ハプティクス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/26 06:11 UTC 版)
研究
高速振動などの刺激を使い、様々な触感をシミュレートする研究がなされてきた。例えば振動するピンを格子状に配置したパッドで、表面に触ることで様々な触感を生じさせるというものである。それらは現実味のある触感は生み出せなかったが、フィードバックとしては便利であり、様々な形・きめ・弾力を識別することができる。研究用にハプティクスAPIもいくつか開発されており、Chai3D、OpenHaptics、H3DAPI などがある。
医療
医療シミュレーションのためのハプティクスインタフェースは、腹腔鏡検査やインターベンショナルラジオロジーといった身体に負担が少ない医療行為の訓練に特に有効であり[21]、遠隔手術にも有効である。これには、外科医があまり疲れずに似たような手術の回数をこなせるようになるという利点もある。ハプティクスはリハビリテーション用ロボットでも応用されている。
オハイオ大学のオステオパシーのカリキュラムでは、Virtual Haptic Back (VHB) というハプティクスを利用した医療シミュレーションが採用されている[22]。研究によれば、VHBは触診の学習に多大な効果があったという。VHBは人間の背中の外形と堅さをシミュレートし、2つの触覚インタフェースを使って触診を訓練できる。ハプティクスは義肢や装具にも適用されてきた。義肢から着用者に必須なフィードバックを提供すべく研究が続けられてきた。アメリカ合衆国教育省とアメリカ国立衛生研究所は、この分野の研究プロジェクトをいくつか行っている。Psyonic社は、2021年9月、触覚フィードバックを有する唯一の、かつ、市場で最速の人工義手Ability Hand[23]を製品として世に出した[24]。
ロボット
Shadow Hand は人間の手の強さ・繊細さ・複雑さを再現すべく、触感・圧力・位置などを把握するロボットハンドである[25]。ロンドンの Richard Greenhill のチームが The Shadow Project の一部として開発したもので、今では Shadow Robot Company として企業化している。現在も進行中の開発計画は、誰もが納得する世界初の人工ヒューマノイドを完成させることを目標としている。初期のプロトタイプはNASAのヒューマノイド型ロボットあるいはロボノートのコレクションで見られる[26]。Shadow Hand には各関節と指の腹に触覚センサがあり、それらの情報が中央コンピュータに送られ、処理・解析される。カーネギーメロン大学とドイツのビーレフェルト大学は、触覚についての研究に Shadow Hand を利用している。
バーチャルリアリティ内のオブジェクトに触ることができるという初期の技術 PHANTOM は、MITの Ken Salisbury の指導する学生だった Thomas Massie が1993年ごろ開発した[27]。
アートとデザイン
触覚は単なる感覚ではなく、仮想オブジェクトとのリアルタイムの相互作用を可能にする。そのためハプティクスは、音響合成、グラフィックデザイン、コンピュータアニメーションといったバーチャルアートでも使われている。触覚デバイスにより、アーティストはリアルタイムで音響や画像を生成する仮想機器と直接的接触を持つことができる。例えば、バイオリンの弦のシミュレーションでは触覚デバイスとしての弓をアーティストが持ち、仮想の弦への圧力や表現性によってリアルタイムの振動を生み出す。この場合は物理モデル音源を使う。
高い自由度のある入力機器に触覚フィードバックを備えたもので、デザイナーやアーティストが作っている仮想の「表面」を感じさせることで、素早くかつ自然な造形が可能となる[28]。
ハプティクスを制作に使っている著名なアーティストとしては、Christa Sommerer と Laurent Mignonneau[29]、Stahl Stenslie[30] などがいる。
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