ユーザビリティ ユーザビリティの概要

ユーザビリティ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/17 04:51 UTC 版)

他にも「使い勝手が良い」「可用性」「有用性」などの意味がある[2]

ユーザが目標を達成するためにシステムを利用するとする。例えば紙を切るためにハサミを利用する。このハサミは切れ味が良く、気持ちよく短時間で紙が切れた。すなわち高い満足感で高いパフォーマンス[3]を発揮し目標を達成できた。この「つかえる」「有用である」という特性をユーザビリティという。もしハサミの切れ味が悪く、時間をかけてなんとか切り終えたとすると、前者に比べてユーザビリティは低いといえる。

定義

use(使う)と able(できる)から来ており「使えること」が元々の意味である。

ISO 9241-11

ISO 9241-11:2018に基づくJIS Z 8521:2020では次のように定義される[4]

ユーザビリティ(usability)
特定のユーザが特定の利用状況において,システム,製品又はサービスを利用する際に,効果,効率及び満足を伴って特定の目標を達成する度合い。 — JIS、Z8521:2020

ユーザビリティを定義づける要素は次のように定義される。

  • 目標 (: goal): 意図した成果
  • 効果 (: effectiveness): ユーザが特定の目標を達成する際の正確性及び完全性
  • 効率 (: efficiency): 達成された結果に関連して費やした資源
  • 満足度 (: satisfaction): システム,製品又はサービスの利用に起因するユーザのニーズ及び期待が満たされている程度に関するユーザの身体的,認知的及び感情的な受け止め方

ユーザビリティは利用の成果(: outcome of use)を構成する一要素である[5]。すなわちシステムの品質ではなく、ある文脈の中であるユーザがシステムを利用する際に得られる成果が持つ特性の1つである。利用の成果に含まれる他の特性にはアクセシビリティ・危害の回避などが挙げられる[6]

ニールセン

ヤコブ・ニールセン『ユーザビリティエンジニアリング原論』(1994年)は、インタフェースのユーザビリティとは、5つのユーザビリティ特性からなる多角的な構成要素を持つとしている。

  1. 学習しやすさ: システムは、ユーザがそれを使ってすぐ作業を始められるよう、簡単に学習できるようにしなければならない。
  2. 効率性: システムは、一度ユーザがそれについて学習すれば、後は高い生産性を上げられるよう、効率的な使用を可能にすべきである。
  3. 記憶しやすさ: システムは、不定期利用のユーザがしばらく使わなくても、再び使うときに覚え直さないで使えるよう、覚えやすくしなければならない。
  4. エラー: システムはエラー発生率を低くし、ユーザがシステム使用中にエラーを起こしにくく、もしエラーが発生しても簡単に回復できるようにしなければならない。また、致命的なエラーが起こってはいけない。
  5. 主観的満足度: システムは、ユーザが個人的に満足できるよう、また好きになるよう楽しく利用できるようにしなければならない。

違い

ニールセンの定義するユーザビリティは、ISO 9241-11の定義よりも意味が若干限定的になっている。

ニールセンの定義では、ユーザが望む機能をシステムが十分満たしているかどうか、といった事柄はユーティリティ(実用性)に含まれる内容である。それと区別して、ユーザビリティは、その機能をユーザがどれくらい便利に使えるかという意味であるとされている。 一方、ISO 13407では、ニールセンがユーティリティと定義した内容も、ユーザビリティに含んでいる。つまりニールセンが定義するユーザビリティは、ISO 13407が定義するユーザビリティに内包される形となる。

ほかにISO 9126はソフトウェアの品質に関する規格で、理解性、修得性、操作性を挙げている。

訳語

ユーザビリティに類する日本語は、以下に挙げるような用語が、多数にわたって存在している。

使い勝手
使い勝手とは、使いやすさの程度を表す言葉であり、一般には「使い勝手がいい、悪い」という形で使われている。その意味合いはかなり広く、取り扱いが容易であること、操作が分かりやすいこと、便利な機能がついていること、などを意味している。その意味で、後述の大きなユーザビリティ(英語:big usability)やニールセンのユースフルネス(英語:usefulness)に近い概念であり、したがって、またISO9241-11の定義におよそ対応すると言ってよい。ただし、ユーザの利用状況や達成目標に適合している、というニュアンスまでは表現しえていないため、現在はユーザビリティというカタカナ語が一般的に使われている。
使いやすさ
使いやすさ (英語:ease of operation) とは、一般的には取り扱いが容易であることを意味している。前述のように使い勝手は使いやすさの程度をあらわす言葉であるが、使い勝手に比較すると使いやすさはその対象範囲が操作部位に限定される傾向がある。また時代的には、マンマシンインタフェースが研究対象とされていた時期によく使われていた。この意味で、操作性 (英語:operability) とも近い概念である。
利用性
利用性は利用のしやすさをあらわす言葉であり、「usability」の訳語として利用することも可能ではあるが、特定の達成目標に依存した面があり、またあまり一般的ではない。
使用性
使用性はISO9241-11をJIS規格にする際に「usability」の訳語として用いられた。その意味ではユーザビリティと等価であるともいえるが、必ずしも一般的な用語ではないため、特別な技術的文脈でしか使われていない。
可用性
可用性はユーザビリティに近い概念であるが、厳密にいうと「availability」の訳語であり、システムの壊れにくさを表すものである。
利用品質
利用品質は「quality in use」または「quality of use」の訳であり、英語においても「usability」とほぼ等価な意味合いで用いられている。ただ、この用語が使われるのは、品質 (quality) という観点で議論を行う文脈である場合が多く、品質保証や品質管理などに近い分野で使われることが多い。
ユーザーテスト
ユーザテストは、製品テスト、設計テスト、ユーザビリティテスト、設計検証など多くの名前で知られている。実際のシナリオで実際のユーザーとデザインをテストする非常に重要なプロセスであり、ユーザーの懸念やユーザビリティの問題を深く理解すれば、その問題を解決することができるとされる[7]

  1. ^ 編集統括), 安田英久(Web担 (2009年5月13日). “ユーザビリティ とは 意味/解説/説明 【usability】 | Web担当者Forum”. webtan.impress.co.jp. 2023年1月25日閲覧。
  2. ^ ユーザビリティが重要な理由とは?主な定義とUI・UXとの違い”. システム開発のプロが発注成功を手助けする【発注ラウンジ】. 2023年1月25日閲覧。
  3. ^ "パフォーマンス,すなわち,効果及び効率" JIS Z 8521:2020
  4. ^ ISO 9241-11:2018の定義: "extent to which a system, product or service can be used by specified users to achieve specified goals with effectiveness, efficiency and satisfaction in a specified context of use"
  5. ^ "この規格は,− ユーザビリティが利用の成果であることを説明し" ISO 9241-11:2018
  6. ^ 小林大二「JIS Z 8521:2020 ユーザビリティの定義及び概念 : 改訂のポイント」『人間工学』第57巻Supplement、日本人間工学会、2021年5月、S10-1、doi:10.5100/jje.57.s10-1ISSN 0549-4974CRID 1390569612379092480 
  7. ^ Toptal - How to Conduct Usability Testing in Six Steps
  8. ^ 黒須正明
  9. ^ "効果,効率又は満足の構成要素の中の一つの測定尺度が,ユーザビリティの全容を十分に表すことはできない。" JIS Z 8521:2020
  10. ^ "ユーザビリティの各構成要素の重要性は,利用状況及びユーザビリティを考慮する目的によって変わるため,測定尺度の選択及び組合せ方法に関する一般的な規則はない。" JIS Z 8521:2020
  11. ^ "各測定尺度の目標への相対的な重要性を考慮することが重要になる。" JIS Z 8521:2020
  12. ^ "客観的には,ユーザがタスクを完遂できていない状態でも,ユーザが正しく終了して次の行動の必要がないと思い込んでいる場合" JIS Z 8521:2020
  13. ^ "満足の客観的測定は,行動観察に基づく(例えば,システムの再利用)" JIS Z 8521:2020
  14. ^ "システム,製品又はサービスを設計する場合,− ユーザビリティが予想より低い場合,対象ユーザはシステム,製品又はサービスを利用できない,若しくは利用したがらない可能性がある。" JIS Z 8521:2020
  15. ^ "システム,製品又はサービスを設計する場合,… − ユーザビリティが十分な場合には,システム,製品又はサービスは,私的,社会的及び経済的利益をユーザ,雇用者及び供給者に提供する。" JIS Z 8521:2020
  16. ^ "システム,製品又はサービスを設計する場合,… − ユーザビリティが期待より高い場合には,システム,製品又はサービスには競争的な優位性がある" JIS Z 8521:2020
  17. ^ "客観的には,... 完遂できていない状態 ... 思い込んでいる場合にも,ユーザビリティ上の問題がある。" JIS Z 8521:2020
  18. ^ "見かけのユーザビリティ(apparent usability) ... つまり使いやすそうに見えるインタフェース" 黒須. (2022). 見かけのユーザビリティの研究について. U-site. 2022-11-10閲覧.
  19. ^ "実質的ユーザビリティ(inherent usability) ... 実際に使ってみて使いやすいインタフェース" 黒須. (2022). 見かけのユーザビリティの研究について. U-site. 2022-11-10閲覧.
  20. ^ a b Kurosu, Masaaki; Kashimura, Kaori (1995). Apparent Usability vs. Inherent Usability: Experimental Analysis on the Determinants of the Apparent Usability. CHI '95. Denver, Colorado, USA: Association for Computing Machinery. pp. 292-293. doi:10.1145/223355.223680. ISBN 0897917553. https://doi.org/10.1145/223355.223680 
  21. ^ "使いやすそうに見えるインタフェースを設計するのはフェイクにも近いことですよ、ということだ。" 黒須. (2022). 見かけのユーザビリティの研究について. U-site. 2022-11-10閲覧.
  22. ^ "無償サイトの場合には ... 少しインタラクションをしただけで簡単に他のサイトに移動してしまう ... 積み重ねという形でのユーザーエクスペリエンスが成立しにくい ... 無償サイトのユーザーエクスペリエンスは期待感と印象によって構成される傾向がある ... 見かけのユーザビリティ(apparent usability)... という点で、ユーザーの選択に影響している" 黒須. Webサイトのユーザビリティでは第一印象と長期的実利用のどちらが重要か/HCD-Net通信 #23. impress. 2022-11-10閲覧.


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