吉見町町内巡回バス 吉見町町内巡回バスの概要

吉見町町内巡回バス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/01 00:56 UTC 版)

吉見町巡回バス専用車両
日野・リエッセ ステップリフトバス
道の駅いちごの里 よしみにて

2002年平成14年)12月運行開始[3]2019年に廃止され[4]、廃止後はデマンド型交通デマンドバス)へ移行した[4][5]

ひばり号」「けやき号」の愛称があり[1]、町内巡回コース・町外アクセスコース各3路線の全6路線が設定され[1]、全路線が平成エンタープライズに運行委託されていた[1]

概要

他の市町村のコミュニティバスと異なり「循環バス」ではなく「巡回バス」と表記していた。運行開始当初は町内のみ運行で、町民を対象とした福祉目的の利用を主とする性格が強かったためである[3]

吉見町内には鉄道駅がなく、公共交通機関は民間の路線バスに限られており、以前からバス路線の拡充が求められていた[6][3][7]

以前は東武鉄道直営時代の東武バスによって、東松山駅から北向地蔵、向山(現在の吉見町日向山団地が該当する)を経由し鴻巣駅へ向かう路線や、吉見町北部の中曽根地区と東松山を結ぶ東松山駅〜上中曽根線、さらには東松山駅から吉見町の南部地域である大串地区を経由して大宮駅へ至る路線が運行されていた時代もあったが、これらの3路線はいずれもすでに廃止されていた。

2008年平成20年)時点で町内を走る民間事業者のバス路線は、川越観光自動車が運行する東松山駅鴻巣免許センター線と、東武バスウエストが運行する川越駅〜鴻巣免許センター線、川越駅〜新荒子線のみとなっていた。そのため、一般路線バスが廃止された地域はもとより、元から公共交通機関に恵まれなかった地域など、交通空白地帯における公共交通路線の確保が課題になっていた。

吉見町内でのコミュニティバス構想は、30年近く前から[いつから?]続けられたものの、様々な事情から実現しなかった。しかし吉見町は一時期、埼玉県内で2番目の人口増加率を記録した時代があるほど[8]ベッドタウンとして成長したにもかかわらず、民間バス事業者によるバス路線は限られていたことから、移動手段はもっぱら自家用車か自転車などに頼らざるを得ない状況であった。

こうしたことから、幾度となく町民の間からもコミュニティバスの運行を求める声が相次ぎ[3][9]2001年(平成13年)頃から計画に着手し、2002年(平成14年)12月に運行を開始した。運行開始当時は実験段階ということもあり、町内のみ運行で運賃無料であった。バスの経路は、従来から運行していた老人福祉センター「荒川荘」送迎バスのルートをもとに[3][9]、吉見町中央公民館を発着するルートで開始した。

運行開始時から廃止まで、埼玉県入間郡三芳町に本社を置く平成エンタープライズに運行委託されていた。

2006年(平成18年)4月よりコースが再編され、利用者の公平負担の観点から運賃が有料化された[10][11]。同時に町内のみを巡回するコースに加え、町外へ運行するルートも設定された。

2018年(平成30年)12月末をもって日中便の運行を終了、翌2019年(平成31年)3月末をもって朝夕便の運行を終了し、廃止となった。廃止後はコース・ダイヤを事前に定めないエリア型のデマンド型交通へ移行した。

歴史

運行開始までの経緯

概要でも触れたとおり、モータリゼーションの影響を受け、1978年の東松山駅〜大宮駅線廃止(末期は1日3本、上尾市平方で分断されていた路線)と、1991年の東松山駅〜上中曽根間廃止(末期は平日4本、休日5本)により、町内のバス路線は折り返し系統を除き実質3路線となった。これは他の市町村同様に家庭でのマイカー所有増加による影響が大きい。しかし住民の間からは通学や高齢者の足としてのバス路線拡充を求める声が多かった[12][9]。これは、交通空白地帯が多かったこと、またベッドタウンとして住宅地が多数存在していること、路線バスのある地域が偏ったところも大きかった。しかし、幾度となくコミュニティバス構想が持ち上がるものの頓挫していた。これには既存事業者との調整や運行形態などの問題点があり、特に吉見町は東西南北に広いため、運行にあたっては公平性の観点からも非常に難しい問題があった。

2001年頃からコミュニティバス構想が再浮上し、吉見町役場内でもプロジェクトチームが作られた。しかし公共交通機関への理解はおろか、公共交通機関の利用回数や利用機会の限られる関係者にとって構想を練ることが非常に難しく、どのような車両を使ったらよいか分からない状況でもあった。一時期はワゴンタイプの車両を使うことも検討された。また運行開始前には住民連絡会議も設置された[13]

ところが、その住民連絡会議の中で示されたのは、原則として町内のみの運行とするということであった[14]。これは以前から運行されていた、江和井地区にある老人福祉施設「荒川荘」への送迎バスルートを生かす部分も大きかったが、吉見町商工会から「町内の利益が町外に逃げてはならない」とする意向があったため[14]、当初は完全に町内のみの運行のみを計画していた。福祉上の観点から、隣接する東松山市にある東松山市民病院へのアクセスは決定したものの、当初は東松山市から市民病院への直接乗り入れ許可は下りなかった[15]

運行開始から再編・有料化まで

2002年12月1日の運行開始に先駆けて発表された路線は、その後の路線と異なり、町内を一周するルートが設定された。当時は一周約120分のルートが組まれたが、これはもともと荒川荘送迎バスのルートを生かしたものであった。荒川荘送迎バスは曜日限定ながら、吉見町内をくまなく網羅していたことが路線ルートの設定で高く評価された。ただしその後の運行起点と異なり、当初は吉見町中央公民館前が完全な始発着点となっていた。巡回バス運行開始に伴い、荒川荘送迎バスは廃止となったが、それまで曜日限定の運行だったものが巡回バスの運行によりほぼ毎日運行となった。このような経緯から、2006年の再編までは、荒川荘の休業日である月曜日が運休日となっていた[3][9]

東松山市民病院への直接乗り入れは当初認められず[14]、2006年の再編までの間、川越観光バスが使用するマイタウン線の市民病院前バス停を利用していた。これはすでに東松山市が市内循環バスを運行し直接市民病院へ乗り入れていたことが大きく、当時の巡回バス住民連絡会議では、東松山市との調整が必要なため直接乗り入れができないと説明があった[14]。その後、東松山市民病院への直接乗り入れは2006年の再編で実現した[11]

運行開始から2006年の再編までは、実験的な観点から運賃無料で運行されていた。また当時は運賃収受を行わなかったため福祉目的性が強く、町民以外の乗客の利用に問題が生じることもあったが、運行開始後は、巡回バスの運行とは直接関係ない川越観光自動車の東松山駅バス停路線図掲示に、吉見町巡回バスの接続バス停が表記されていた。

2004年(平成16年)から2006年の再編までの間、中曽根集会所から延伸し、当時の大里郡大里町(現在の熊谷市)にある長島記念館への乗り入れを行った。これは、長島記念館で大里町営バス(現在の熊谷市営バス)に乗り継ぐことができるようにというものであったが、利用者が少ないこともあり、2006年の再編で廃止されている[16]

町外へのルートは限られたものであっても利用者数は順調に伸びた。2006年に町民のニーズに応えるため路線再編された。この際、民間事業者による既存路線等への配慮や調整の観点から、吹上駅、森林公園駅、北里メディカル病院へのアクセスとし、町外路線の選定を行った。この町外路線の運行開始にあわせ、利用者の公平な負担という観点から有料化に踏み切った[11]。また同時に、路線及び一部停留所の新設・改変・廃止も行っている。この再編に際しては10日間ほど運休して準備を行った[16]

先述の通り、2018年12月末をもって町内コースを、2019年3月末を持って町外コースを廃止とし、デマンド型交通へ転換された。


注釈

  1. ^ 日産・シビリアンは、平成21年10月31日及び同年11月19日に代車として運行されているのが確認されている。

出典

  1. ^ a b c d e 『関東エリア一都六県コミュニティバス図鑑』スタジオタッククリエイティブ、2018年4月10日、95頁。ISBN 978-4-88393-803-2 
  2. ^ 吉見町巡回バス”. 吉見町. 2020年6月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年7月2日閲覧。
  3. ^ a b c d e f 『広報よしみ 平成14年12月号』吉見町役場総務課発行、平成14年12月1日
  4. ^ a b 利便性狙いタクシーに 横瀬町、コミュニティーバス廃止へ 2月から無料で実証運行 /埼玉”. 毎日新聞 (2021年1月26日). 2022年7月2日閲覧。
  5. ^ a b デマンド型交通について”. 吉見町. 2021年3月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年7月3日閲覧。
  6. ^ 『広報よしみ 平成4年8月号』吉見町役場総務課発行 平成4年8月1日
  7. ^ 『広報よしみ 平成15年1月号』吉見町役場総務課発行 平成15年1月1日
  8. ^ 「吉見町町勢概要」吉見町役場総務課発行
  9. ^ a b c d 『広報よしみ 平成15年1月号』吉見町役場総務課発行、平成15年1月1日
  10. ^ 『広報よしみ 平成18年4月号』吉見町役場総務課発行、平成18年4月1日
  11. ^ a b c 『町内巡回バスについてのお知らせ~運行路線が4月2日から変更になります!~』吉見町役場政策財政課発行、平成18年2月27日
  12. ^ 『広報よしみ 平成4年8月号』吉見町役場総務課発行、平成4年8月1日
  13. ^ 「吉見町議会会議録 平成13年12月定例会」吉見町議会運営委員会
  14. ^ a b c d 「吉見町巡回バス住民連絡会議資料」平成14年3月
  15. ^ 「吉見町議会会議録 平成14年9月定例会」吉見町議会運営委員会
  16. ^ a b 『町内巡回バスについてのお知らせ~運行路線が4月2日から変更になります!~』吉見町役場政策財政課発行 平成18年2月27日
  17. ^ 『町内巡回バスについてのお知らせ』~運行路線が4月2日から変更になります!~ 吉見町役場政策財政課発行 平成18年2月27日
  18. ^ 吉見町議会会議録 平成19年5月定例会 吉見町議会運営委員会
  19. ^ 吉見町議会会議録 平成19年3月定例会 吉見町議会運営委員会


「吉見町町内巡回バス」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「吉見町町内巡回バス」の関連用語

吉見町町内巡回バスのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



吉見町町内巡回バスのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの吉見町町内巡回バス (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS