エゾミカサリュウ 文化利用

エゾミカサリュウ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/30 00:18 UTC 版)

文化利用

エゾミカサリュウは上述のとおり恐竜ではない可能性が高まったものの、地元の三笠市ではティラノサウルス型肉食恐竜の復元イメージ[11] が強く残り、町おこしの目玉として観光振興に利用された。三笠市立博物館前と桂沢湖畔の道立自然公園入口には、高さ3m近くの復元像が飾られただけでなく、毎年夏には三笠恐竜まつりが開催され、エゾミカサリュウをかたどった恐竜みこしが町を練り歩いた。さらに、マスコットの『リュウちゃん』のイラストが市内の観光地各所に飾られ、恐竜ではないという訂正はしづらい状況となった。[12] しかし、最初の鑑定者である小畠も含め、学界がエゾミカサリュウを恐竜として認識していないことは、地元新聞にも次第に報じられるようになり[13]、地元の落胆が広がった。以後、エゾミカサリュウがどのような生物だったのかに言及される機会は減少し、また海棲生物であることを伏せられたかたちで大型肉食爬虫類と紹介されることもある[14]

2009年頃にゆるキャラブームに乗じてマスコット「りゅうちゃん」も復活し、着ぐるみも作成された。プロフィールには水泳が得意で好物がアンモナイトであるとPRされている[15]

2016年に近隣の芦別市で発掘され、2018年に北海道大学の研究グループによってティラノサウルス類の尾椎骨の一部と判明した化石(道内初のティラノサウルス類化石)が三笠市立博物館で展示されるようになり、幻に終わったはずの「ティラノサウルスの仲間の肉食恐竜」が三笠市周辺にも確かに存在していたことが証明された。


  1. ^ a b Jiménez-Huidobro, Paulina; Caldwell, Michael W. (2019). “A New Hypothesis of the Phylogenetic Relationships of the Tylosaurinae (Squamata: Mosasauroidea)”. Frontiers in Earth Science 7. doi:10.3389/feart.2019.00047/full. ISSN 2296-6463. https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/feart.2019.00047. 
  2. ^ アンモナイトが生きていた海”. 三笠ジオパーク. 2019年10月20日閲覧。
  3. ^ エゾミカサリュウ化石”. 文化遺産オンライン. 2019年10月20日閲覧。
  4. ^ 展示室1【白亜紀の世界と化石】』(プレスリリース)三笠市立博物館https://www.city.mikasa.hokkaido.jp/museum/detail/00001351.html2019年10月20日閲覧 
  5. ^ Kikuwo Muramoto、Ikuwo Obata「A way to dinosaur –discovery of Yezosaurus–」『Hokuensya』1977年、115頁。 
  6. ^ Caldwell MW, Konishi T, Obata I, Muramoto K. 2008. New species of Taniwhasaurus (Mosasauridae, Tylosaurinae) from the upper Santonian-lower Campanian (Upper Cretaceous) of Hokkaido, Japan. Journal of Vertebrate Paleontology 28 (2): 339-348.
  7. ^ Huidobro, Jimenez (Fall 2016). “Phylogenetic and Palaeobiogeographical Analysis of Tylosaurinae (Squamata: Mosasauroidea)” (英語). ERA. 2023年8月30日閲覧。
  8. ^ 世界初のエゾミカサリュウ全身復元模型の展示が始まりました!”. 三笠市立博物館. 2019年10月20日閲覧。
  9. ^ a b エゾミカサリュウ化石”. 国指定文化財等データベース. 2019年10月20日閲覧。
  10. ^ 日本産モササウルス類 初の全身復元骨格製作』(プレスリリース)穂別博物館、2019年4月24日http://pomu.town.mukawa.lg.jp/secure/5664/phosphorosaurus_ponpetelegans_press_release201904.pdf2019年5月23日閲覧 
  11. ^ 化石発見から1年足らずの1977年3月当時、円谷プロが制作した特撮テレビ番組『恐竜探険隊ボーンフリー』第24話の劇中、「日本で最初に発見された肉食恐竜」という解説でティラノサウルスによく似た姿のエゾミカサリュウが登場したが、これも発見当初に流布したイメージそのままに造型されたものであり、現在では「間違った復元像」といえる。
  12. ^ ただし、当時は研究者以外、海棲爬虫類も翼竜も含め中生代の大型爬虫類はすべて『恐竜』と呼んでいた時代でもあった。
  13. ^ 1989年3月14日北海道新聞 「恐竜、実は『トカゲ』」「鑑定ミスが判明」「シンボル『リュウちゃん』困ったナ」
  14. ^ 講談社 『日本の天然記念物』
  15. ^ りゅうちゃん”. 自治体ドットコム. 2015年6月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年10月20日閲覧。


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