抱きしめたい
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/06 15:33 UTC 版)
レコーディング
「抱きしめたい」のレコーディングは、1963年10月17日にEMIレコーディング・スタジオのスタジオ2で行なわれた。本作は「ジス・ボーイ」と同じく、ビートルズが初めて4トラック・レコーダーを使用してレコーディングを行った楽曲で、完成までに17回録り直されている[13]。1963年10月21日にジョージ・マーティンによってステレオ・ミックスとモノラル・ミックスが作成された[14]。ちなみにステレオ・ミックスに関しては、1965年6月8日に新たに作成され[15]、その後1966年11月7日にはオーストラリアやドイツで発売されたコンピレーション・アルバムのために再び作られている[16]。
なお、1964年1月27日にはパリのパテ・マルコーニスタジオでドイツ語版のレコーディングが行われた(詳細は後述を参照)。
発売
「抱きしめたい」のシングル盤は、イギリスでは1963年11月29日にEMIパーロフォンから発売され、B面には「ジス・ボーイ」が収録された。シングル盤は予約だけで100万枚を記録し[17]、発売日の1963年11月29日時点で全英シングルチャートで1位を獲得[18][19]。初登場1位獲得後、5週連続で1位を獲得し、21週にわたって上位50位以内にチャートインした[4]。
これを受け、ビートルズのレコードの発売を拒否してきたキャピトル・レコードも方針を変え、レコードの発売権の独占契約を締結[17]。1963年12月26日にB面に「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」[注釈 1]を収録したシングル盤が発売された。1964年1月18日付のBillboard Hot 100で初登場45位を記録し[20]、2月1日付の同チャートでアメリカでは初となる第1位を獲得[21]。以降7週連続で第1位を獲得し、15週に渡ってチャートインを果たした[5]。また、同1964年度年間ランキングでも第1位[22]。『キャッシュボックス』誌では、8週連続第1位を記録し、年間でも第1位となっている。アメリカだけでも500万枚以上、イギリスでも170万枚以上の売上を記録し、『シー・ラヴズ・ユー』に続いてミリオン・セラーとなった。全世界で1,200万枚を売り上げた本作は、2024年現在世界歴代シングル売上第5位(ギネス・ワールド・レコーズ認定による)である。
アメリカでは、キャピトル・レコードからの1作目のアルバム『ミート・ザ・ビートルズ』にも収録された。イギリスでは、オリジナル・アルバムには未収録となっており、1966年に発売されたコンピレーション・アルバム『オールディーズ』でアルバム初収録となった。このほか『ザ・ビートルズ・ビート』、『ザ・ビートルズ1962年〜1966年』、『ザ・ビートルズ/グレイテスト・ヒッツ』、『リヴァプールより愛を込めて ザ・ビートルズ・ボックス』、『ビートルズ・イン・イタリー』、『20グレイテスト・ヒッツ』、『パスト・マスターズ Vol.1』、『ザ・ビートルズ1』などのコンピレーション・アルバムに収録された。なお、2006年に発売されたシルク・ドゥ・ソレイユのショーのサウンドトラック・アルバム『LOVE』には、ハリウッド・ボウルでのライブ音源とミックスされた音源が収録された[23][24]。
日本においては、1964年2月5日にデビューシングルとして発売された(東芝音楽工業オデオン・レーベル・OR-1041)。東芝音楽工業では当初、「プリーズ・プリーズ・ミー」を日本でのビートルズのデビュー曲に決めていたが、アメリカでの人気を考慮して急遽発売が前倒しされた。そのため1964年発売当時のレコード番号は『プリーズ・プリーズ・ミー』の方が若い(OR-1024)。また既にジャケット等の印刷が始まった後で発売順が変更されたことから、初期ロットの一部にはジャケットの差し替えが間に合わず『プリーズ・プリーズ・ミー』を第1弾シングルとして掲載しているものがある[25]。 ただし1964年当時における東芝音楽工業の発売日記録はなく、当時の新聞記事(2月5日『プリーズ・プリーズ・ミー』発売、2月10日『抱きしめたい』発売)から判断して、実質的な発売も前倒しが間に合わなかった可能性がある[26]。その後、日本での1作目のアルバムとして発売された編集盤『ビートルズ!』に収録された。
抱きしめたい(ドイツ語)
「抱きしめたい(ドイツ語)」 | ||||||||||
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ビートルズ の シングル | ||||||||||
B面 | シー・ラヴズ・ユー(ドイツ語) | |||||||||
リリース | ||||||||||
規格 | 7インチシングル | |||||||||
録音 |
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ジャンル | ロックンロール | |||||||||
時間 | ||||||||||
レーベル | オデオンレコード | |||||||||
作詞・作曲 | レノン=マッカートニー=ニコラス=ヘルマー | |||||||||
プロデュース | ジョージ・マーティン | |||||||||
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1964年にドイツ語版「抱きしめたい(ドイツ語)」(原題 : Komm, Gib Mir Deine Hand)が発表された。タイトルの"Komm, Gib Mir Deine Hand"を邦訳すると、「来て、あなたの手を取りたい」という意味になり、オリジナルの「あなたの手を握りたい」と似たようなものになっているが、歌詞は原作をドイツ語訳したものではなく、自由に詩作されたものである。
EMI西ドイツ支部のプロデューサー、オット・デムラーの要請により、ルクセンブルク出身のタレントであるキャミロ・フェルゲン[注釈 2]によって歌詞がドイツ語詞に訳された[27]。1964年1月29日にパリのパテ・マルコーニ・スタジオで「シー・ラヴズ・ユー(ドイツ語)」と共に録音されている[注釈 3]。ただしドイツ語版の録音を拒否したビートルズは、当日予約していたスタジオに出向かず、滞在していたホテルに立てこもった。事態の収拾をつけるべくプロデューサーのジョージ・マーティンがホテルに出向きビートルズを説得してスタジオに向かわせたという。彼らがマーティンに反抗したのは、この時が初めてだった[28]。この2曲を収録したシングルは1964年に西ドイツとオーストリアで発売された。 イギリスではビートルズ解散の8年半後の1978年12月2日に発売されたアルバム『レアリティーズ』で初収録となり、アメリカでは1964年7月20日に発売されたキャピトル編集盤『サムシング・ニュー』、日本では1965年5月5日に発売された編集盤『ビートルズ No.5!』に収録された。CD作品では、1988年3月にリリースされたコンピレーション・アルバム『パスト・マスターズ Vol.1』で初収録となった。
2019年に公開された映画『クリス・コルファー』のオープニング・テーマとして使用された[29]。
注釈
- ^ オリジナル・シングルのなかで英パーロフォン盤と米キャピトル盤で、B面曲が変更されたのは『ア・ハード・デイズ・ナイト』と『抱きしめたい』の2作品のみとなっている。
- ^ ジャン・ニコラス(Jean Nicolas)とハインツ・ヘルマー(Heinz Hellmer)は同一人物で、フェルゲンのペンネーム。
- ^ なお、このドイツ語版2曲の録音が予定より早く終了したため、残り時間を使って「キャント・バイ・ミー・ラヴ」が録音された
- ^ 後に発表された「イッツ・オンリー・ラヴ」や「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ」では、実際に「I get high」と歌っている。
- ^ タイトルは「Dame tu mano y ven」
出典
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抱きしめたい!
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/24 21:59 UTC 版)
『抱きしめたい! I WANNA HOLD YOUR HAND』(だきしめたい)は、1988年7月7日から9月22日までフジテレビ系列「ナショナル木曜劇場」で放送されたテレビドラマ。
- ^ テレビドガッチ (2013年10月1日). “14年ぶりW浅野が復活!『抱きしめたい!Forever』は今夜放送!”. 2013年10月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年10月2日閲覧。
- ^ Foreverは声や写真のみの出演。
- ^ 世紀末スペシャルでは岡田義徳が演じている。
- ^ シネマトゥデイ (2013年5月29日). “市原隼人、W浅野と共演!「抱きしめたい!」で14年ぶりの新キャストに決定!”. 2013年10月2日閲覧。
- ^ 映画.com (2013年8月27日). “W浅野「抱きしめたい!Forever」主題歌でELTが大ヒット曲をカバー”. 2013年10月2日閲覧。
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- 2 抱きしめたい!の概要
- 3 キャスト
- 4 スタッフ
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