スミレ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/25 19:18 UTC 版)
利用
食べられる野草のひとつとして知られ、若芽、若葉、つぼみ、花を利用する。採取適期は暖地が4 - 5月、寒冷地では5 - 6月ごろとされ、若芽や若葉を葉柄ごと摘み取る[4]。葉は灰汁は少なく、軽く茹でて水にとって冷まし、おひたしや和え物、酢の物、細かく刻んで混ぜご飯にした「スミレ飯」にしたり、生のまま天ぷら、汁の実、サラダにする[4][5]。花の部分はさっと熱湯にくぐらせて酢水で冷まし、酢の物や吸い物の椀ダネ、生のままサラダの彩りや砂糖漬け、寒天寄せ、花酒にする[4]。食味はあくやクセがなく、快い歯触りが楽しめ、花を使うと美しい料理になると評されている[4]。
食用に利用できるのは、本種スミレのほか、タチツボスミレ、オオバキスミレ、スミレサイシン、ノジスミレなどである[4]。ただし他のスミレ科植物、例えばパンジーやニオイスミレなど有毒なものがあるため注意が必要である。
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スミレ
毒性
変種
種内の変種としては、以下のようなものがある。
- アツバスミレ Viola mandshurica var. triangularis Mizushima
- 本州中部南岸から九州にわたる海岸に見られるもの。葉は厚くて幅が広く、表面に光沢がある。
- アナマスミレ Viola mandshurica var. crassa Tatew.
- 北海道から本州中部日本海側の海岸型。葉は矛型で細く、厚くて光沢がある。
類似種
スミレ属には種類が多い。日本産でスミレに似た姿の種としては以下のようなものがある。いずれも茎は地表にあって太くてごく短く、葉は根出状。また、人里周辺に顔を出すものも多い。
- ヒメスミレ Viola confusa Champ. ex Bentham subsp. nagasakiensis (W. Becker) F. Maek. et Hashimoto
- 人家周辺に多い。全体に一回り小さく、葉は三角形。本州から九州、台湾に分布。
- ノジスミレ Viola yedoensis Makino
- 平地に生育。普通、葉や花茎一面に毛がある。葉はやや長い楕円形っぽい。本州から九州、朝鮮南部、中国に分布。
- コスミレ Viola japonica Langsd.
- 葉は卵形っぽいハート形。北海道南西部から九州、朝鮮南部に分布。
- リュウキュウコスミレ Viola pseudo-japonica Nakai
- コスミレに似るが、葉はハート形より三角に近い。南西諸島に分布。
- アカネスミレ Viola phalacrocarpa Maxim.
- サクラスミレ Viola hirtipes S. Moore
- 花が大きく、葉はハート形。北海道から九州に分布。
- ヒカゲスミレ Viola yezoensis Maxim.
姿が似ていて白い花をつけるものに次のような種がある。
- アリアケスミレ Viola betonicifolia Smith var. albescens (Nakai) F. Maek. et
- 形はスミレに似た点が多く、花は白。本州から九州、朝鮮、中国に分布。琉球列島には同種ながらリュウキュウシロスミレ Viola betonicifolia var. oblongo-sagittata (Nakai) F. Maek. et Hashimoto がある。花がより長い柄の先につく。種としては東南アジア一帯にまで分布する。
- シロスミレ Viola patrinii DC
上記種は形態的にスミレに近いものであるが、むしろ、同じスミレ属のタチツボスミレ Viola grypoceras var. grypoceras が普通種で、スミレとも混在するため、これがスミレと認識されている場合が多い。こちらの方は、茎が立ち上がるために知っていれば区別は簡単である。ただしこちらにも類似種が多いので、種の同定はやはり簡単ではない。
外来種は、パンジーやビオラと呼ばれる園芸種が多い。種としてのスミレは東アジアにしか分布せず外国文学に出てくるスミレは別の種を指す。ヨーロッパではニオイスミレも普通に馴染まれている。
- ^ a b c d e 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Viola mandshurica W.Becker スミレ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年4月2日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Viola mandshurica W.Becker f. macrantha (Maxim.) Nakai ex Kitag. スミレ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年4月2日閲覧。
- ^ 米倉浩司; 梶田忠 (2003-). “「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)”. 2011年4月30日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j 金田初代 2010, p. 34.
- ^ a b c d e f g h i j 川原勝征 2015, p. 46.
- ^ a b 金田初代 2010, p. 35.
- ^ a b 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2012, p. 188.
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