機能喪失
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 09:57 UTC 版)
「シグナル伝達兼転写活性化因子1」の記事における「機能喪失」の解説
STAT1遺伝子の機能喪失、すなわち欠損には多くの変異がある。 I型およびIII型インターフェロンへの反応を引き起こす可能性のある2つの主要な遺伝的障害がある。第一はSTAT1の常染色体劣性の部分的または完全な欠損であり、細胞内細菌感染症またはウイルス感染症を引き起こし、IFN a、b、gおよびIL27応答の障害が見られる。血清中に高レベルのIFNgが見られることもある。全血を分析したとき、IL12産生を伴うBCGワクチンおよびIFNgに対して単球は応答しなくなる。完全な劣性形態では、抗ウイルス薬および抗真菌薬に対する反応は非常に低い。第二は部分的なSTAT1欠損であり、これは常染色体優性突然変異でも生じる可能性がある。表現型においてIFNg応答の障害を引き起こし、患者に選択的細胞内細菌感染症(MSMD)を罹患させる。 90年代に作製されたノックアウトマウスでは、少量のCD4+およびCD25+制御性T細胞が検出され、IFNa、b、およびg応答はほとんど存在せず、寄生虫感染、ウイルス感染、細菌感染が発生した。ヒトにおけるSTAT1欠損症の最初の報告症例は常染色体優性突然変異であり、患者はマイコバクテリア感染症の傾向を示した。常染色体劣性型に関する症例も報告されている。 この2つの症例の患者は、STAT1転写産物にRNAスプライシングの障害を抱えたホモ接合型ミスセンス変異を持っていたため、成熟タンパク質に欠陥が見られた。患者は、IFNaとIFNgの両方に対する反応を部分的に損傷していた。劣性STAT1欠損症は原発性免疫不全症候群の形態の一つであり、患者が突然の、重度の、予期しない細菌およびウイルス感染症した場合は、潜在的にSTAT1欠損症である可能性がある。 インターフェロンは、ガンマ活性化因子(GAF)とインターフェロン刺激ガンマ因子3(ISGF3)の2つの転写活性化因子の形成を誘導する。マイコバクテリアに対する感受性に関連するがウイルス性疾患には関連しないヘテロ接合性生殖細胞系STAT1変異が、原因不明のマイコバクテリア疾患を有する2人の無関係な患者で発見された。この突然変異はGAFとISGF3の活性化の喪失を引き起こしたが、一方の患者では細胞表現型が優性でもう一方では劣性だった。このとき、インターフェロンによって刺激された細胞においてISGF3ではなくGAFの核蓄積が損なわれ、ヒトインターフェロンの抗ウイルス効果ではなく抗マイコバクテリア効果がGAFによって媒介されることを示した。別の例では、BCGワクチン接種後の播種性疾患と致死的ウイルス感染の両方を発症した2人の患者において、ホモ接合型STAT1変異が特定された。これらの患者ではSTAT1の完全な欠如があり、GAFとISGF3の両方の形成の欠如がもたらされていた。
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