義家観乱雁図小柄
表は栗色の駒に跨り龍頭の兜に緋威の大鎧着用の馬上豊かな武者、裏には鳴き声騒がしく飛び散る三羽の雁。八幡太郎源義家が後三年の役にて、鎮守府将軍として金沢の柵に兵を進めていみた折、飛雁の列の乱れるを観て伏兵あるを知った、後三年合戦絵詞にも描かれている名場面。「……一行の斜雁の雲上をわたるあり。雁陣たちまちにやぶれて四方に散りて飛ぶ。将軍、はるかにこれをみてあやしみおどろきて、兵をして野辺をふましむ……」前九年の役にて安倍貞任を破った義家が、関白師通の邸で先年の戦いの模様を語った折り、偶々居合せてこれを聞いた大宰権帥大江匡房が「義家は賢き器量の武士であるが惜しむらくは合戦の道理を知らぬ者よの」と呟いたのを伝え聞いた義家は、頭を垂れて匡房の門を叩き、文の道に励み多くの和漢の書を読破したという。その中の中国の古書に「兵、野に伏すときは雁の列を破る」の一節があり、これを記憶していたことにより、危うく敵の奇襲を事前に察知し得た義家は、後年、「…師の教え給ひつる言なからましかば、あぶなからまし…」と述懐したと伝えられており、義家ほどの豪の者でも先輩の言を採り入れた謙虚さは、「学ばざればすなわち殆ふし」の言を地で行くものとして、後世まで長く武士の戒めとして語り伝えられた有名物語の一つである。後藤流を念頭に置き、精巧緻密な彫技でこの物語を三寸余の長方形に絵画化した、色彩感覚も抜群の春明畢生の名小柄である。 |
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