ジャバウォックの詩 造語の発音

ジャバウォックの詩

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/10 07:27 UTC 版)

造語の発音

スナーク狩り』の序文で、キャロルは以下のように述べている:

“slithy toves”とは一体どのように発音するのかと、しばしば私に問い掛けられる質問に対する回答の機会を与えてください。“slithy(スライシー)”の中にある“i”は、“writhe(ライス:ねじ曲げる)”の中の“i”の様に長く発音します。そして、“toves(トーヴ)”の発音は“groves(グローブ:木立ち)”と韻を踏みます。また、“borogoves(ボロゴーヴ)”の中の最初の“o”は、“borrow(ボロー:借りる)”の最初の“o”の様に発音します。私は人々が“worry(ウォリー:憂う)”の中の“o”の音を当てようとして試みていると聞きました。これは人間的な曲解というものでしょう。

原型と構成

『ジャバウォックの詩』の第1節は、本来はキャロルが自分の家族のために定期的に制作していた肉筆回覧誌『ミッシュマッシュ』"Mischmasch"で発表された作品である。この第1節は『古英語詩の断片』"Stanza of Anglo-Saxon Poetry."と題される、あたかも「発見された古詩の断片」のように、2つの言語を組み合わせ、古い英語アングロサクソン語のような響きを持つ造語で書かれた「奇態なる」詩の断片で、作者は後のハンプティ・ダンプティとは別の解釈による翻訳を幾つかの単語に施していた。例えば、「ラース (rath)」はツバメカキを主食とし直立した頭と膝で歩ける足を持つ緑色の陸亀の一種であると記述されている。


1957年3月1日のタイムズ文芸書評と1962年のルイス・キャロル・ハンドブックにおいて、ロジャー・ランセリン・グリーンは、『ジャバウォックの詩』の第1節以外の部分は、古代ドイツのバラッド「巨人山脈の羊飼い英語版の記事」に触発されたのではないかと指摘している。この叙事詩の中で、若い羊飼いは怪物グリフィンを打ち倒す。このバラッドはアリスの物語が発表される数年前、1846年にルイス・キャロルの親族マネラ・ビュート・スメドレイによって英訳、発表された。ただ、マーチン・ガードナーはグリーンが、「書き方とものの見方」をパロディしているもの、両者の類似は「具体的に上げることはできない」とするのを引き、この詩が何のパロディであるかは「はっきりしない」と言っている[8]

『ジャバウォックの詩』の特に面白い点は、多数のナンセンスな単語を含んでいながらも、詩の構成は古典イギリス詩に完璧に一致しているところである。センテンスの構成は精密であり(逆に言えば、非英語による再現は困難である)、詩としての形式が観察でき(例えば、四行詩、押韻弱強格等)、事件の流れの中にある何らかの「物語」が認識される。『鏡の国のアリス』でのアリスの言によれば「なぜかしら、頭がたくさんの気持ちで一杯になるみたい――なにがどうなってるのかも、さっぱり分からないのに!」という「物語」である。

翻訳

スペイン語ドイツ語ラテン語フランス語イタリア語チェコ語ハンガリー語ロシア語ブルガリア語日本語ポーランド語、そしてエスペラントを含む多数の言語への翻訳によって、『ジャバウォックの詩』は全世界に知られている。

翻訳作業で注目すべきなのは、元詩に含まれる主要な単語の多くが、本来の意味を持たないキャロル独自の造語であるという点である。言語の翻訳に際して語形論へ払われる注意の中にあって、翻訳者による言葉の案出は、キャロルの元詩からの、同音異義語までも含めた最小のレーベンシュタイン距離を持つ、翻訳者自身の造語の作成のように見える。オリジナルの単語と翻訳された単語は辞書の中にある実在する単語のように対応しているが、必ずしも同様の意味を備えてはいない。しかしながら、元詩全体に含まれる本質は残されている。

日本語翻訳者による『ジャバウォックの詩』の日本語への訳文は、下記の外部リンクを参照。


  1. ^ Alice in Sunderland (2007) Brian Talbot Dark Horse publications.
  2. ^ Vikings and the Jabberwock: Croft, Sockburn and Sadberge”. 2017年7月7日閲覧。
  3. ^ 『詳注アリス』ルイス・キャロル著、マーチン・ガードナー注 346頁
  4. ^ a b Dodgson's Explanation to Maud Standen”. 2008年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年10月1日閲覧。
  5. ^ 『詳注アリス』ルイス・キャロル著、マーチン・ガードナー注 346頁 ガードナー自身は「どう見てもburstとbubbleの組み合わせだが」と言っている
  6. ^ 健部伸明編『幻獣大全』632頁
  7. ^ 『詳注アリス』ルイス・キャロル著、マーチン・ガードナー注 469頁
  8. ^ 『詳注アリス』ルイス・キャロル著、マーチン・ガードナー注 348頁





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