細胞保護作用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/29 06:02 UTC 版)
APCがEPCRに結合している際には多数の重要な細胞保護機能を発揮するが、その大部分はEPCRとPAR-1を必要とすることが知られている。そのようなAPCの機能としては、遺伝子発現の調節、抗炎症効果、抗アポトーシス効果、血管内皮バリア機能の保護がある:3162。 細胞をAPCで処理することにより、炎症やアポトーシスの主要経路が遺伝子発現調節を介して効果的に制御されることが示されている。プロテインCによって約20個の遺伝子がアップレギュレーションされ、20個の遺伝子がダウンレギュレーションされることが知られている。前者は主に抗炎症、抗アポトーシス経路に関与するもので、後者は炎症やアポトーシスを促進する傾向がある。APCが遺伝子発現プロファイルを変化させる機構はあまり解明されていないが、少なくとも部分的には転写因子活性の阻害を伴うものであると考えられている:3162,4。APCによってアップレギュレーションされる重要なタンパク質にはBcl-2、eNOS、IAP(英語版)があり、APCによって大きくダウンレギュレーションされる遺伝子にはp53とBaxがある:2388。 APCは血管内皮細胞と白血球に抗炎症効果を示す。APCは血管内皮細胞からの炎症メディエーターの放出を阻害し、血管の細胞接着分子をダウンレギュレーションする。これによって白血球の接着と組織への浸潤が減少し、下層組織の損傷も低減される。APCは内皮細胞のバリア機能を補助し、走化性を低下させる。APCは、サイトカイン応答を低下させることによって白血球でも炎症メディエーターの放出を阻害するが、敗血症時に見られるように、全身の免疫反応を低下させることによって行われている可能性もある。ラットとヒトの研究の双方において、APCがエンドトキシンによる肺損傷や炎症を低下させることが示されている:3164。 APCの抗アポトーシス効果は広く認識されているが、どのようにアポトーシスが阻害されているかの正確な機構は不明である。APCは神経保護効果を示すことも知られている。抗アポトーシス効果はカスパーゼ3とカスパーゼ8の活性化の低下、Bax/Bcl-2比の改善、p53のダウンレギュレーションによって行われていると考えられている:2388。 APCは血管内皮細胞のバリア機能の十分な保護を行う。内皮細胞バリアの乱れとそれに伴う内皮細胞の透過性の増加は、腫脹、低血圧、炎症、そして敗血症の全ての問題と関係している。APCはPAR-1依存的なスフィンゴシンキナーゼ1(英語版)の活性化を誘導し、スフィンゴシン-1-リン酸をアップレギュレーションすることで内皮細胞のバリア機能を保護する:3165。 いくつかの研究はAPCのタンパク質分解活性が細胞保護機能に寄与することを指摘しているが、一方でタンパク質分解活性のない変異体がin vitroでもin vivoでも細胞保護効果を示すことも報告されている。
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