カガン カガンの概要

カガン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/04 14:27 UTC 版)

意味

魏書』列伝第九十一(蠕蠕伝)において、丘豆伐可汗の意味を「“丘豆伐”猶魏言駕馭開張也,“可汗”猶魏言皇帝也。」と説明していることから、可汗とは中国で言う皇帝の意味であることがわかる。また、『北史』列伝第八十七(突厥伝)に「土門遂自號伊利可汗,猶古之單于也;號其妻為可賀敦,亦猶古之閼氏也。」、『旧唐書』列伝第一百四十四上(突厥伝上)に「可汗者,猶古之單于,妻號可賀敦,猶古之閼氏也。」、『新唐書』列伝一百四十上(突厥上)に「至吐門,遂彊大,更號可汗,猶單于也,妻曰可敦。」とあるように、可汗とは匈奴で言う単于にあたるとしている[3]

読み

古代テュルク語/突厥文字で刻まれた突厥碑文や回鶻碑文・イェニセイ碑文などに「[1] Q.G.N」とあるため、漢籍に記される「可汗」は「カガン(qaġan/qaγan)」と発音することがわかる。また、7世紀東ローマ帝国の歴史家テオフィラクト・シモカッタの記述でも、アヴァールの君主号を「Gagan」または「Khaghan」と記しているため、それがわかる。

起源

通典』辺防典巻一百九十六(北狄三)に「於是自號丘豆伐可汗。可汗之號始於此。」とあることから、可汗号を採用したのは柔然丘豆伐可汗(社崙)が最初であるように思われるが、『資治通鑑』巻七十七の「至可汗毛,始強大,統國三十六,大姓九十九。後五世至可汗推寅,南遷大澤。又七世至可汗鄰,使其兄弟七人及族人乙旃氏、車惃氏分統部眾為十族。」という記述、『宋書』列伝第五十六(吐谷渾伝)の「樓喜拜曰“處可寒”。虜言“處可寒”,宋言“爾官家”也。」という記述、『晋書』列伝第六十七(四夷伝)の「樹洛干…號為戊寅可汗,沙漒雜種莫不歸附。」という記述、『北史』列伝第八十四の「乃跪曰“可汗,此非復人事”」「伏連籌死,子夸呂立,始自號為可汗。」という記述、『晋書』載記二十五の「乞伏國仁,…推為統主,號之曰乞伏可汗託鐸莫何。」という記述などから、丘豆伐可汗より以前から可汗号を使用していた形跡がみられる。これに対して白鳥庫吉は、「後世の追書と断ずるの外はない」とし、『通典』の記述のみを支持した[4]。しかし、内田吟風のように、可汗号が丘豆伐可汗以前からあったと支持する研究者もいる[5]。また、太平真君4年(443年)に、北魏太武帝鮮卑拓跋部の故地(現在の内モンゴル自治区フルンボイル市オロチョン自治旗に位置する大興安嶺山脈山中の森林地帯)にある嘎仙洞に、祖先を祀る漢文の祝文を刻ませたものが1980年になって発見され、そこには「皇祖先可寒を配し皇妣先可敦を配す」と末尾部分に記されていたため、これを北魏が皇帝号採用以前に可寒、可敦の君主号を使用していた傍証と考える研究者もいる[6]

[7][8][9]

カガン(可汗)号を使用した王朝・民族


  1. ^ a b 右から読む。
  2. ^ 可汗”. 精選版 日本国語大辞典. 2022年9月29日閲覧。
  3. ^ 『魏書』、『北史』、『旧唐書』、『新唐書』
  4. ^ 白鳥庫吉「可汗及可敦称号考」東洋学報十一
  5. ^ 内田吟風「柔然族に関する研究」
  6. ^ 梅村坦「草原とオアシスの世界」『岩波講座 世界歴史9 中華の分裂と再生』、岩波書店、1999年。ここで梅村は、本来は部族内部の長を意味した可寒号が道武帝拓跋珪の皇帝即位によって最高君主の称号として権威付けられ、彼によって北方に追われた社崙が北魏との対抗上意識的に可汗号を採用したとしている。
  7. ^ 『通典』、『資治通鑑』、『宋書』、『晋書』、『北史』
  8. ^ 白鳥 1970,p141-148
  9. ^ 内田 1975,p284-292


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