怪人二十面相 登場作品

怪人二十面相

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/20 01:00 UTC 版)

登場作品

怪人二十面相は『少年探偵団』、『サーカスの怪人』など、代作も合わせ合計で29の作品に登場した。『大金塊』で登場しなかったのは、時局柄怪盗の出てくる話を避けたためと言われている[3]。 短編「天空の魔人」(『少年クラブ増刊』昭和31年1月15日)に特定の相手は出てこない。「探偵少年」(『読売新聞』昭和30年1月~12月、ポプラ社版では「黄金の虎」)、「まほうやしき」、「赤いカブトムシ」では、二十面相に代わって「魔法博士」が少年探偵団と対峙する。この魔法博士は明智の知人で、「雲井良太というお金持ちの変わりもの」であると「黄金の虎」で説明がある。ただし、怪人二十面相も作中で「魔法博士」の別名を用いることがある。

怪人二十面相の登場する「少年探偵シリーズ」は、戦前は昭和11年から『少年倶楽部』、戦後は昭和24年から、主に光文社の『少年』などで連載された。連載後、戦前は講談社が叢書化した。連載時の挿絵は戦後は石原豪人らが担当している。「少年探偵シリーズ」を初めて全集化したのは光文社であり、昭和26年から昭和35年まで、10年間にわたり刊行され、人気を博した。この光文社の全集シリーズのカバー絵はすべて松野一夫が担当。昭和26年全集刊行当時の光文社の巻末広告は次のようなものだった。

不死身の怪人、世紀の怪盗、変装の大名人、風のごとく現れ、風のごとく消えさる怪人二十面相と、名探偵明智小五郎の、しのぎを削る大智能戦!

光文社は昭和36年に新装配本として、新たに最終作『超人ニコラ』までを含む全26巻の予定で『少年探偵団全集』の刊行を始めたが、定価(120円)を従来の倍(300円)にしたため売れ行きが伸びず、わずか5巻発行したところで中止となってしまった。せっかくの新装全集化が頓挫し、横溝正史は「晩年の乱歩は淋しかったろう」と同情している。この新規全集配本は、乱歩最晩年の昭和39年以降、ポプラ社によって引き継がれた。

乱歩はこのシリーズについて、次のように解説している[4]

「このシリーズには、どの話でも、最初は、おばけのような怪物があらわれたり、どうしてこんなことがと、おどろくようなふしぎなことがおこる。このなぞがどうしてとけるのだろうと、さきを読まなくてはいられなくなる。そして、お話の最後には、かならず、その種あかしがある。そこで、ああそうだったのかと満足する。ふしぎをふしぎのままでおわらせないで、きっと種あかしがついている。そこにこのシリーズの特徴があるのだと思う」
戦前

『少年倶楽部』の対象年齢は、小学上級生から中学初年級だった。

『青銅の魔人』での明智のセリフによると、この作品のラストで逮捕された二十面相は、「一年もしないうちに刑務所を脱走して、どこかへ姿をくらませてしまった」。
戦後

戦後の掲載誌『少年』や『少年クラブ』の対象年齢は小学低学年に下がっており、内容もこれに合わせて小学生向けとなっている。

光文社から初め「痛快文庫」シリーズの一冊として刊行され、昭和26年からの全集に組み込まれた。少年探偵団は出て来ず、小林少年によってポケット小僧ら戦災孤児を集めた「チンピラ別動隊」が組織され、以後二十面相の好敵手となる。
  • 虎の牙 (『少年』昭和25年1月~12月)
連載予告時の題名は「巨人と怪人」。ポプラ社版では「地底の魔術王」。二十面相は「魔法博士」を名乗る。
『虎の牙』事件から1年あまり後の物語である。
「二十面相」から「四十面相」と自ら改名する。『透明怪人』事件から数月後の物語である。
プロペラ飛行を初披露。
ポプラ社版では「鉄塔王国の恐怖」
昭和30年以降、『少年』以外にも連載されるようになる。
  • 海底の魔術師 (『少年』昭和30年1月~12月)
  • 黄金豹 (『少年クラブ』昭和31年1月~12月)
  • 魔法博士 (『少年』昭和31年1月~12月)
  • 大暗室(昭和31年12月、ポプラ社 日本名探偵文庫)
ポプラ社からの刊行で、乱歩の過去作品が二十面相作品として加えられる。氷川瓏[注 5] による代作。乱歩の成人作品『大暗室』をアレンジしたもの。
遠藤平吉」という二十面相の本名が明かされる。
ポプラ社版では「魔人ゴング」。この作品から明智の姪の少女探偵、花崎マユミが登場。少女向け雑誌『少女クラブ』での連載に合わせたもの。
ポプラ社版では「悪魔人形」
『サーカスの怪人』に続く物語。
学習研究社の各学年雑誌での連載が始まる。
「四十面相」の別名が使われたのはこの作品まで。
「ルパンのまねをして」、黄金仮面に扮して登場。
少年探偵団とポケット小僧が主役で、明智探偵は登場しない。
1961年1月から題名が『おれは二十面相だ!』に変わる。ポプラ社版では「二十面相の呪い」
『鉄人Q』事件から1月後の物語である。
掲載誌『こども家の光』は、農協が、全国の組合農家向けに発行する雑誌『家の光』の子供向け附録。「本屋が近くになく、シリーズ未見の僻地の子供たちの家にも宅配する」という、初の媒体での連載ということで、「怪人二十面相はまほうつかいのようなふしぎなどろぼうです」と序文が置かれ、それまでの二十面相のエピソードの総集編的内容となっている。
  • 妖星人R (『少年』昭和36年1月~12月)
盗品美術館を完成させる。光文社の全集化が頓挫したため、本作はこれを引き継いだポプラ社が「空飛ぶ二十面相」に改題して全集化した。
同年、「人間改造術」を扱った戦前の『猟奇の果』が全集配本されており、これを転用した内容となっている。『妖星人R』同様、光文社から引き継いだポプラ社が「黄金の怪獣」と改題して全集化した。

昭和33年ごろから乱歩は身辺整理を始め、外出も減り、口述筆記が多くなる。昭和38年にはパーキンソン病が悪化、筆を執れなくなる。このため、『少年』に1962年(昭和37年)1月から12月にかけて連載された『超人ニコラ』(ポプラ社版『黄金の怪獣』)が二十面相最後の作品となった。


注釈

  1. ^ 映像作品ではドミノマスク(いわゆる女王様マスク)であったり、ヴェネツィア風の仮面だったりと作品によって異なる
  2. ^ 彼は一作平均4.44回、シリーズ合計で111回もの変装をしている(ポプラ社版のみをカウント[1]
  3. ^ 妖虫』を乱歩自身が児童向けに翻案したものである
  4. ^ この描写は戦前の乱歩作品『蜘蛛男』からの転用
  5. ^ a b 乱歩は武田武彦の著述と前書きで述べているが、実際には氷川がポプラ版を執筆。
  6. ^ この描写は戦前の乱歩作品『地獄の道化師』からの転用

出典

  1. ^ 『生誕百年・探偵小説の大御所 江戸川乱歩99の謎』(二見書房刊)
  2. ^ 『乱歩おじさん』(松村喜雄、晶文社)
  3. ^ 『超人ニコラ/大金塊』(江戸川乱歩推理文庫43巻)における中島河太郎「解題」より、1988年、413-416頁。
  4. ^ a b 「自作解説」『怪人二十面相と少年探偵団』(『児童文学への招待』(南北社、昭和40年7月)
  5. ^ イモ欽トリオ ティアドロップ探偵団 歌詞&動画視聴 - 歌ネット”. www.uta-net.com. 2023年7月16日閲覧。






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