エンジュ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/31 03:38 UTC 版)
利用
街路樹として使われるほか、新芽は茶の代わりに、蕾と種子は染料になる[15]。乾燥させた蕾や莢果は止血作用から伝統薬として使われる。
街路樹・庭園木
日本をはじめ、中国や韓国でも街路樹として珍重されている[5]。公園や庭園にも植えられている[11]。韓国の世界遺産のひとつである昌徳宮には、大きなエンジュの木が植えられている[5]。日本では中国での「縁起の良い木」とされるゆえんから、庭木として鬼門の方角や玄関先に植えることがある[15]。
薬用
生薬・ハーブ | |
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効能 | 止血 |
原料 | エンジュ(花蕾) |
成分 | ビタミンK |
臨床データ | |
胎児危険度分類 |
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法的規制 |
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識別 | |
KEGG | E00221 D09255 |
別名 |
槐花(カイカ) 槐角(カイカク) カイヨウ |
花を乾燥させたものは、槐花(かいか)、蕾を乾燥させたものが槐花米(かいかべい)または槐米(かいべい)という生薬で、止血作用がある[8]。莢を乾燥して生薬にしたものは槐角(かいかく)と称し[8]、止血剤や高血圧に用いられる[5]。花、蕾は6 - 8月、果実は8 - 9月に採集して天日乾燥して調製される[8]。
エンジュに含まれるルチンはサプリメントとして利用されている。抽出されたトロキセルチンは静脈瘤などの静脈疾患用医薬品として海外で利用されることがある。
花・蕾にはルチンを多く含有する。他に、ゲニスタチンとその配糖体のゲニステイン、ケンフェロール、ソフォリコシド(Sophoricoside)などが検出されている。アルカロイドのシチシンを含む。
民間療法では、痔や目の充血に、1日量5グラムの花、蕾、果実を乾燥させたものを600 ㏄の水で煎じて、3回に分けて服用する用法が知られる[8]。熱をとって止血する薬草として知られ、出血が主なときは花や蕾がよく、腫れが主なときは果実がよいといわれている[8]。
木材
木質は堅硬で、中国では馬車や荷車、造船にも用いられる重要な木材であった。日本では釿(ちょうな)の柄として用いられる[16]。ただし現在「エンジュ」の名で床柱などの美観材として流通しているのは別種のイヌエンジュで、本来のエンジュの方はこの面ではほとんど顧みられていない。
注釈
出典
- ^ “Styphnolobium japonicum information from NPGS/GRIN”. USDA. 2008年2月19日閲覧。
- ^ “Styphnolobium japonicum - ILDIS LegumeWeb”. 2008年2月19日閲覧。
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Styphnolobium japonicum (L.) Schott エンジュ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月31日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Sophora japonica L. エンジュ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月31日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m 田中潔 2011, p. 64.
- ^ Styphnolobium japonicum, NCBI Taxonomy
- ^ 辻井達一 1995, p. 220.
- ^ a b c d e f 貝津好孝 1995, p. 179.
- ^ a b c 林将之 2011, p. 24.
- ^ a b 林将之 2008, p. 132.
- ^ a b c d e 林将之 2008, p. 133.
- ^ a b c d e f 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 196.
- ^ a b 林将之 2011, p. 25.
- ^ 井手任, 守山弘, 原田直國, 横張真「果実食鳥によって街路植栽より林内に散布されたエンジュの分布特性について」『造園雑誌』第50巻第5号、日本造園学会、1986年、161-166頁、doi:10.5632/jila1934.50.5_161。
- ^ a b 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 77.
- ^ “大工道具の紹介 斧・鉞”. 竹内大工道具館. 2021年4月16日閲覧。
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