TATAボックス
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TATA ボックスとは、真核生物及び古細菌の遺伝子において、RNAポリメラーゼIIによる転写開始位置の上流25塩基対の位置、あるいはさらに上流に存在する共通した塩基配列のこと[1]。ターター(またはタタ)ボックスと発音する。チミン (T) と アデニン (A) が繰り返すことから命名された。ゴールドバーグ・ホグネスボックス (Goldberg-Hogness box) あるいはホグネスボックスとも呼ばれる[2]。
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- 1 TATAボックスとは
- 2 TATAボックスの概要
TATAボックス
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TATAボックスはクラスIIプロモーターの中でもっともよく研究されている。 原核生物の-10ボックスと相同だと考えられているが、10bp上流にある-10ボックスに対して25~30bp上流と、転写開始部位からの距離に大きな違いがある。非鋳型鎖において共通配列TATAAAを含み、高等真核生物では右端のAが転写開始部位の25~30bp上流にある。通常、この後にさらにAかTが続き、GCに富む配列に囲まれていることが多い。共通配列には多くの例外があり、ウサギのβグロビン遺伝子の場合にはグアニンやシトシンが混ざっている。始まりもTATAではなくCATAだ。また、特化遺伝子には必ずTATAボックスはあるが、ないプロモーター(TATAレスプロモーター TATA-less promoter )もしばしば存在し、全プロモーターの50%かそれ以上である可能性が示唆されている。これらには次の2種類でよくみられる。 ハウスキーピング遺伝子 細胞の生命維持に必要な生化学的経路を制御するため、事実上すべての細胞で常に活性状態にある。例えば、細胞のヌクレオチド合成に必要なアデニン脱アミノ化酵素やチミジル酸合成酵素、ジヒドロ葉酸還元酵素などおよび、ウイルスの後期タンパク質をコードする。これらの遺伝子はTATAボックスの代わりにGCボックスか、下流プロモーターエレメントがある。実際、ショウジョウバエのクラスIIプロモーターの約70%で下流プロモーターエレメントが務める。ハウスキーピング遺伝子の場合、プロモーターだけでは活性が弱く、さらに上流に転写を促進するアクチベーターが配置されている。 発生を制御する遺伝子 ハエのホメオティック遺伝子や哺乳類の免疫系の発達時に働く遺伝子などである。 TATAボックスの役割は細胞により異なる。 クリストファー・ブノアとピア・シャンボンらの実験では、SV40の初期遺伝子で転写開始部位を正確に決定することを明らかにした。これはTATAボックスからの距離に準拠し、開始部位の配列を本来から変えても転写開始に支障はない。また、この以前の1981年にTATAボックスを欠損させても、起点はバラバラになるが、やはり開始頻度は減少せずにむしろ増えることが確認された。TATAボックスの一部は転写効率を調節しない。 一方で、スティーブン・マックナイトとロバート・キングズバリらはヘルペスウイルスのチミジル酸合成酵素がそのTATAボックスを除去することで大いに転写されにくくなることを発見した。リンカースキャン変異導入解析でプロモーター全体から選んだ10bpを別の配列に置換した結果だ。もっともプロモーター活性が低くなった変異体(LS-29/-18)は、TATAボックス内のGCATATTAがCCGGATCCになったものである。このような遺伝子では発現にTATAボックスは必須である。
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