課題と検証の試み
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/16 20:03 UTC 版)
「パイオニア・アノマリー」の記事における「課題と検証の試み」の解説
2010年にパイオニア・アノマリーに関する問題を詳細にレビューしたトゥルィシェフ (Slava G. Turyshev) とトート (Viktor T. Toth) は、当時残っていた主な課題として以下を挙げている。 加速の正確な方向 アノマリーの方向がおよそ太陽系の内側に向いた加速であったことは明らかだが、それが実際太陽の方向であったか、地球の方向であったか、探査機の自転軸に沿った向き、あるいは探査機の進行方向後ろ向きであったのかは明らかでない。 もし方向が明らかになれば原因を絞り込む大きな手がかりとなる。 例えば、パイオニアは毎分 4–9 回のスピンを行っているので、熱放射が未知の力の原因であるなら、その方向は太陽に向けてではなく、回転軸方向へと向いたものであったと考えられる。 太陽から遠距離ではこれらの方向は近接し分離が困難であるため、復元された近距離のデータが解析されなければならない。 大きさの変動 2010年当時、アノマリーは 20 au の距離を越えて以降、10 % 程度の変動の範囲内でほぼ一定であったと考えられている。 もし原因が熱放射なら、一定の時定数をもつ崩壊熱の指数関数的減少に対応した減少がみられるはずであり、本当にそのような減少が起こっていなかったのかどうかが問題となる。 加速の起こる範囲 パイオニア10号のデータからは 27–70 au の範囲でほぼ一定の大きさでみられることを示し、11号のデータは木星から土星への飛行中に小さなアノマリーが見られた後、土星フライバイ後に増大していることを示している。 しかし、特に近距離の場合には太陽からの放射圧の影響や、高頻度のマヌーバのために誤差が大きく、ある距離からだけみられるものなのかどうかは十分明確ではない。 また太陽からの距離だけに依存するのか、軌道の形も関係するのかも明らかではない。 パイオニア探査機との交信すべてを記録した1987年以前のマスター・データ・レコード (MDR) は古い磁気テープ媒体に記録されたまま放置されていたため、長らく利用不能であった。 2010年に、民間資金によってこれらのデータの変換が完了し、それを用いた詳細な検討が行われる予定である。 また今後運用されるいくつかの太陽系探査機をパイオニア・アノマリーの測定に利用することが期待されている。 特に、冥王星とエッジワース・カイパーベルト天体の観測をめざして2006年に打ち上げられたニュー・ホライズンズ探査機はパイオニアと同じくスピン制御を用いているため、今後有用なデータをもたらす可能性が期待されている。 ただし、探査機は木星フライバイから冥王星到着直前まで通信をほとんど行わない「冬眠」モードで運用されているため、現在のところごくわずかなドップラー・データしか得られていない。
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