カベルネ・ソーヴィニヨン
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醸造
カベルネ・ソーヴィニヨンには品種特有の個性があり、かつそれが広く人気であるといはいえ、醸造家の考え方や個性に左右される部分も多くあり、最も明確な影響があるのはオーク樽を使うかどうかである。一般的に、最初に考えることは単一品種で作るか、品種をブレンドするかを決めることである。いわゆる「ボルドーブレンド」ではカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フランが用いられ、補助的にマルベックやプティ・ヴェルド、カルメネールが使われることもあるが、このようなブレンドはアメリカでも行われ、“メリテージ”と称されている。他にも、シラーやテンプラリーニョ、サンジョベーゼなどとブレンドされることもある[3]。ブドウ品種をブレンドして使う場合、どのタイミングでブレンドするかも決めなくてはならない。すなわち、ブレンドを発酵の前か、発酵中、あるいは発酵後のどこで行うかである。ブドウ品種を別々に発酵させる場合、熟成までを別々に行い、ボトル詰めの直前にブレンドする場合が多い[12]。
カベルネ・ソーヴィニヨンの果実は小さく、果皮は厚い。そのため、種と果実の比は1:12にのぼる[注釈 1]。これはワインのストラクチャーや香りに強く影響し、フェノール類やタンニンが極めて豊富なワインとなる。とりわけ、醸造前に長時間のマセラシオン(果汁を種や果皮と接触させておくこと)をする場合は顕著である。ボルドーでは、伝統的にマセラシオンは3週間にわたって行われる。醸造家のなかには、この期間に休暇を取りハンティングなどに出かけてしまう者さえいる。これほど長期のマセラシオンを行うと、極めてタンニンも香りも強くなるため、飲み頃に達するまでには熟成が必要になる。生産後数年で飲めるような飲みやすいワインを作ろうとする場合は、マセラシオンの期間を数日程度まで短くしてしまうこともある。
発酵は、カベルネ・ソーヴィニヨンの場合30oC以上の温度で行われる。発酵時の温度もワインに影響を与え、高温で発酵させると色が濃く香りの複雑なワインとなり、低温では果実の香りが残りやすいとされる。オーストラリアでは、飲みやすくフルーティーなカベルネ・ソーヴィニヨンを作るためにマセラシオン・カルボニックを採用することもある[3]。
ワインを作るうえで、カベルネ・ソーヴィニヨンの特徴である豊富なタンニンを考慮する必要がある。マセラシオンの期間が長いと、果皮や種子からタンニンが抽出されるため出来上がりに影響する。色を濃く、香りを強くするためにマセラシオンの期間を十分に取る場合、強すぎるタンニンを和らげるための工夫がなされる。一般的な手法としては、オーク樽での熟成が挙げられる。これは、わずかに酸化熟成することでブドウの強烈なタンニンが和らぎ、かつまろやかなオーク由来のタンニンが加わる。ゼラチンや卵白といった清澄剤もタンニンを減らす効果がある。これは、正に帯電したタンパク質は負に帯電したタンニンと結合するからである。こうして結合した清澄剤とタンニンは、濾過の際に取り除かれる。他に、マイクロオキシジェネーションと呼ばれる手法もある。これは樽熟成の際のわずかな空気接触を模倣して、限られた量の酸素に触れさせるというもので、これによりタンニン同士が結合しより大きな分子になることでまろやかな味わいに変化する[5]。
オーク樽との親和性
カベルネ・ソーヴィニヨンの特色の一つとして、醸造時および樽熟成時のオーク樽との親和性が挙げられる。ブドウの強いタンニンを和らげる効果があるほか、樽由来のバニラやスパイスのような香りは、カベルネ・ソーヴィニヨンの特徴である黒スグリやタバコの香りと調和する。カベルネ・ソーヴィニヨン中心のボルドーブレンドに225リットル(59ガロン)のバリックと呼ばれる木樽を使うことはとりわけ成功を収めており、このサイズの樽は世界中で最も使われるようになった。どのくらい樽を効かせるか(あるいはどんなオーク材を用いるか)は出来上がるワインの品質に大きな影響を与える。アメリカンオークを用いると強烈な樽香をつけることができ、とりわけ新樽を用いた時に顕著である。しかし、フレンチオークと比べるとできあがるワインの複雑性に劣る。同じアメリカンオークでも産地によって違いがあり、オレゴン産のオーク樽はミズーリ、ペンシルバニア、バージニアといった産地に比べてよりはっきりとした樽の影響をワインに及ぼす。あたかもブドウ品種をブレンドするかのように、複数の産地のオーク樽を新旧取り混ぜて用い、出来上がったワインをブレンドする場合もある[3]。
一般的なバリックではなく、別の樽を用いることで樽の効き方をコントロールすることもできる。大きい樽を使えば、樽とワインが接触する部分が相対的に少なくなるので、樽香は穏やかになる。イタリアやポルトガルでは栗やセコイアといったオーク以外の木材でできた樽が使われることもある。他には、ステンレスタンクで発酵や熟成を行い、そこにオークチップやオーク板を漬けておくような手法もある。この方法ではオーク樽を使うよりも低コストではっきりした樽香を付けることができるが、まろやかで調和のとれた樽香にはなりにくく、樽熟成のようにわずかにワインが酸化することによる効果も得られない[5]。
注釈
出典
- ^ a b c d e f g h i The Oxford companion to wine. Robinson, Jancis. (3rd ed ed.). Oxford: Oxford University Press. (2006). ISBN 0198609906. OCLC 70699042
- ^ “Distribution of the world's grapevine varieties”. International Organisation of Vine and Wine. 28 February 2018. Retrieved 1 March 2018閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag Oz., Clarke, (2001). Oz Clarke's encyclopedia of grapes. Rand, Margaret. (1st U.S. ed ed.). New York: Harcourt. ISBN 0151007144. OCLC 48239622
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- ^ a b c d e f g h i j k l m n Evan., Goldstein, (2006). Perfect pairings : a master sommelier's practical advice for partnering wine with food. Goldstein, Joyce Esersky., Pool, Joyce Oudkerk.. Berkeley: University of California Press. ISBN 9780520243774. OCLC 61478729
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- ^ Walker, A. R.; Lee, E.; Robinson, S. P. (2006). “wo new grape cultivars, bud sports of Cabernet Sauvignon bearing pale-coloured berries, are the result of deletion of two regulatory genes of the berry color locus”. Plant Mol Biol 62 (4–5): 623–635.
- ^ a b “Meritage: What's in a Name”. Wine Maker Magazine, August 2004. 2013年5月25日閲覧。
- ^ “カベルネソーヴィニヨンとヤマブドウどちらの良さも兼ね備えた、日本固有品種ヤマ・ソーヴィニヨンの特徴とは”. ワインショップソムリエ. 2024年3月10日閲覧。
- ^ “About us”. Rutherford Dust Society. 2008年2月22日閲覧。
- ^ 1951-, Stevenson, Tom, (2005). The Sotheby's wine encyclopedia. Stevenson, Tom, 1951-, Sotheby's (Firm) (4th ed., fully updated ed.). London: DK. ISBN 0756613248. OCLC 63178380
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- ^ J. Gaffney (December 31, 2006). “Drinking Cabernet May Cut Risk of Alzheimer's, Study Finds”. Wine Spectator Magazine: 17.
- ^ Marambaud P, Zhao H, Davies P (2005). “esveratrol promotes clearance of Alzheimer's disease amyloid-beta peptides”. J. Biol. Chem 280 (45): 37377–82.
- ^ Fantinelli, J. C.; Mosca, S. M (2007). “Cardioprotective effects of a non-alcoholic extract of red wine during ischaemia and reperfusion in spontaneously hypertensive rats”. Clin Exp. Pharmacol. Physiol 34 (3): 166–169.
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