ロードス島戦記
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/14 06:22 UTC 版)
あらすじ
暗黒皇帝ベルドに率いられたマーモ帝国軍と、至高神ファリス[注 4]を奉じる神聖王国ヴァリスを中心とする国々との戦い(英雄戦争)を背景として進む。
アラニア王国出身の若き戦士パーンは、亡き父と同じ騎士になる夢を求めて5人の仲間と共に冒険の旅に出た。その途中、英雄戦争の狭間で暗躍する「灰色の魔女」カーラの陰謀の一環であるフィアンナ姫誘拐事件に巻き込まれるも、フィアンナ姫の救出に成功し、自らの進むべき道を求めヴァリス王国に向かう。
そしてマーモ帝国とヴァリス王国の緊張が高まる中、カーラの思想がロードス島の平和と相容れないものであると悟ったパーンらは、六英雄の一人である大賢者ウォートに助力を求め、遂にカーラの居場所を突き止め魔女に挑む[注 5]。
登場人物
ロードス諸国
アラニア
首都アラン、王城はストーン・ウェブ。ロードス島北東部に位置する。建国から400年以上と現存するロードス国家中では最古の歴史を誇り、千年王国(ミレニアム)と称せられる大国。
北西部でヴァリスとフレイム、南部でカノンと国境を接し、北部にマーファ大神殿やドワーフの「鉄の王国」がある。南西部国境には、近年まで通行不可能だった「帰らずの森」が広がっている。
精強な鉄網騎士団を擁し、更に騎士団以上と噂されるレンジャーで構成された遊撃隊と銀蹄騎士団と呼ばれる魔法戦士隊(魔法戦士はアラニア独自の特別な騎士。モスで言う所の竜騎士のようなもの)の二大部隊を有する軍事大国でもある。
ロードス島唯一の魔術師ギルドである「賢者の学院」があり、安定した国情を背景に古くから古代語魔法の研究が盛んであったが、英雄戦争時の混乱の中、学院から破門されたのを逆恨みしたバグナードの報復によって滅ぼされてしまった。
魔神戦争では神出鬼没の魔神に対して無為無策に終始し、逆に民衆を守るためにマーファ神官を中核に自然発生した自衛団と感情的に対立、大国ならではの腐敗の深刻さを露呈した。
英雄戦争時では当初旧カノン国境を閉鎖して対マーモ包囲網の一角を担い、ノービス伯アモスンを援軍としてヴァリスに派遣した(ノービスはアラニア第二の都市、北西部の中心でヴァリス・フレイム方面への交通の要衝)。しかし国王カドモス七世の実弟・ラスター公爵がマーモに唆されて野心に目覚め、兄王を暗殺したことで状況は急変。王都を中心に南部を支配して国王を僭称するラスターと、急遽ヴァリスからノービスへ戻ったアモスンの間で泥沼の後継者争いが勃発したことで英雄戦争どころではなくなり、長きにわたる内戦状態となる。
英雄戦争が一応の結末を迎えた後もアラニアでは内戦が続き、パーンの出身地ザクソン村を中心とする北部地域では両勢力から距離を置いた半独立的な自治組織が形成された。この自治運動には、この頃「北の賢者」と呼ばれるようになっていたスレインや、セシルなどスレインの弟子たちが関与していた。
邪神戦争時には、ラスターがアモスンを討ったことで内戦に勝利し、一旦は国内を統一した。しかしアモスンの遺児・ロベスがフレイムへ亡命し、自らを大義名分とするアラニア侵攻をフレイム国王カシューに要請した。カシューもアラニア経由での旧カノン領およびマーモ侵攻を目指したため利害が一致し、アラニアとフレイムの全面戦争が勃発した。長年内戦が続いていたアラニア軍は練度が高く、大規模な戦いが10年ほど絶えていたフレイム軍に大きな打撃を与えたが、フレーベ、ウォートという英雄たちがフレイム軍に加勢したこともあってアラニア軍は敗北。ラスターは国王殺しの罪で処刑され、ロベスII世が即位した。
国家への帰属意識が薄れていたザクソン自治領も、もともとアラニア貴族の血筋であったセシルが叙爵し、ザクソン伯爵領として併合された。しかし後にセシルは王都アランで不可解な死を遂げ、以降50年以上に亘ってザクソンを始めとする北部アラニアは新領主を拒否し、再び完全な自治状態になる[8]。
歴代アラニア王
- 建国王 カドモスI世
- (数代不明)
- カドモスVII世
- (僭王ラスター)
- ロベスII世
ヴァリス
王都ロイド。至高神ファリスを奉じる神聖王国で、国民の大半がファリス信者である。南部でカノン、東部でアラニア、北部でフレイム、西部でモスに接しており、文字通りロードス島の中心に位置している強国。
君主制ではあるが世襲は否定し、代々の国王は聖騎士団から選ばれることが慣例となっており、選出する際も過去に王を輩出していない血統が好まれる。「正義と秩序」の名の下に聖騎士団とファリス教団による果断な(ある意味では独善的な)政策を取ることが多い。魔神戦争時には当時のワーレン王が狂気と病に倒れ、後継者が決まらない王不在という異常事態であり、ついに聖騎士団もファリス教団も有効な対策を取り得なかった。魔神戦争後は「六英雄」の一人で、聖騎士団を抜けて単独で「百の勇者」に加わった「白き騎士」ファーンが即位した。
英雄戦争では「英雄王」ファーンを戴き、対マーモ連合の盟主として「暗黒皇帝」ベルドのロードス島統一の前に立ちはだかる。最終決戦で辛くも勝利するが、ファーン王の戦死をはじめ国が傾くほどの大打撃を蒙った。
その後を継いだエト王は、例外的に神官出身であるため「神官王」と呼ばれ、その治世下で国力の回復と旧領奪還に専念する。邪神戦争にも参戦したが、往年の国力にはまだ及ばず、また穏健なエト王の性格もあって、フレイム主導の戦いに加勢する形となる。
宿敵であるロードス最大の勢力ファラリス教団との戦いとなったマーモ島での最終決戦では、暗黒神降臨などの苛烈な反撃に遭い、聖騎士団の2/3と民兵の半数を失う大きな被害を受ける。また、最高司祭ショーデルによる暗黒神降臨の場に居合わせて石化を免れたのは、ファリスの強い加護に守られたエト王ただ一人であった。
終末戦争後にエト王は退位して聖職に専念し、代わってウィントンが国王に即位した[9]。
歴代ヴァリス王
- 建国王 アスナーム
- (数代不明)
- ワーレンI世
- (1代不明)
- ファーン
- エト
- ウィントン
フレイム
首都ブレード、王城はアーク・ロード。英雄戦争の4年前にロードス島北部の砂漠地帯に建国された新興国。古代魔法王国時代から長年に渡って「風の部族」と「炎の部族」の二大遊牧民が対立を続けていた一帯で、フレイム王国は風の部族の支持を受けた傭兵出身のカシューが建国した。
英雄戦争には隣国ヴァリスからの要請に応じて参戦し、両雄の一騎討ちのあと勝ち残ったベルドをカシュー王が討ち果たすなど活躍を示した。その後は敵対していた炎の部族を取り込み国内を統一、更にカノンやヴァリスからの難民流入で混乱していた南部の都市国家ローランやマーニーを吸収し、急速に国内の社会基盤を強化していった。また肥沃な未開地「火竜の狩猟場」への入植に成功し、マーモ帝国のロードス本島侵攻以降、統治能力が低下していた自由貿易都市ライデンを保護下に加え、戦乱で疲弊した他国から強国として認知されるに至る。
しかも国土の大半を占めていた砂漠地帯は「炎の魔神事件」で精霊力が正常化したため徐々にかつての肥沃な土壌に戻りつつあり、難民入植地「火竜の狩猟場」の発展と合わせて国力の向上は尚も続いている。一方で砂漠の緑化が進むにつれ、水害が多発するようになり、治水が新たな課題になっている。当初は王都の中心にあった王城アーク・ロードも、基礎が川に侵蝕されるようになったことで、西端の丘へと移転した[10]。また、同様に砂漠の縮小に伴い、アラニアとの間に国境問題が発生している[11]。
果断で聡明なカシュー王の統治の下でロードス諸国の指導的立場を確立、邪神戦争では積極的に邪神阻止に動き、マーモ寄りのアラニアを突破してルードの街に向かう策を立てるも、長期の内戦により歴戦の騎士・戦士の揃ったアラニア軍に苦戦を強いられる。カシュー王の奮戦とウォートやフレーベの助勢で辛くもアラニアを下すも、長らく平和な時代を享受していたフレイム軍の被害は予想を遥かに越える物だった。
マーモ本島では各国の軍に先駆けて先陣を切る。闇の森での戦いでは召喚された「炎の精霊王」エフリートにより「砂漠の鷹」騎士団フォザル隊が全滅するなど、多大な犠牲を払いつつも、邪神戦争に勝利する。邪神戦争後、暗黒の島マーモを飛び地のフレイム領マーモ公国として統治し正常化に取り組むが、カーディス教団の襲撃によりマーモ公国は滅亡する。公国の残党やロードスの騎士パーン率いる義勇軍によってカーディス教団は駆逐されるが、フレイム領としての体制維持は不可能と認めざるを得ず、王族は同一民族でありながらマーモ王国を独立させることになる。
歴代フレイム王
- 建国王 カシュー・アルナーグI世
- (2代不明)
- スロール
- ディアス
モス
統一国家ではなく、所属各国の国王の中から選帝会議で公王が選ばれ諸国家を代表する形式の公国(公国とは一般に、王国の中で高い自治権を持つ貴族領 = 王国より下位を意味し、後述のマーモ公国がこちらの意味での「公国」だが、モスにおいては逆に王国の集合体 = 王国より上位が「公国」である)。ロードス島南西部を占める山岳地帯にハイランドやハーケーン、ヴェノンなど大小の国家が割拠し、各国の国王は「太守」とも呼ばれる。滅亡した南のドワーフ国「石の王国」は、モス地方南東部にある山岳地帯に存在していたが、モス公国には含まれない。
古くから諸国間の小競り合いが頻繁に起き、戦いが絶えない事から戦神マイリーの信徒が多いのが特徴で、“戦神の王国”とも言われる。他に、竜が多く棲むことから“竜の王国”とも言われる。
現在のモス公国は約250年前に、当時のライデン王国の脅威に対抗して結ばれた対外相互防衛協定とも言うべき「竜の盟約」に基づいて誕生。加盟国は竜に因んだ二つ名を持つ。モス外部からの侵略に対してはモス公王を中心に堅い連合体を形成して対抗し、その連合騎士団を相手にモス侵略に成功した国家は未だない。しかし国内での行動では「竜の盟約」は効力を持たず、利害関係による足並みの乱れが起こり易い傾向にある。実際に英雄戦争時にはマーモ帝国の工作によって、対マーモ連合軍から脱落している。
魔神戦争までには国家の淘汰が進んでおり、北部のハイランド、南部のハーケーン、南東のヴェノンなど少数の有力国による寡頭体制と言って良い状態になっていた。魔神との戦いの中でモス統一への機運が盛り上がるが、竜騎士ナシェルの失踪により統一は成らなかった。英雄戦争後はマーモから「炎の巨人」を与えられたヴェノンがハイランドを除く国々を制圧し、モス統一に王手をかける。その後「炎の巨人」を倒したハイランドの反撃が始まり、邪神戦争後半にハイランドが初めて実質的な国家統一を成し遂げる。
- 「竜の目(ドラゴンアイ)」ハイランド
- 王城はオーバークリフ。モス公国北部に位置する。元々は竜を崇める小部族で、現王家の先祖には竜司祭がいたと伝えられている。その技術を受け継ぎ、少数ながら竜騎士を擁することでロードス全土に名を馳せる有力国。一般に「モスの竜騎士」と言った場合、ハイランドの竜騎士を指す。
- ハイランドの竜騎士は、魔神戦争時に5騎(ナシェルを含めると6騎)、英雄戦争勃発時には12騎居たが、「炎の巨人」を擁したヴェノンのと戦いの中で最終的に2騎(ジェスター王とレドリック王子)にまで減る。その後レドリック王子と結婚したシーリスが竜騎士となり、邪神戦争時には他に数騎増えていた模様である。
- 代々名君を輩出しており、「竜の目に暗君無し」とはロードス全土で言われている言葉である。魔神戦争時にも「名も無き魔法戦士(カーラ)」が「ハイランドの家系には竜の血でも流れているのか」と感嘆の言葉を投げかけている。
- 「竜の鱗(ドラゴンスケイル)」ヴェノン
- 南東部に位置しヴァリスと国境を接する。交通の要衝マスケトの街を領することで強国の仲間入りした。他国との協調より自国の利益を露骨に優先させる傾向が強く、モス国内での摩擦に留まらず、国境を接するヴァリスと何度も衝突している。また属国スカードを圧迫して魔神戦争の遠因を作り、更に隣接する魔神に背を向けてハイランドの友好国レントンを攻めることで、ヴァリスから「魔神の同盟国」と疑われて侵攻を招くなど、これまで幾つもの問題を起こしている。
- 魔神戦争の結果スカード地方を併合してモス有数の強国となった。英雄戦争ではマーモの誘いに乗って当時のモス公王であったハーケーンの太守一族を滅ぼし、モス公王を僭称してモス統一の野望を明確にした。
- 「竜の炎(ドラゴンブレス)」ハーケーン
- 王城はグレイロック。モス南部の大国。魔神戦争の結果リュッセンを属国化し、規模から言えばモス公国一の大国となった。英雄戦争時にはハーケーン太守がモス公王で、対マーモ連合軍の一翼として連合騎士団をヴァリスに派遣した。しかし本国が手薄になったところをヴェノンに攻められ、滅亡する。
- 「竜の尾(ドラゴンテイル)」リュッセン
- 王城はサンドーム。ヴェノンとハーケーンに挟まれ、常に慎重な外交を強いられていた高原の王国。良馬の産地として名高い。
- 魔神戦争で魔神により一旦滅ぼされる。その後「百の勇者」を含むモス連合騎士団に解放され王国は再建されたが、国力の低下からハーケーンの属国となってしまった。
- 「竜の爪(ドラゴンクロウ)」レントン
- モス北部の国で、かつては隣接するハイランドと敵対関係であったが、マイセンII世の時代に和解して以後は友好国としての関係を維持していた。魔神戦争時には、それを理由にヴェノンの侵攻を受けるも、ハイランドの支援で辛うじて王都を守り抜いた。
- 「竜の翼(ドラゴンウィング)」
- ハイランドの更に北にある国。『ロードス島ワールドガイド』と『ロードス島戦記リプレイ3』の地図に名前のみ登場。
- スカード
- 王城はグレイン・ホールド。モス南東部の小国。対外的にはヴェノンの属国とされていたため「竜の盟約」には加盟していない。そのため竜にちなんだ二つ名も無い。
- 南に隣接するドワーフの「石の王国」と「エールの誓い」による硬い同盟関係を築いていた為、ヴェノンからの圧力は受けるものの独立を守っていた。またドワーフとの交易を独占する位置にあったため、小国ではあったが財政面では豊かな国として知られていた。
- 魔神戦争時には「石の王国」とともに滅亡し、魔神の軍勢の本拠地となる。戦後はヴェノンの一地方となる。
歴代モス公王
- (数代不明)
- マイセンII世 - ハイランド王
- (数代不明)
- (名前不明) - ハーケーン王
- (僭王ヴェーナー) - ヴェノン王
- レドリック - ハイランド王
カノン
同名の首都カノンにある王城はシャイニング・ヒル、ロードス島南東に位置し、北部でヴァリス・アラニアと国境を接する。西部には海を挟んでモス地方があり、南部沖合いに暗黒の島マーモがある。
アラニアの王家とは縁戚関係であり、またアラニアに次ぐ歴史を誇る。伝統的に武力より文化を重んじる国柄であったが、新興マーモ帝国の急襲の前に脆くも崩壊する。
英雄戦争後もマーモ帝国による圧政が続いたが、出奔していた王族唯一の生き残り、第三王子レオナーによる「カノン自由軍」の活躍で解放された。しかし貴族・騎士達にマーモ帝国へ服属したもの、マーモの支配に抵抗したもの、カノン自由軍から新たに叙爵・叙勲されたものなどが混在するようになったことや、一度国が滅んだため王の権威が揺らいだことなどから、有力貴族の発言力が強く朝廷内の統一を欠く状態が続いている[12]。
歴代カノン王
- 建国王 エゾールI世
- (数代不明)
- レオナー
- (数代不明)
- ロテール
- ユーク
マーモ
ロードス島の南部に位置する島、もしくは島を領土とする国家。アレクラスト大陸からは「呪われた島」と呼ばれるロードス島においても、格段に闇の力が強く「暗黒の島」と呼ばれる。ロードス本島との交易や人の交流は断続的に続けられており、完全に孤立した島と言う訳ではなく、北部にある港町サルバドがロードス本島との海の玄関口となっている。闇に属する生物などが多く棲息している。作者の水野によると、マーモ島の面積は愛媛県程度[13]であるとのこと。
神話の時代、邪神カーディスの呪いを最小限に食い止めるため、大地母神マーファによりロードス島本島から切り離されたとされる。その為か沿岸部は切り立った崖が多い。中央部にあるマーモ王城地下の大空洞には石化したカーディスの亡骸であるといわれる巨大なカーディス像が存在している。南部は「闇の森」と呼ばれる原生林が広がる。闇の森にはダークエルフ、蛮族、妖魔、魔獣が棲息しているが、それ以外の場所にも様々な魔獣や妖魔が棲息する。また暗黒神ファラリス大神殿の地下には黒翼の邪竜ナースが眠っていて、長い休眠期と短い活動期のスパンで、ときおりマーモの住人を襲撃していた。このような土地であるため、追われる身になったものや流刑になって来る悪人も多く、邪悪でなければ生き抜くことができない土地柄になっていた。
街に住む人間達、闇の森の蛮族、闇の森のダークエルフ、その他にも多数の闇の眷属、などの大小の諸勢力が割拠しており、統一国家が誕生することも歴史上に幾度かあったが、そのほとんどが極めて短命のうちに滅亡している。約500年前に勢力をふるった蛮族のカーディス教団がカーディスの亡骸がある地下カーディス神殿の上に増築した砦が、約200年前にマーモを統一したブルネイ王国によって城へと改築されたことでコンクァラー城(王城コンクァラーとも)と命名され、ブルネイ王国滅亡以降も支配者が変わるたびにコンクァラー城はより強固な城へと改築されていった。後に帝都となる城塞都市ペルセイ、通称ダークタウン(ベルドが治めた際に大改築が行われ、都市としての体裁を持った)と港湾都市サルバド(通称シャドーシティ)の二大都市が蛮族以外の人間の中心的な活動地になっている(マーモ島で都市として機能しているのはこの二つだけ)。ベルド率いるマーモ帝国による統一の前は、暗黒神ファラリス教団や暗殺者を擁する盗賊ギルド、武装商船団、多数の奴隷を支配する大地主などの有力者で構成された評議会が人間の領域の支配者になっていた。
魔神戦争後、六英雄の一人「赤髪の傭兵」ベルドがマーモ帝国を建国し、短期間で極めて強固な支配体制を構築することに成功する。ベルド亡き後は、アシュラム(暗黒騎士団団長)、バグナード(主席宮廷魔術師)、ショーデル(ファラリス教団最高司祭)、ルゼーブ(ダークエルフ族長)の有力者4名による評議会が統治した。またこの頃に眠っていた邪竜ナースが再び活動期に入って暴れ回ったが、評議会メンバーの活躍により邪竜ナースを服従させ以降の被害を収めている。
邪神戦争によりマーモ帝国は滅亡してフレイム王国の領土となり、フレイムの将軍にしてカシューの腹心であるシャダムが太守に就任する。この時、王城コンクァラーはウィンドレスト、帝都ペルセイはウィンディスに改称され、王城の地下はマーファ神殿へ改装された。後にフレイム領マーモ公国となり、スパークが公王に即位するが、カーディス教団の蜂起によってスパークは行方不明になり、王城が占拠され国家体制が崩壊する。スパークが帰還しカーディス教団を駆逐した後、ロードス諸国の承認を得て独立国マーモ王国となる。「王国の法に従う限りは妖魔も邪神信者も国民として認める」という他国にはない政策を採っており[注 6]、諸国から邪悪との烙印を捺され常に非難されているが、これらの邪悪な存在が国外へ流出するなどの事態は起こしておらず、国内においても厳格な統治を継続している。
歴代マーモ王
- ブルネイ王国
-
- ブルネイ
- マーモ帝国
-
- ベルド
- (マーモ評議会:アシュラム、バグナード、ショーデル、ルゼーブ)
- レイエス(新生マーモ帝国)
- フレイム領マーモ
-
- (太守シャダム)
- (公王スパーク)
- マーモ王国
-
- (国王代理カイエン[注 7])
- 建国王 スパーク
- (1代不明)
- アスラン
- アルシャー
その他の国家・地域
これらの国家・地域の他にも、いくつかの独立した集落が存在している。
- 帰らずの森
- ロードス島南東部に広がる森林地帯で、アラニアとカノンを分かつ国境にもなっている。ロードス島のみならずフォーセリア世界で所在が判明している唯一のハイエルフ居住地で、200人ほどのハイエルフが暮らしている。妖精界の住人だった頃の特性を色濃く残すハイエルフ達は寿命がないイモータル(不死者)であり、長老に至っては神話の時代に光の神々によって召喚され闇の神々と戦った時代から生きている、正真正銘の「妖精」である。
- 「始原の巨人」から生まれた世界樹を起源とする極めて誇り高い古代種族であり、変化を嫌う性格から古来より他種族と交わることを避け、魔法の結界によりハイエルフ以外は立ち入り禁止の地とされていた。同種の末裔であるエルフ族でさえ避ける。後にカノン自由軍に参加していたパーンとディードリットにより古の結界は解かれる事になるが、古来からの習慣は根強く残っており、好んでこの地に足を踏み入れる者はほとんどいない。
- 邪神戦争以降はパーンとディードリットが森の外れに家を構え、活動拠点にしている。カーラの支配を脱したウッド・チャックも二人に招かれ、居候的な立場で居住を許されている。パーン没後もディードリットが引き続き居住している。
- 鏡の森
- モス公国北部にあるエルフの代表的な集落群で、古代樹の一種「黄金樹」を中心とし、百人単位の集落が多数連合している。魔神戦争では魔神軍の急襲を受け、一時は森を放棄して隣国のハイランドに敗走するが、義勇部隊としてハイランド軍の大きな戦力となり、最終的には森の奪回に成功する。
- 上述のように、独力では勝ち目が無いと悟った時点で森を放棄、人間の国に集団逃亡して救援を仰いでおり、保守的な性格の人物が多いエルフとしてはかなり柔軟性のある集団である。文化面でも、人間の村とほぼ同じ外観の集落を構えるなど、人間の風俗や技術をかなり受容して有効活用している。
- エルフの集落はここ以外にも、マーモ島を除くロードス各所に複数存在していると思われる。カノン領内にあったエルフの集落は英雄戦争時のマーモ領有時代にほぼ全てがダークエルフによって殲滅されたが、邪神戦争後には、カノンのみならずマーモ島にもエルフの集落が作られ、マーモ王国の方針によりダークエルフとの共存が図られようとしている。
- 鉄の王国
- ロードス島北東部の白竜山脈にあり、魔神戦争後はロードス唯一となったドワーフの国家。国王は「石の王」と呼ばれる。
- 一般に人間社会には関心が薄いが、白竜山脈の麓にあるターバのマーファ大神殿とは古くから良好な関係を築いている。人間の国家間紛争にはほとんど関与しないが、魔神戦争時にはおよそ五千のドワーフ戦士団がモスを目指したことからも分かるように、その戦力は他のロードス諸国と比べても遜色ない規模と実力を誇る。また、ドワーフ族特有の工芸品や美術品の産地であるため、財政面でも豊かだと思われる。
- 石の王国
- ロードス島南西部のモス地方にあり、魔神戦争の発端となったスカードの更に南に位置する(ここより南には「最も深き迷宮」しかない)。鉄の王国と並ぶドワーフ集落で、山全体を刳り貫いて作った一大地下王国を築いていた。国王は「鉄の王」と呼ばれ、ドワーフ族特有の工芸品・美術品の産地として財政的は豊かだが、食料はほぼ全て外部に依存している。鉄の王国と同様に人間の国家間紛争に関与することは基本的にないが、唯一「エールの誓い」により結ばれた隣国スカードに対しては、実質的な後ろ盾となっていた。
- 人口は一万余りで隣接するスカードと同程度だが、数千の屈強なドワーフ戦士団の強さは折り紙付きで、モス公国内の大国相手でも互角以上と言われた。魔神戦争で強大な魔神軍団の奇襲に10日間戦い続け、鉄の王フレーベを除き全滅する。
- 南北の大門を繋ぐ大通りは文字通り山を貫通する巨大なトンネルで、そこから縦横に張り巡らされた支道や坑道はモス地方のみならずロードス島の各所につながり、最終的にはロードス島の反対側(北東部)にある兄弟国「鉄の王国」にまで繋がっていたと伝えられる。その多くは魔神との戦いの最中に閉ざされたとされる(少なくとも「鉄の王国」側は閉ざした。大地下道網の一部を魔神が利用したとも言われる)。
- 自由都市ライデン
- ロードス北西部にある商人たちによる自由都市。かつてはロードス島北西部全体を版図としたライデン王国の王都でもあった。王国滅亡後は有力な豪商たちで評議会を作り、自由都市国家として統治していた。魔神戦争期に魔神の首に賞金をかけ、「百の勇者」を集めるという役割を担う。
- 英雄戦争後はマーモのロードス本島侵攻の影響で混乱が続き、また火竜山の魔竜シューティングスターの襲撃により大きな被害を被ったため、ライデンは評議会を解散し自らフレイムの保護下に入ることで事態の収拾を図った。
テーブルトークRPG
ダンジョンズ&ドラゴンズ
『コンプティーク』で1986年9月号から連載されたリプレイの第1部と第2部においてはまだ独自システムは無く、「D&D誌上ライブ」と題して『D&D』を紹介する目的を持ってクラシックD&Dに独自の世界観を乗せた形になっていた。
日本のTRPGブームの立役者ではあったが、長らく単行本化されなかった。理由は「雑誌の記事なら問題無いが、単行本と言う商品として売り出すなら使用料をD&Dの版権元に払わなくてはならない為」と後に『コンプティーク』に書かれている。そのため、下記の『ロードス島戦記コンパニオン』が作られる事となり、第一部、第二部はそのルールを使って再プレイしたものを単行本化すると言う回り道になった。
トンネルズ&トロールズ
『ウォーロック』日本版14号(1988年2月)に「トンネルズ&トロールズ・ウィズ・ロードスアイランド」と題して、『T&T』を用いてロードス島を舞台にプレイできるよう設定やシナリオサンプル、リプレイなどが掲載された。リプレイは『RPGリプレイ ロードス島戦記 II』の巻末にも収録された。
ロードス島戦記コンパニオン
『ロードス島戦記』のオリジナルRPGシステムとしては最初の作品。パソコン用のコンピューターゲーム版のシステムをTRPG用にアレンジした物で、リプレイ連載第2部まで使用されていた『D&D』の影響を強く受けながらも独自の行為判定システムを採用している。
『ロードス島戦記コンパニオン』の特徴的なシステムとして集中力がある。これは、ゲーム中の行為判定に際し、通常の能力を使った判定とは別に、集中力を基準とした再判定を行えるというルール(ただし、この再判定を行える回数は有限であるため、使いどころを選ぶ必要がある)。これは、英雄候補たるプレイヤーキャラクターの才能や天運を表現したヒーローポイント的なものである。
ロードス島RPG
『コンパニオン』を基礎に、「特技」や「転職」によって多様なキャラクターを表現できるよう構成されたシステム。よりレベルが高い者から特訓を受けることでレベルアップ可能。しかし、「魔法戦士に転職すると、独自の魔法戦士魔法が使える」など、このシステムにしか記述がなく、他のシステムや小説版とは異なるデータが幾つか存在する。
『ロードス島戦記コンパニオン』とのもうひとつの相違点は、このシステムが最初に発売された時点で『ロードス島伝説』の小説展開が始まっていたことである。このため、魔神戦争時代を扱っていたこのシステム版のリプレイ単行本は「ロードス島伝説」のタイトルを冠して刊行された。ロードス島伝説の作品リストも参照。
ロードス島戦記RPG
2018年、ロードス島戦記30周年を記念して作られた新装版。『コンパニオン』及び『ロードス島RPG』を元にアップデートが加わっている。
ソードワールドRPG
本来は『ロードス島戦記』とは独立して展開されてきたシステムだったが、『ロードス島ワールドガイド』の発売によって、『ロードス島戦記』をソードワールドRPGへ統合することが可能になった。このとき追加されたルールとして、ソードワールドのシステムから逸脱したロードス島の英雄たちの活躍を合理的に再現できる超英雄ポイントのルールがある。超英雄ポイントを持つものは10レベルが上限である通常の英雄や英雄候補を超えた資質を持つ存在として、超英雄や超10レベルキャラクターと呼ばれる。
超英雄ポイントを使えば行為判定のやり直しができるほか、自分のレベル以上の魔法の使用、遺失魔法の既知化、上位精霊との盟約、抵抗判定の自動成功、などが行える。また、関連するレベルが上限レベルであるレベル10以上なら、成功判定の自動成功、神が身に降臨した際の魂の破滅の回避、レベル11以上へのレベルアップなども可能。消費した超英雄ポイントはシナリオ終了時に回復、消費することで最大値が増加する。効果の中には最大値を減少させて使用するものもある。
注釈
- ^ 水野自身も実在のロードス島(ロドス島)の存在を全く知らなかった。
- ^ 米国のTRPG作品の名称。日本のコンピュータRPGである『ドラゴンクエストシリーズ』(エニックス、現:スクウェア・エニックス)とは無関係。
- ^ 後に『ロードス島戦記コンパニオン』として正式に出版された。
- ^ フォーセリアでは主要な神として「至高神ファリス」「大地母神マーファ」「戦神マイリー」「知識神ラーダ」「幸運神チャ・ザ」の光の五大神と、それに「暗黒神ファラリス」を加えたものが六大神として知られる。詳しくはフォーセリア#六大神を参照。
- ^ 『コンプティーク』誌掲載のリプレイにおいては、英雄戦争の戦場に向かう一行が、ウォート、カーラの唱えたメテオスウォーム(『D&D』の魔法。『ロードス島戦記コンパニオン』のメテオストライクに相当)によって落ちる隕石の姿を遠くから見つめ、決戦の地に向かう、という場面で連載が完結していた。続く第2部では第1部の完結後の出来事は簡単に語られたのみで、詳細はのちの小説版『灰色の魔女』で初めて明らかにされている。
- ^ マーモ王国以外で妖魔や邪神信者が公然と活動できる国は、アレクラスト大陸のファンドリアやドレックノール、クリスタニア大陸のベルディアがあるが、ファンドリアとドレックノールは法が適切に機能しておらず、ベルディアは妖魔が国外に流出している。
- ^ マーモ騎士団長のパーンが実質的なマーモ王だったという説がある。
- ^ 『ロードス島伝説 太陽の王子、月の姫』のみレーベルは角川mini文庫。
- ^ 『新ロードス島戦記序章 暗黒の島の領主』のみレーベルは角川mini文庫
- ^ 単行本コミックス版のみ出版社はKADOKAWA
- ^ 1巻のみ「おちよしひこ」、2巻以降は本名「越智善彦」名義
- ^ 原典ではエトはカロッタ型の帽子を被っており、本作でも第2話よりカロッタ型帽子に変わっている。
- ^ このため、冒頭2分間は作品と無関係なCMだけが放送される。
- ^ 直接この作品へ出演はしていないが、前番組である電撃アワー『レジェンド・オブ・クリスタニア』『ゴクドーくん漫遊記外伝』でそれぞれ主役・ラジオパーソナリティを務めている。
- ^ ラジオ及びドラマ主題歌「風の羽」「炎のラグリマ」アーティスト。
出典
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- ^ ロードス島戦記生誕25周年|角川書店、2013年12月16日閲覧。
- ^ 『ロードス島戦記』25周年記念、2013年12月16日閲覧。
- ^ 水野良書き下ろしによる最新シリーズ『ロードス島戦記 誓約の宝冠1』8月1日発売決定!WEBストア他にて、予約解禁!
- ^ 「ロッコの早耳情報 (2)」、『ウォーロック』VOL.13、社会思想社、1988年1月、p.29。ISBN 4-390-80013-2
- ^ 『新ロードス島戦記』5 終末の邪教(上) 初版本(2005年11月1日発行)の帯による。
- ^ 「ロードス島戦記 誓約の宝冠 1」pp.214-215。
- ^ 「ロードス島戦記 誓約の宝冠 1」p.17。
- ^ 「ロードス島戦記 誓約の宝冠 1」P.97。
- ^ 「ロードス島戦記 誓約の宝冠 1」PP.126-127。
- ^ 「ロードス島戦記 誓約の宝冠 1」pp.118-119, 224-225。
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