Correlation-Consistent基底系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/19 19:05 UTC 版)
「基底関数系 (化学)」の記事における「Correlation-Consistent基底系」の解説
広く使用されている基底系には、ダニング(Dunning)らによるCorrelation-Consistent(電子相関と整合な)基底系もある。これらの基底系は、経験的な外挿手法を用いて完全基底系 (complete-basis-set, CBS) 限界に系統的に収束するように設計されている。第1・第2周期元素の原子については、cc-pVNZ (N = D, T, Q, 5, 6, …; double, triple, quadruple, quintuple, sextuple, …) と呼ばれる基底系が定義されている。'cc-p' は 'correlation-consistent polarized' の略で、'V' は原子価軌道のみの基底系であることを示す。これらは、順番に大きくなっていく (d, f, g, ...) 分極 (correlating) 関数を含む。この基底系の例としては、以下のようなものがある。 cc-pVDZ — ダブルゼータ cc-pVTZ — トリプルゼータ aug-cc-pVDZ, ... — 前述の基底系に分散関数を追加した強化版 第3周期元素 (Al-Ar) の原子については、さらに関数を追加することが必要であり、これを追加したものがcc-pV(N+d)Z基底系と呼ばれる。さらに大きな原子については擬ポテンシャル (pseudopotential) を用いたcc-pVNZ-PP基底系や、相対論的に縮約された (relativistic-contracted) Douglas–Kroll基底系、cc-pVNZ-DKが用いられることもある。 これらの基底系には、構造計算および原子核特性計算のために内殻軌道関数が追加されたり、励起電子状態計算や電場応答計算、ファンデルワールス力などの長距離相互作用の計算のために分散関数が追加されたりした強化版がある。強化関数の構成の作り方が確立されていて、5つもの強化関数を用いて超分極率を計算した論文もある[要出典]。これらの基底系は厳密に構成されているため、ほとんどのエネルギー的特性について外挿を行うことができるが、エネルギーの差について外挿を行なう際は差をとるエネルギーがそれぞれ異る速さで収束するかもしれないことに注意する必要がある。 H-HeLi-NeNa-Arcc-pVDZ [2s1p] → 5 func. [3s2p1d] → 14 func. [4s3p1d] → 18 func. cc-pVTZ [3s2p1d] → 14 func. [4s3p2d1f] → 30 func. [5s4p2d1f] → 34 func. cc-pVQZ [4s3p2d1f] → 30 func. [5s4p3d2f1g] → 55 func. [6s5p3d2f1g] → 59 func. 基底関数の数がどのように決まるかを見るため、H原子に対するcc-pVDZ基底を例にとると、この基底系には2つのs軌道 (L = 0) と1つのp軌道 (L = 1) が含まれるが、p軌道は3つのz-軸に沿った磁気量子数 (mL = -1,0,1) に対応する成分px, py, pzがある。このため、軌道は全部で5つとなる。また、1つの軌道には反並行スピンをもつ2つの電子までが入れることに注意。 例として、Ar [1s, 2s, 2p, 3s, 3p] は3つのs軌道 (L=0) と2組のp軌道 (L=1) を持つ。cc-pVDZ基底系を用いると、 [1s, 2s, 2p, 3s, 3s', 3p, 3p', 3d'] の4つのs軌道、3組のp軌道、1組のd軌道を基底として用いることとなる(ここで ' は追加された分極関数を表わす)。
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