砂の女
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/17 09:53 UTC 版)
登場人物
- 男
- 名前は仁木順平。31歳。身長158センチ、体重54キロ。髪はやや薄くオールバック、油は使用せず。視力は右0.8、左1.0。肌は浅黒く、面長。眼と眼がよっていて鼻が低い。血液型はAB型。角張った顎と、左耳の下にほくろが目立つ以外には特徴なし。舌がもつれたような、まどろっこしい話方。内向的で頑固だが、人づきあいはとくに悪くはない。職業は教師。趣味は昆虫採集。
- なお年齢は、本文中、「仁木順平、三十一歳」と書かれているが、最後の「催告」と「審判書」では、「昭和2年3月7日生」(1927年3月7日生)となっており、失踪時の昭和30年(1955年)8月には28歳に当り、矛盾している。英訳版では1924年(大正13年)生となっている[1]。
- 老人
- 漁師らしい老人。なめしかけの兎の皮のような頬。充血した眼にめやにが厚くこびりついている。村長らしき男。
- 女
- 30歳前後の、人の好さそうな小柄の女。浜の女にしては色白。笑うと左の頬にえくぼが浮かび、愛嬌のある顔だが、眼のふちが眼病で赤くただれている。去年の台風で夫と中学生の一人娘を亡くした。
- 村人たち
- 掻き出した砂を運んだり、配給品を配達している。モッコやオート三輪で砂丘を往復している。
作品評価・解釈
『砂の女』は日本国内のみならず、海外でも注目され、「現代文学の最良の収穫」という高い評価をされている。この作品を機に、安部公房は、国際的な作家とみなされることになった[7]。
大佛次郎は、「『砂の女』は変わったもので、世上に繰り返されている小説ではなく、また二度と書き得ないもので、新鮮である」と評し[8]、「私は新しいイソップ物語りとして愛読した」と述べている[8]。
三島由紀夫は、「詩情とサスペンスに充ちた見事な導入部、再々の脱出のスリル、そして砂のやうに簡潔で無味乾燥な突然のオチ、……すべてが劇作家の才能と小説家の才能との、安部氏における幸福な結合を示してゐる」と評し[9]、以下のように解説している。
阿刀田高は、「小説の一番の面白さは、謎が提示され、それが深まり、最終的にそれが解けてゆくことだが、この作品はその構造を持っている。砂がもう一つの主人公になっていて、砂は日ごとに変わり、独特の模様を描き、無機的である。生きているような様相を持っているし、何もないように見えながら、生命体を隠していたりして、非常に不思議な存在の砂に目をつけたというところが、この小説の面白さじゃないかと思う。人間の自由とは何なのか? 自分たちが接している日常とは何なのか? と、根本から問いかけるような側面があって、男と女の根源にも問いかけるようなことも持っている。これだけ小説の望ましい姿が詰め込まれている作品は、なかなか見当たらない。このぐらいの小説を生涯に一つ書けたら、死んでもいいぐらいに(同作品に)惚れている」と評している[要出典]。
翻案
映画
ラジオドラマ
舞台
- ケムリ研究室 no.2『砂の女』
受賞
注釈
- ^ a b c d 「作品ノート16」(『安部公房全集 16 1962.04-1962.11』)(新潮社、1998年)
- ^ a b c ドナルド・キーン「解説」(文庫版『砂の女』)(新潮社、1981年。2001年、2003年改版)
- ^ 安部公房「『砂の女』の舞台」(朝日新聞 1968年6月26日号に掲載)
- ^ 谷田昌平「『砂の女』と安部公房氏」(東京新聞 1986年6月11日号に掲載)
- ^ a b c 安部公房「砂のなかの現実」(映画「砂の女」パンフレット 1964年2月15日)
- ^ 安部公房「著者の言葉――『砂の女』」(『砂の女』函表文)(新潮社、1962年)
- ^ 『新潮日本文学アルバム51 安部公房』(新潮社、1994年)
- ^ a b 大佛次郎「選評(第14回・1962年度読売文学賞)」(読売新聞夕刊 1963年1月28日号に掲載)
- ^ a b 三島由紀夫「推薦文」(『砂の女』函裏文)(新潮社、1962年)
- ^ “紀伊國屋演劇賞の団体賞に劇団俳優座、個人賞にひびのこづえ・松尾貴史ら5名”. ステージナタリー. ナターシャ (2021年12月17日). 2021年12月18日閲覧。
- ^ “第29回読売演劇大賞、大賞・最優秀作品賞はNODA・MAP「フェイクスピア」”. ステージナタリー (ナターシャ). (2022年2月6日) 2022年2月6日閲覧。
- ^ “国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online”. ndlonline.ndl.go.jp. 2022年10月10日閲覧。
出典
砂の女と同じ種類の言葉
固有名詞の分類
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