使徒 キリスト教における使徒

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使徒

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/24 13:48 UTC 版)

キリスト教における使徒

狭義

新約聖書では、ἀπόστολος の語は(複数形 ἀπόστολοι も含めて)、「マルコによる福音書」、「マタイによる福音書」、「ルカによる福音書」、「使徒言行録」、パウロ書簡、「ヘブライ書」、ペトロ書、「ユダ書」、「ヨハネの黙示録」に用いられている。このうち、「マルコ[注 1]」と、「マタイ[1]」、「ヘブライ書[2]」は文脈上、この単語を単に「派遣されたもの」または「使者」という意味で用いている。他の文書では、ἀπόστολος は、固有名詞的に、何か権威ある称号のようなもの(日本語訳でいう「使徒」)として使われている。近代批評学では「原始キリスト教」において、「使徒」がどのような定義をもつ語として用いられていたのか、その詳細はよくわからないとされる。

ルカ(の著者)の十二使徒観ははっきりとしている[3]。ルカ文書(ルカ福音書と使徒言行録)によれば、「十二使徒」とは、最初にイエスによって選ばれた12人の弟子集団である[4]。旧約時代の神の民・イスラエルの12部族との関連で、12人という枠は維持すべきもので[5]、十二使徒の成員の条件としては、イエスの復活の証人であり、またイエスと生前をともにした者でなければならない[6]。またルカははっきりとパウロを使徒と認めている[7][注 2]

さらに、パウロ書簡は、使徒の基準を伝えている。パウロ書簡による使徒の定義は、復活した主イエスの証人であること[8]主イエスに使徒として召されたことである[9][10]。重要な点として、パウロは「使徒」としての権威を強調していることが挙げられる[11]。このパウロの使徒としての権威は、使徒ペトロも認めている[12][13]。次に、パウロは、使徒は12人(あるいは、自身を含めて13人)に限定していない[14]

近代批評学では、パウロがルカと同じく、主の兄弟ヤコブを「使徒」とは呼ばないことにも、「使徒」の定義の謎が残るとされる。エルサレム教会の権威が失墜した時期以降、恐らく「使徒」の厳しい定義も消えていったと考えられる。

正教会やカトリック教会は、パウロを「使徒」と呼んで崇敬し、それは現代にまで至る。


注釈

  1. ^ マルコ6章30節。なお、3章14節は、本文批判上、後世の加筆と考えられる。恐らくルカから写されたもの。
  2. ^ 自由主義神学によれば、ルカは、パウロや他の宣教者を「使徒」とみなしていないとする。使徒言行録14章14節は、パウロとバルナバに言及した箇所で「使徒」と呼んでいるが、これを例外と考える。これはルカが、この箇所を書くために用いていた伝承資料を、引き写したものだと主張し、ルカ文書の使徒観をただちに歴史的事実とすることはできないとする。 イスカリオテのユダ
  3. ^ 教会の伝統的解釈では、彼を使徒ヨハネと同定する。近代批評学(リベラル)では否定される。
  4. ^ 「ヨハネによる福音書」にのみ名前の見えるナタナエルは、伝承では同書に言及のないバルトロマイと同一視される。
  5. ^ 使徒言行録 1章18節参照。死後、使徒ではなくなった時点で言及されている。
  6. ^ 正教会では崇敬されていない。

出典

  1. ^ マタイ10章2節
  2. ^ ヘブライ書3章1節
  3. ^ 6.十二使徒たちは誰ですか?」『』。2018年4月6日閲覧。
  4. ^ ルカ 6章13節
  5. ^ 使徒言行録 1章20節
  6. ^ 使徒言行録 1章21節~22節
  7. ^ 「これを聞いた使徒たち、バルナバとパウロは(使徒14:14)」新改訳聖書
  8. ^ 第一コリント9:1
  9. ^ 使徒26:16-20
  10. ^ 尾山令仁『ローマ教会への手紙』羊群社
  11. ^ ローマ書 1章1節 他
  12. ^ 第二ペトロ3:15-16
  13. ^ マーティン・ロイドジョンズ『教会の権威』みくに書店
  14. ^ 第1コリント書15章7節
  15. ^ マルコ 3章14節-19節
  16. ^ マタイ 10章1節-4節
  17. ^ ルカ 6章13節-16節
  18. ^ 使徒言行録 1章13節
  19. ^ 第1コリント書 15章5節
  20. ^ ヨハネの黙示録 21章14節
  21. ^ 使徒言行録 1章21節-26節
  22. ^ 諸預言者への信仰 - イスラームという宗教”. 2020年2月28日閲覧。
  23. ^ 全人類への使徒 - イスラームという宗教”. 2020年2月28日閲覧。
  24. ^ シャハーダ”. 2020年2月28日閲覧。
  25. ^ 預言者と使徒の違い”. 2020年2月28日閲覧。


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