使徒 十二使徒

使徒

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/24 13:48 UTC 版)

十二使徒

前述のように、「十二使徒」は極めてルカ的概念である。ただし、ルカは「十二使徒」という言葉そのものは用いていない。新約中、この言い方は、「ヨハネ黙示録」21章14節のみである(マタイ10章2節については、前述の通り)。

新約聖書内では、ルカ福音書と使徒言行録を除いては、使徒を12人に限定していないが、イエスの高弟である「十二人」( δώδεκα) については、幾つかの文書に記されている。彼らは、イエスから悪霊を払うための権能を授けられたという。12という数字は、イスラエルの12部族に対応するものと思われる。「十二人」のすべての名は、「マルコ福音書[15]」に記されており、「マタイ[16]」、「ルカ[17]」、「使徒言行録[18]」は、これを写したものである。「ヨハネによる福音書」には、「十二人」の存在は語られるが、内数人のみの名が挙げられている。他に、「第1コリント書[19]」、「ヨハネの黙示録[20]」など。使徒言行録によれば、イスカリオテのユダによる欠員をマティアで埋めたという[21]

福音書によって構成員の名前が異なること、ほとんど言及されない人物もいること(後掲の表参照)から、イエス時代の史実でないと考える研究者もいる。ルカの「十二使徒」という概念は、後に「正統派」教会においてドグマ化し、広く定着した。

マルコ マタイ ルカ 使徒言行録 ヨハネ
シモン・ペトロ(B1) ペトロ ヨハネの子シモン・ペトロ(B1)
ゼベダイの子ヤコブ(B2) ゼベダイの子ヤコブ ヤコブ(B2) ゼベダイの子たち(!)(?)
ヨハネ(B2) ヨハネ ヨハネ(B2) イエスに愛された弟子(?)[注 3]
アンデレ(B1) アンデレ(B1)(!) アンデレ(!) アンデレ(B1)
フィリポ(!) フィリポ(?) フィリポ
バルトロマイ(!)  
        ナタナエル[注 4]
マタイ(!) 徴税人マタイ マタイ(!)  
トマス(!) ディディモ・トマス
アルファイの子ヤコブ(!)  
タダイ(!)      
    ヤコブの子ユダ(!) (イスカリオテでない)ユダ
熱心者のシモン(!) 熱心党員と呼ばれたシモン(!) 熱心党のシモン(!)  
イスカリオテのユダ (ユダ[注 5] イスカリオテのシモンの子ユダ
      マティア  

注:

  • (B) は兄弟関係を表す。
  • (!)は、ただ1回のみの言及。
  • (?) は、他の文書内の使徒と同一人物であるかわからないもの。


最後の晩餐 Leonardo da Vinci (1498)、壁画、テンペラ 420 x 910 cm

レオナルド・ダ・ヴィンチによる「最後の晩餐」における配置は左から以下の通り: バルトロマイ(ナタナエル)、アルファイの子ヤコブ、アンデレ、ユダ、シモン・ペトロ、ヨハネ。イエスを越して、トマス、ゼベダイの子ヤコブ、フィリポ、マタイ、タダイ、熱心党のシモン。

広義

ある地域に初めてキリスト教を伝えた人物や、特定地域の宣教に大きな働きを示した人物に、「使徒」の称号を冠することも一般的である。正教会では、これを亜使徒(Equal to the apostles, 使徒に準ずる、あるいは使徒と同等の者の意)と呼ぶ。

例として、東洋の使徒フランシスコ・ザビエル[注 6]やスラブの使徒、またはスラブの亜使徒キリル(チリロ)とメトディウス(メフォディ)、日本の亜使徒聖ニコライなどがある。


注釈

  1. ^ マルコ6章30節。なお、3章14節は、本文批判上、後世の加筆と考えられる。恐らくルカから写されたもの。
  2. ^ 自由主義神学によれば、ルカは、パウロや他の宣教者を「使徒」とみなしていないとする。使徒言行録14章14節は、パウロとバルナバに言及した箇所で「使徒」と呼んでいるが、これを例外と考える。これはルカが、この箇所を書くために用いていた伝承資料を、引き写したものだと主張し、ルカ文書の使徒観をただちに歴史的事実とすることはできないとする。 イスカリオテのユダ
  3. ^ 教会の伝統的解釈では、彼を使徒ヨハネと同定する。近代批評学(リベラル)では否定される。
  4. ^ 「ヨハネによる福音書」にのみ名前の見えるナタナエルは、伝承では同書に言及のないバルトロマイと同一視される。
  5. ^ 使徒言行録 1章18節参照。死後、使徒ではなくなった時点で言及されている。
  6. ^ 正教会では崇敬されていない。

出典

  1. ^ マタイ10章2節
  2. ^ ヘブライ書3章1節
  3. ^ 6.十二使徒たちは誰ですか?」『』。2018年4月6日閲覧。
  4. ^ ルカ 6章13節
  5. ^ 使徒言行録 1章20節
  6. ^ 使徒言行録 1章21節~22節
  7. ^ 「これを聞いた使徒たち、バルナバとパウロは(使徒14:14)」新改訳聖書
  8. ^ 第一コリント9:1
  9. ^ 使徒26:16-20
  10. ^ 尾山令仁『ローマ教会への手紙』羊群社
  11. ^ ローマ書 1章1節 他
  12. ^ 第二ペトロ3:15-16
  13. ^ マーティン・ロイドジョンズ『教会の権威』みくに書店
  14. ^ 第1コリント書15章7節
  15. ^ マルコ 3章14節-19節
  16. ^ マタイ 10章1節-4節
  17. ^ ルカ 6章13節-16節
  18. ^ 使徒言行録 1章13節
  19. ^ 第1コリント書 15章5節
  20. ^ ヨハネの黙示録 21章14節
  21. ^ 使徒言行録 1章21節-26節
  22. ^ 諸預言者への信仰 - イスラームという宗教”. 2020年2月28日閲覧。
  23. ^ 全人類への使徒 - イスラームという宗教”. 2020年2月28日閲覧。
  24. ^ シャハーダ”. 2020年2月28日閲覧。
  25. ^ 預言者と使徒の違い”. 2020年2月28日閲覧。






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