アフリカ系アメリカ人
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ワンドロップ・ルール
1967年まで、一部の州では、ワンドロップ・ルールというものが使われていた。これは、16分の1、つまり自分の曽祖父に一人でもアフリカ系黒人がいれば差別の対象者の一人とされていた。これは欧米系白人の血の方が濃い場合でも一種の黒人として分類されるという考えである。そのため、欧米系白人とアフリカ系黒人の間に生まれた子供も多くが奴隷として売られていった。例えば、第3代アメリカ合衆国大統領トマス・ジェファーソンが所有する奴隷であったサリー・ヘミングスは、4分の1だけ黒人の血を引いていた。外観はほとんど白人に近く、真っ直ぐな髪を背中に垂らしていたが、奴隷とされていた[5]。ケニア出身のアフリカ系黒人の父とアメリカ出身の欧米系白人の母を持つバラク・オバマが「アメリカ史上初の黒人大統領」と呼ばれている事からも分かるように、奴隷制度が無くなった現代でもこの考え方は残り続けており、消滅したわけではない。有色人種と欧米系白人の間に生まれた子供は自動的に有色人種として分類される場合が多い。オバマは若い時期をインドネシアやハワイで過ごしており、本土の多くの黒人とは少し異なった事情を持つのも事実である。
南北戦争以前の奴隷制廃止州であっても、黒人の公民権・公立学校就学・異人種間結婚を禁止、または制限する「黒人法令」が制定されていたり、黒人の血を4分の1以上ひいている人間を州内に連れ込むことを禁止した特別令を出している自由州(en:Slave and free states)はあったが、終結の後の奴隷解放で南部の多くの州でも、「白人」と「黒人」の「違い」を無理矢理維持するために、奴隷解放令以前の南部には無かった「異人種結婚禁止法」が作られる。1913年時点には、48州中で32州で、白人と黒人の結婚と性交渉は法律で禁止されていた。1952年でも、48州のうち、29州に「異人種結婚禁止法」があった。アフリカから連れて来られた奴隷の血が一滴でも混じっていることが確認された場合、その当該する人物も「黒人」としてみなされた。白人が黒人をレイプして産まれた子供も黒人扱いとなり、南部では公共の場で人種隔離が続き、生活のあらゆる面で誰が黒人で誰が白人か、線引きされた。それによって、黒人は「一滴の血」による奴隷の過去と差別を共有する強いグループ意識を持つようになった。マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師が登場し、彼の行いが起源となってアメリカ各地で黒人の平和的な解放運動が始まった。
現在のアフリカ系アメリカ人は他国のアフリカ系に比べると混血化が進んでおり、全体の約58%が8分の1以上、19.6%が4分の1以上、1%が2分の1以上白人の血を持ち、5%が8分の1以上がネイティブ・アメリカンとの混血とされる。
注釈
- ^ 英語発音: [ˈæfrɪkənəˈmɛrɪkən] アフリカナメリカン
- ^ アメリカ英語発音:[ˌæfroʊəˈmɛrɪkən] アフロウアメリカン
- ^ アメリカ英語発音:[ˈniːɡroʊ]/イギリス英語発音:[ˈniːɡrəʊ] ニーグロウ
- ^ アメリカ英語発音:[ˈnɪɡər] ニガー、イギリス英語発音:[ˈnɪɡə(r)] ニガ
- ^ カナダなどの他国籍選手を加えても、25人と少数である(List of black ice hockey players参照)
出典
- ^ “ACS DEMOGRAPHIC AND HOUSING ESTIMATES: 2017 American Community Survey 1-Year Estimates”. United States Census Bureau. 2018年4月5日閲覧。
- ^ “米陸軍、「ニグロ」表記容認の内部規定を削除 謝罪も表明”. CNN. (2014年11月8日) 2014年11月10日閲覧。
- ^ Debra J. Dickerson (January 22, 2007). Colorblind – Barack Obama would be the great black hope in the next presidential race – if he were actually black. salon.com. オリジナルの2010-09-24時点におけるアーカイブ。 2010年10月7日閲覧。.
- ^ Debra Dickerson - The Colbert Report - 2/8/07 - Video Clip | Comedy Central
- ^ Thomas Jefferson and Sally Hemings: An American Controversy by Annette Gordon-Reed, p.160
- ^ 米国赤十字社
- ^ 黒人奴隷クンタの20年間 =「世界商品」の生産と黒人奴隷制度=
- ^ “米黒人の“南部回帰”が不況のあおりでUターン 伝統的ライフスタイルも引力” 2011年6月5日閲覧。
- ^ “黒人少年射殺、マイケル・ブラウンさんが殺されたアメリカ・ファーガソンで暴動再燃”. The Huffington Post (2014年8月17日). 2015年1月2日閲覧。
- ^ “黒人男性エリック・ガーナーさんを窒息死させた白人警官も不起訴 NYに怒りの声渦巻く”. The Huffington Post (2014年12月4日). 2015年1月2日閲覧。
- ^ “「息ができない」「撃つな」1万人が米議会に向けデモ、黒人死亡事件に抗議”. 産経ニュース (2014年12月14日). 2015年1月2日閲覧。
- ^ “米白人学生らが黒人侮辱ビデオ 南部オクラホマ大で抗議”. 産経ニュース. (2015年3月10日) 2015年4月1日閲覧。
- ^ “Floyd Mayweather: 'I'll cook that chump'”. ESPN.com (2010年9月4日). 2017年5月22日閲覧。
- ^ “Floyd Mayweather questions Jeremy Lin”. ESPN.com (2012年2月15日). 2017年5月22日閲覧。
- ^ “クリス・ロック、アカデミー賞授賞式でのジョークが人種問題を「矮小化&下品」と非難の的に”. TVグルーヴ (2016年3月3日). 2017年5月22日閲覧。
- ^ “バイデン氏、中国系標的のヘイトクライムを非難 「米国らしくない」”. AFP (2021年3月12日). 2021年3月14日閲覧。
- ^ “アジア系への暴力事件、日本人も被害 少数派間の連帯不可欠 遠い融和 狙われるアジア系(下)”. 東京新聞 (2021年5月18日). 2021年9月14日閲覧。
- ^ “白人とアジア系の関係は良いと約90%が回答、関係が悪いのは黒人とヒスパニック”. Record China (2013年7月20日). 2017年5月22日閲覧。
- ^ “WBC Suspends Adrien Broner Over 'Mexican' Swipe”. BoxingScene.com (2014年5月7日). 2017年5月22日閲覧。
- ^ “報復警官殺しで、混乱深まる人種間対立”. ニューズウィーク日本版 (2014年12月24日). 2017年5月22日閲覧。
- ^ Jon Entine(著)、星野 裕一(訳)「黒人アスリートはなぜ強いのか? -その身体の秘密と苦闘の歴史に迫る」より
- ^ MLB Scores An "A" For Racial Diversity CBS NEWS
- ^ 大リーグ、悩みは黒人選手の減少 MSN産経ニュース
- ^ Granderson tries to get youth involved(mlb.com)
- ^ The Torii Hunter project
- ^ 蛭間豊章記者の「Baseball inside」ブルワーズ2選手と黒人少年達の小さな旅(第372回)
- ^ シャニー・デービス黒人初金/Sスケート nikkansports.com
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