韓国政府との関係性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/30 08:38 UTC 版)
1990年代後半のアジア通貨危機以来、自国市場規模の小さい韓国は輸出産業に活路を求め、国を挙げて力を入れてきた。2009年には、大韓民国大統領直属の大韓民国国家ブランド委員会が設置され、韓国の官民(政府系民間組織含む)挙げて国家ブランド価値向上のための対外文化広報を行っている。主に、伝統文化やハイカルチャー分野を韓国文化院が担い、大衆文化や民間企業のコンテンツ産業については韓国コンテンツ振興院(KOCCA)が担っている。また、韓国政府が後援する民間団体のVANKなども、積極的な宣伝活動を行っている。 2009年に設立された韓国コンテンツ振興院は、国家戦略として映画・放送映像(韓流テレビドラマ)・K-POP・ゲーム・アニメ・マンファ・キャラクターなどのコンテンツ産業の振興を図り、コンテンツ制作と輸出と宣伝に多額の国費を投入して、強力に後援している。2010年10月29日には、東京国際フォーラムホールAで新しい韓国アーティストを紹介するK-POPショーケースが全席無料招待で開催され、2011年には、「欧州など海外で『新韓流ブーム』を巻き起こしている」とされているK-POPの今後のインフラ拡充や、韓流スター育成に向けたK-POPアカデミー(仮称)支援事業、2015年までの4年間で1兆ウォンの予算を投資するグローバルファンドを通じて韓流コンテンツ制作などを推進する予定であることなどが発表された。韓流コンテンツを制作する人材を育成する機関は「K-Artsアカデミー」と命名され2012年4月から運営が開始される。 またフランスで開催されたJapan Expoやスペインで開催されたSalón del Manga de Barcelonaなどの国際イベントでも、韓国コンテンツ振興院がブースを出展してK-POPや韓国漫画(マンファ)などの韓国文化の紹介を積極的に行っている(詳細は「Japan Expo#韓国」を参照)。 コンテンツ制作企業に制作費の10%の輸出実績があれば、韓国政府が金融機関に貸し出し保証書を発行し、これにより韓国のコンテンツ制作企業は金融機関から積極的に融資を受けることができるようになっている。コンテンツ制作企業から輸出先企業に補助金が支払われることもあり、韓国ドラマの放映権を購入した台湾のある企業は、買い付け金額以上の補助金がもらえたときもあったという。韓国の積極的なコンテンツ輸出政策と(近年は高騰傾向にあるものの)買い付け費用が安くすむことで、東アジアや東南アジアでドラマ・映画・音楽などの韓流コンテンツが広く受け入れられるようになっている。 このように国を挙げたグローバルな拡販政策を展開してきたことで、韓流コンテンツの輸出額は2007年 - 2010年には1億8900万ドルから3億1300万ドルと成長した。その一方で特定市場、特に日本への一極依存体質や収益構造の問題も指摘されており、欧米でもライブを行うK-POPは、アジアでの売上げが全体の99%を占め、日本が80.8%と突出している。利益配分も「KARA」の日本での収益を例に試算すると、84%は日本側流通業者、8%が日本側プロモーターに渡り、KARA所属芸能事務所の手元に残るのは8%に過ぎない。このように日本がライセンス契約によってほとんどの利益を得ており、日本市場への「対日偏重」と「収益不均衡」のジレンマについて、韓国側でもコンテンツビジネス上の問題点と認識され、韓流ビジネスに対する疑問の声もある。
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