アメリカ国立気象局 アメリカ国立気象局の概要

アメリカ国立気象局

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/26 16:26 UTC 版)

アメリカ国立気象局
National Weather Service
国立気象局のロゴマーク
組織の概要
設立年月日1870年2月9日
管轄アメリカ合衆国連邦政府
本部所在地メリーランド州シルバースプリング
行政官
  • ケン・グレアム(局長)
上位組織アメリカ海洋大気庁
下位組織
ウェブサイトwww.weather.gov

日本語圏では、(NOAAの一部局としての) 気象業務部、国家気象局、また単に国立気象局と呼称されることもある。かつて米国内では、気象局 (Weather Bureau) の名で知られた[1]。「米国民の生命財産を保護し、国家経済の増進を図るため、合衆国領土とその周辺水域および海域における気象水文気候の予報や警報を提供すること」を任務とする。本部所在地はメリーランド州シルバースプリング

歴史

20世紀初頭、予報の作成に当たるNWSの予報官

フィラデルフィアにあるフランクリン研究所の気象学者ジェームズ・エスピー(James Espy)は、1831年から同所の気象観測網を使って気象月報を発行し始めたが、陸軍が駐屯地での観測結果の提供の協力を申し出たため、1834年9月に委員長をエスピーとする気象合同委員会が設立されて、観測結果の収集が行われた。これはまだ不完全なものだったが、アメリカで実質的に国家が関与する初めての気象観測網となった[2]

1846年にワシントンにスミソニアン協会(Smithsonian Institute)が設立されると、その初代理事長であったジョゼフ・ヘンリーは、アメリカ国内に気象観測網を設立した。これは民間によるものだったが、手法や基準が統一された本格的な組織的気象観測網であり、電報を利用した即時的な天候情報の収集も行われた。しかし、南北戦争と1865年のスミソニアン協会本部の火事により、その機能は停止した[3]

当時五大湖では嵐による海難が多発しており、それを懸念したハルバート・ペイン下院議員(Halbert E. Paine)は、議会に国家気象機関の設立を請願した。連邦議会はこれを承認し、1870年にユリシーズ・グラント大統領は設立の法案に署名した。これは当時、南北戦争で荒廃した国土再建の旗印となる事業が必要であった面もあった[4]

国家気象機関は、1870年2月9日アルバート・マイアー准将の下で陸軍信号部(Signal Corps)に置かれた。これは、軍は規律によって高い即応性・整然性・正確性を要する観測活動が保証されるだろうとの見方からだった。マイヤー准将はこの組織に初めてThe Division of Telegrams and Reports for the Benefit of Commerce(商業利益のための電信及び報告部門)という名称を与えた。

しかしながら気象予報のための気象学は当時は十分に成熟しておらず、嵐の接近などを把握するための調査研究が不可欠だったが、軍の組織はそれに対応できなかった。このためシンシナティ天文台長のクリーブランド・アッベ(Cleveland Abbe)が、1871年に陸軍信号部へ移って調査研究を指導し、卓越した理論気象学者ウィリアム・フェレル(William Ferrel)を陸軍信号部にスカウトするなどして、予報能力の向上と人材の育成を図った[5]

1890年に農務省に移管されると共に、民生目的の業務を担当することとなった。1940年には商務省に移管され、1965年に環境科学事業庁 (Environmental Science Services Administration ;ESSA) に移管された。1970年にESSAが国立海洋大気庁 (NOAA) へ統合・再編されると共に、国立気象局 (National Weather Service) に改称され、現在に至る。

組織

典型的な気象予報事務所 (WFO)
耐ハリケーン用に特別に設計された建物で、国立気象局ヒューストン-ガルベストン予報事務所とガルベストン郡緊急事態対応事務所の合同庁舎。[6]
  • 国立気象局 (National Weather Service; NWS)
    • 最高情報責任者 (Chief Information Officer)
    • 国立環境予測センター (National Centers for Environmental Prediction; NCEP)
    • 最高財務責任者 (Chief Financial Officer)
    • 運用システム (Operational Systems)
    • 水文学的開発 (Hydrologic Development)
    • 科学技術 (Science and Technology)
      • プログラム及び計画 (Programs and Plans)
      • 気象開発研究所 (Meteorological Development Laboratory (MDL)
    • 気候・水・気象業務 (Climate, Water and Weather Services)
    • 地方本部 (Region Headquarters) - 全米に6ヶ所 (Eastern, Central, Southern, Western, Alaska & Pacific)
    • 宇宙飛行気象グループ (Spaceflight Meteorology Group; SMG)

  1. ^ Sharyl J. Nass; Bruce Stillman. Large-scale Biomedical Science. National Academies Press. pp. 224. ISBN 978-0309089128 
  2. ^ 堤 之智. 気象学と気象予報の発達史. 丸善出版. pp. 105. ISBN 978-4-621-30335-1 
  3. ^ 堤 之智. 気象学と気象予報の発達史. 丸善出版. pp. 130-133. ISBN 978-4-621-30335-1 
  4. ^ 堤 之智. 気象学と気象予報の発達史. 丸善出版. pp. 141. ISBN 978-4-621-30335-1 
  5. ^ 堤 之智. 気象学と気象予報の発達史. 丸善出版. pp. 141-142. ISBN 978-4-621-30335-1 
  6. ^ Kevin Moran. “Emergency center now ready to weather storm / The high-tech facility is built higher, stronger”. Houston Chronicle. http://www.chron.com/CDA/archives/archive.mpl?id=2005_3872697 2010年1月2日閲覧。 


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