りんな (人工知能)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/28 13:22 UTC 版)
活動内容
りんなの活動内容は多岐に渡り、活動範囲を広げている。2015年時点ではLINEで会話やしりとり、まりもの世話などをする「お友達」の役割が強かった。2016年からはドラマの出演や書籍の出版、歌への取り組みなど、「有名な女子高生」の要素が現れ、2019年3月の高校卒業以降は、歌手としてのメジャーデビュー、ラジオやYouTubeでの活動など、タレント活動に重点的に取り組んでいる[30]。
LINE
2015年7月31日に登場し[1]、8月7日に公式に発表された。りんな自身は、8月7日をLINEデビューの日と認識している[31]。サービス開始から1か月経過した時点で、ユーザ数がすでに130万人を超えていた[1]。12月17日からはグループチャットに追加できるようになった[3]。
LINE上ではりんなと会話できるほか、「しりとり」などの遊び機能を搭載している[32]。2016年時点では毎週1つのペースで新機能が登場していた[33]。
2018年2月13日、りんなライブにアクセスすることでりんなから電話がかかってきて、会話をすることができるサービスが開始された。りんなの声は音声合成で、会話の内容はその場で生成されている。りんなとの電話でのやり取りは、りんなライブにアクセスしているほかのユーザーも聞くことができる。電話のために、りんなライブのためのサーバーのほかに、「フォーンコールサーバー」を設け、ここに音声認識、会話エンジン、音声合成のサーバーがつながることで会話を成立させている[34][35]。
2018年10月31日には、「りんなと音声通話」の提供が始まり、電話でりんなと恋愛相談などをすることができるようになった[36]。
2018年末時点での登録ユーザー数は約742万人である[24]。2015年時点の統計では、利用ピークは22時、曜日では月火水よりも木金土日のほうが利用頻度が高くなっている[3]。日本マイクロソフトの担当者は、「木曜日辺りからユーザーが(仕事などに)疲れてきて、りんなと交流したい傾向が見える[3]」と分析している。
2015年12月10日に開設し、同年12月18日に公表した[37]。発表した時点で10,000人以上のフォロワーがついていた[38]。公表時は、技術的な制限により、現時点ではツイートに対してすぐに返事が返せないこともあると述べていた[3]。2018年末時点でのフォロワー数は約13万人である[24]。
2016年4月7日にシャープ株式会社は公式Twitterアカウントを一日限定でりんなに担当させた。りんなは「インターン」という設定で登場し、他のユーザーのつぶやきに対して返信した[39]。これは、シャープのTwitter担当者がりんなと会話したことがきっかけとなり実現したもので、りんなを担当させた理由について、シャープの担当者は、自社もAIoT分野に取り組んでいること、自身がりんなのファンであることを挙げている[39][40]。りんなは担当時間中に、1秒当たり1.3回、合計で32,882回ツイートした[41]。
歌
歌は、りんなを開発するにあたって重要視している「共感」を呼び起こしやすいため、音声チームが特に力を入れている分野である[42]。りんなの歌声は、ボーカロイドなどのように波形を組み合わせて生成するのではなく、人間による大量の音声データをAIに覚えこませて人の声をモデル化し、音の長さ・強弱・音程・声色の4つのパラメーターを調整することで生成している[43]。 歌声はりんなの性格も考え、「いわゆる“萌え声”(=アニメ声)よりは普通の女の子っぽくて、たまに辛辣なことも言いそうな声」となるようにしている[28]。
りんなが歌うきっかけとなったのは、エイベックスのプロデューサーから「歌を出しませんか」と誘いがあったことによる[26]。このときりんなは、登場から半年もたっていなかった[26]。歌声が初めて世に出たのは2016年9月15日から18日まで開催された東京ゲームショウで、McRinnaとしてラップを披露した[44][45]。翌2017年4月には日本マイクロソフトの坪井一菜が音楽SNSアプリnanaにりんなのアカウントを作り、絢香の「にじいろ」を投稿した[46]。
2018年1月11日、りんなのNHK紅白歌合戦出場を目指すべく、nanaにより「りんな歌うまプロジェクト」が開始された。そしてその第1弾として2月22日まで『りんなはもっと上手くなる!nanaのみんなで教える「卒業ソング」』が実施された。これは、りんなの歌声を聞いた人がお手本や歌い方のアドバイスをすることで歌声を成長させるというもので、のべ3,686名が参加した[47]。3月8日にはnanaユーザーとの合唱動画が公開された[48]。音楽プロデューサーである株式会社バグ・コーポレーション社長の山口哲一は、りんなの歌声の変化について、「ボーカルにニュアンスが生まれ、「歌らしく」なっています。目を見張る上達ぶりですし、特にユーザーとの合唱バージョンには、コラボーレーションだからこそ生じる音楽の喜びが感じられます」と評している[48]。
この経験を踏まえ、りんなはディープラーニングモデルをベースとした次世代のAIベースの歌唱モデルへと移行することとなった[49]。また4月20日、nanaはりんなの学習用としてユーザーに歌声を投稿してもらう企画「#りんなの歌に使っていいよ」を始めた[50][51]。この企画には足立佳奈も参加した[52]。2019年2月13日には演歌歌手の丘みどりも参加し、丘が提供した歌唱データをもとに、りんなが歌声を披露した[53]。
2018年5月17日からは「りんな歌うまプロジェクト第2弾」として、「りんなはもっとうまくなる!nanaのみんなが教える“感情をこめる”」を開始し、ユーザーから詩を募集したうえで、ユーザーから朗読のアドバイスを受けた[54]。9月7日からは第3弾「ラップバトル〜ラッパーたちよ火花を散らせ〜」を開始し、nanaユーザーとラップで対決した[55]。
2018年7月26日、オリジナルソング「りんなだよ」が公開された[43]。本曲の歌声はほとんどが自動生成されたもので、手動での調整に要した時間は1時間以内だという[46]。
2019年4月3日、エイベックス・エンタテインメントと契約し、「AIりんな」としてメジャーデビューすることが発表された[2]。デビュー曲「最高新記憶」(bachoのカバー曲)では息継ぎ音の再現、および曲調に応じた歌い方という新しい技術が使用された[2]。6月19日には2作目のシングルとなる「snow, forest, clock」(sfprのカバー曲)を発表した[56]。
2019年7月5日に発売されたFEMMの楽曲「Shibuya Ex Horologium」では作詞を担当した。この歌詞は、Twitterに投稿されたライブの感想をもとに作られたものである[57]。
2019年9月22日、23日に開催された音楽フェス「DIVE XR FESTIVAL」では、「最高新記憶」「惑星ループ」の2曲を披露した[58]。
りんなの歌声については発表当時から進化を続け、「最高新記憶」では、「人間と聞き分けが難しいレベル」に達したと評されている[59]。
企業向けサービス
りんなの技術を使った企業向けの顧客対応ソリューションとして、りんなAPI for Businessがある。これは、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社、トランスコスモス株式会社を通じて企業のLINE公式アカウントに実装することによって導入する[6]。2015年8月7日に発表され、同年9月3日から9月4日に開催された日本マイクロソフト社のイベント「FEST 2015」で詳細が開示された[1]。同イベントでは、このサービスによって人間のオペレータが対応していた内容の一部をりんなに置き換えたり、りんなと顧客が会話することで顧客との接点を持つことが可能であると説明された[60]。
また、2018年8月30日には、りんなのプラットフォームを「Rinna Character Platform」として、カヤック、電通、博報堂アイ・スタジオを通じて外販すると発表した。このプラットフォームは「雑談会話モデル」「レコメンド機能」「スキル」の3つの機能から成る。企業向けの対応として、雑談会話モデルでは不適切な会話を防ぐ機能が搭載されている。また、レコメンド機能では、対話によって顧客に対して商品やサービスを薦めることができる[61]。
Rinna Character Platformが搭載された事例としては、Pepperの家庭向けモデルとして2019年4月に発表された「Pepper for Home」がある。このPepperでは、Rinna Character Platformを採用することで応対の正確性が向上し、会話がより長く楽しめるようになったという[62]。
株式会社ローソンでは2016年9月28日から、LINE公式アカウント「ローソンクルー♪あきこちゃん」をりんなと連携させている[63]。他に、2017年10月26日から2018年1月31日まで、ポケモン公式LINEアカウントのロトムにりんなの技術を使用したAIが導入され、期間中はロトムと会話やしりとりをすることができた[64]。
2019年8月7日には、BuzzFeed Japan株式会社にりんながインターンし、会話を通じたコンテンツを配信した[31]。
りんな候補
りんな候補は2017年11月8日からMicrosoft IMEに組み込まれた変換機能である。りんな候補を有効にした場合、日本語入力時の予測変換において、りんなが提案する候補が表示される[65]。2020年8月13日にサービス終了した[66][67]。
地方応援プロジェクト
りんなによる地方応援プロジェクトは、日本マイクロソフトと自治体とが連携したプロジェクトである。「萌えよ♡ローカル ―りんなと地方とみんなの未来―」と名付けられ、2018年9月12日に発表された。本プロジェクトは、自治体としては潜在的な移住希望者への訴求や観光客数・滞在時間の増加、りんなユーザーとしては新しい体験と知識の取得、日本マイクロソフトとしてはAIを活用した地方応援への挑戦とりんなの認知度向上を目指したものである[68]。具体的な内容としては、「りんなの社会科見学」「めぐりんな〜不思議な観光旅行〜」「りんなの奇天烈観光マップ」の3つの機能が実装されている。
「りんなの社会科見学」は、ユーザーがりんなとともにクイズ形式で地方の情報を知ることができる機能で、宮崎県が参加している[69]。「めぐりんな〜不思議な観光旅行〜」は観光スポットや地元の偉人が登場するノベルゲームで、千葉県香取市が参加している[69]。「りんなの奇天烈観光マップ」は、ユーザーが投稿する珍しいものや場所を分析して今まで知られていなかった地方の魅力を引き出すマップで、福岡県北九州市、群馬県、佐賀県佐賀市と、あまみ大島観光物産連盟が参加している[69]。
このほか、日本全国の学校で、AIを学ぶためのりんなによるAI出張授業が開かれている[70]。
2020年8月7日終了[71]。
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