜炎の形をとるため、脳底部に均一な増強効果が認められる。経過中に還流障害による二次性水頭症、血管炎による脳梗塞、結核腫形成が認められると結核性髄膜炎の可能性が高くなる。結核腫のように造影MRIで結節状またはリング状に造影効果を示すものにはクリプトコッカス髄膜炎、ウイルス性脳炎、サルコイドーシス、悪性リンパ腫、癌の髄膜転移などがある。診断に迷うときは開頭生検も考慮する。
- 髄液検査
結核性髄膜炎の古典的な脳脊髄液異常は、髄液圧の上昇、100~500mg/dlの範囲で髄液蛋白の上昇、10~500/μlの範囲のリンパ球優位の白血球増多、糖の低下である。病初期には脳脊髄液中の白血球はほとんど出現しないか、あるいは最初に多核球が優位でその後、1~7日かけてにリンパ球が優位になる。抗結核薬を投与するとリンパ球優位から多核白血球優位となる。 髄液培養の感度は71%、髄液塗沫標本では58%である。培養の結果が出るには2~4週間かかる。髄液PCRでも感度が56%で特異度が98%である。髄液ADA活性が9U/l以上で結核性髄膜炎が疑われ、15U/l以上では強く疑われる。髄液ADAは細菌性髄膜炎など他の感染症でも高値となるため特異度には問題がある。
診断
結核性髄膜炎を疑うTIPSがある。
- 7日より長い前駆期
- 眼底検査での視神経萎縮
- 局所神経症状
- 不随意運動(特に小児)
- 髄液多核球が50%以下
1つでもあれば感度は極めて高く、3つ以上あれば特異度は極めて高い。また細菌性髄膜炎ではないのに髄液ADA高値なども参考なる。成人では肺病変と髄膜炎が合併する頻度は高くなく、肺結核がなくとも結核性髄膜炎は否定出来ない。
- ^ Imam YZ, et al. Adult Tuberculous Meningitis in Qatar: A Descriptive Retrospective Study from its Referral Center. Eur Neurol. 2015;73(1-2):90-97.
- 1 結核性髄膜炎とは
- 2 結核性髄膜炎の概要
- 3 治療
- 4 予後
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