卵巣腫瘍
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/21 16:01 UTC 版)
腫瘍マーカーなど
特にCA125が卵巣癌全体のマーカーとしての役割を担っている。
- CA125[10]
- 漿液性嚢胞腺癌、類内膜腺癌、移行上皮癌
- CEA
- 粘液性嚢胞腺癌、クルーケンベルグ腫瘍
- エストロゲン
- 顆粒膜細胞腫、莢膜細胞種
- アンドロゲン
- セルトリ間質細胞腫、ライディッヒ細胞腫
- AFP
- 卵黄嚢腫瘍、胎児性癌
- hCG
- 絨毛癌、胎児性癌、未分化細胞癌
- LDH
- 未分化細胞癌
治療
基本は外科的腫瘍切除であり、化学療法が併用される。
外科手術
基本的な術式は以下の通りである。
- 両卵巣摘出・子宮摘出術・大網切除術・骨盤・傍大動脈リンパ節郭清(または生検)・腹腔細胞診。
- なお肉眼的に腫瘍が取り切れている場合の骨盤・傍大動脈リンパ節郭清は生存期間を延長しないとの報告がある[11]。
- 肉眼的に骨盤・傍大動脈リンパ節転移を認め、肉眼的完全手術が可能な場合には骨盤・傍大動脈リンパ節郭清または腫大リンパ節の摘出が行われる。
これらによって病期が決定される。腫瘍を摘出しきれない場合は、primary debulking surgeryとして可能な限り腫瘍を摘出し、化学療法の合間に再度摘出手術(interval debulking surgery)を行うことがある。あるいは術前に腫瘍を減量する目的で先に化学療法を行うネオアジュバント療法が用いられることもある。術時に腫瘍を摘出できないときは腫瘍減量術や試験開腹を行うこともある。
片側卵巣に病変が限局しているIA期もしくはIC1期で組織学的悪性度の低い非明細胞癌の場合、挙児希望があれば片側卵巣切除術(+大網切除術+腹腔細胞診)が選択されることがある。
手術の合併症
両卵巣摘出術を実施した場合、女性ホルモンが減少するため更年期障害の様な症状が現れることがある[7]。
化学療法
Ia, Ib かつ grade1,2 であり、かつ組織型が明細胞癌以外であれば手術療法のみで経過観察されるが、それ以外は術後化学療法を用いた集学的治療を行うのが標準である。粘液性嚢胞腺癌と明細胞癌は化学療法が無効である場合も多い。
卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2020年版[12] の概説を以下に示す。
初回化学療法の第一選択はTC療法またはdose dense TC療法(パクリタキセルの分割投与)であるが、施行困難な場合にはDC療法、PLD-C療法、weekly TC療法、カルボプラチン単剤療法も選択される。III~IV期症例に対してはベバシズマブの上乗せが検討される。
初回化学療法後の維持療法として、症例によってベバシズマブ単剤またはPARP阻害薬であるオラパリブあるいはニラパリブが推奨されている。
初回化学療法が無効であった場合や奏効後に増悪した場合には追加で化学療法が行われる。最終投与から6か月以上経過している場合はプラチナ感受性再発と考えられ、カルボプラチン含有レジメン+ベバシズマブが推奨されている。6か月未満の場合にはプラチナ抵抗性再発であり、初回化学療法と交叉耐性のない薬剤の単剤治療(±ベバシズマブ)やペムブロリズマブ(MSI-H症例の場合)が検討される。二次化学療法後であってもオラパリブの維持療法が検討される。
- TC療法: PTX(パクリタキセル) + CBDCA(カルボプラチン) 2004年より標準療法とされる。dose-dense TC療法も同様に1st lineとされる。
- DC療法:ドセタキセル+カルボプラチン
- PLD-C療法:リポソーム化ドキソルビシン+カルボプラチン
- GC療法: ゲムシタビン + カルボプラチン
- ベバシズマブ: 化学療法との併用で効果が認められている。
- PARP阻害薬:「PARP(パープ)」という体内の酵素の働きを妨げ、これが働かないとがん細胞はDNAが切断されたまま修復されず死ぬ。一方、正常細胞はBRCA(ブラッカ)などの遺伝子が働いてDNAがきちんと修復され死なずに済む。分子標的薬の一つ。(商品名:リムパーザ)[13]
胚細胞腫瘍の治療
BEP(CDDP:シスプラチン+VP-16:エトポシド+ブレオマイシン)
参考文献
- 病気がみえる 婦人科 ISBN 4896321626
- CHART 産婦人科2 婦人科 ISBN 9784872118957
- 産婦人科ベッドサイドマニュアル ISBN 9784260000956
- 産婦人科外来処方マニュアル ISBN 9784260004244
- ^ “WHO Disease and injury country estimates”. World Health Organization (2009年). 2009年11月11日閲覧。
- ^ W. C. ウィレット、M. J. スタンファー 著「ヘルシーな食事の新しい常識」、日経サイエンス編集部 編 『エイジング研究の最前線 心とからだの健康』〈別冊日経サイエンス 147〉日経サイエンス、2004年11月11日、116-125頁。ISBN 978-4-532-51147-0 。 Willett, Walter C.; Stampfer, Meir J. (2006). sp “Rebuilding the Food Pyramid”. Scientific American 16 (4): 12–21. doi:10.1038/scientificamerican1206-12sp . 該当個所は日本語123頁。
- ^ Salamon, Maureen (2023年1月1日). “A lethal cancer’s long reach” (英語). Harvard Health. 2022年12月21日閲覧。
- ^ 卵巣がん 基礎知識 国立がん研究センター
- ^ a b がんの知識 卵巣がん 初期症状 愛知県がんセンター中央病院
- ^ 卵巣癌、卵管癌、腹膜癌手術進行期分類への改訂についてのお知らせ (PDF) 日本産科婦人科学会 平成27年3月20日
- ^ a b 卵巣がん 治療 国立がん研究センター「卵巣がんの手術進行期分類(日産婦2014、FIGO2014)」
- ^ 山門實, 山本浩史, 新原温子 ほか、「【原著】新規がん検診としてのアミノインデックス®がんリスクスクリーニングの有用性に関する検討 第二報」 2014年 28巻 5号 p.763-767, doi:10.11320/ningendock.28.763
- ^ 安東敏彦、「血漿中アミノ酸プロファイルによるがんリスクスクリーニング(AICS)法」 日本分子腫瘍マーカー研究会誌 2014年 29巻 p.13, doi:10.11241/jsmtmr.29.13
- ^ 鈴木永純, 山田恭輔, 小林重光 ほか、「卵巣腫瘍良悪性診断においてCA19-9, SLXは真に有用か? -CA125との同時測定による科学的検証-」 日本分子腫瘍マーカー研究会誌 1999年 14巻 p.53, doi:10.11241/jsmtmr.14.53
- ^ リンパ節郭清は卵巣癌の生存期間を延長しない 日経メディカル 記事:2019年3月22日
- ^ “卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2020年版” (日本語). 公益社団法人 日本婦人科腫瘍学会. 2021年11月19日閲覧。
- ^ “卵巣がん新薬、異例のスピード承認 アストラゼネカ” (日本語). 日本経済新聞 電子版 2018年12月3日閲覧。
固有名詞の分類
- 卵巣腫瘍のページへのリンク