遷音速翼型
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/03 05:13 UTC 版)
遷音速領域で飛行すると機体の一部、たとえば主翼の上面に超音速流が発生し、衝撃波や剥離によって飛行性能が悪化する。この超音速流が発生する限界速度をクリティカルマッハ数(Mdd)と呼び、また衝撃波の発生による急激な抵抗の増加を抵抗発散(drag divergence)と呼ぶ。 遷音速翼型 (transonic airfoil) は、クリティカルマッハ数が高く、抵抗発散を起こしにくい翼型であり、DC-8を開発中の1950年代前半にダグラス・エアクラフトのショグラン(Ivar L. Shogran)らが到達した無銘の翼型(逆キャンバー翼と通称されていた)を基に、英国立物理学研究所のピアシー(H.H. Pearcey)がピーキー翼型(peaky airfoil)と名付けて体系化し、更にラングレー研究所のウィットカム(Richard T. Whitcomb - エリアルールの発見者)がスーパークリティカル翼型(supercritical airfoil)の名で実験を繰り返した。 デ・ハビランド・エアクラフトがDH.121 トライデント向けに自社開発し、VC-10やA300にも採用されたリア・ローディング翼型(rear loading airfoil または trailing-edge camber airfoil, RAE 2800系)も一変種で、これらは外形からフラット・トップ翼型(flat top airfoil)とも総称される。 上面が平坦で、下面後半がスプーンを伏せたような凹形にしゃくれた断面形状から、複葉機時代に先祖返りしたような印象さえ与える。一般的な層流翼型と比べ負圧中心が前進し、圧力勾配はなだらかである。丸められた前縁、並びに薄い後縁で敢えて少量の衝撃波発生を許容することで、翼全体として流速を平均化し、乱流の発生を抑制。高揚抗比を保ちつつ、クリティカルマッハ数を約0.1(速度にして15%程度)向上させた。 高速向けでありながら厚翼、かつ小後退角で済むため、翼内スペース確保や剛性向上、構造重量軽減など実用面でも利点が多く、1960年代以降、現在に至るジェット旅客機の大半でこの種の翼型が用いられている。
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