極分解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/09/23 04:16 UTC 版)
詳細は「極分解(英語版)」を参照 複素ヒルベルト空間の間の任意の有界線型作用素 A の極分解は、部分等距作用素と非負作用素の積への標準分解である。 行列に対する極分解は以下のように一般化する。A が有界線型作用素であるとき、部分等距変換 U と非負自己随伴作用素 P で U の始空間が P の値域の閉包に一致するものの積として A の一意的な分解 A = UP が存在する。 以下のような理由により、作用素 U はユニタリではなく部分等距変換に弱める必要がある。A が l2(N) 上の片側シフト ならば、|A| = (A∗A)½ = I であるから、A = U |A| ならば U は A でなくてはならないがこれはユニタリではない。 極分解の存在性はダグラスの補題(英語版) 補題 (Douglas) A, B はヒルベルト空間 H 上の有界作用素で A∗A ≤ B∗B を満たすとする。このとき、A = CB を満たす縮小写像 C が存在する。さらに Ker(B∗) ⊂ Ker(C) ならば C は一意である。 の帰結である。作用素 C は C(Bh) = Ah とおき、連続性により Ran(B) まで延長して、Ran(B) の直交補空間では 0 とすれば定義できる。この作用素 C は A∗A ≤ B∗B から Ker(B) ⊂ Ker(A) が従うから矛盾なく定義される。よって補題は示された。 特にA∗A ≤ B∗B ならば C は部分等距であり、これは Ker(B∗) ⊂ Ker(C) のとき一意である。一般に任意の有界作用素 A に対し、通常の汎函数計算で与えられる A∗A の平方根を (A∗A)½ として A ∗ A = ( A ∗ A ) 1 2 ( A ∗ A ) 1 2 {\displaystyle A^{*}A=(A^{*}A)^{\frac {1}{2}}(A^{*}A)^{\frac {1}{2}}} が成り立つから、補題により適当な部分等距変換 U に対して A = U ( A ∗ A ) 1 2 {\displaystyle A=U(A^{*}A)^{\frac {1}{2}}} となる。U は Ker(A) ⊂ Ker(U) のとき一意である(B = B∗ = (A∗A)½ とすると Ker(A) = Ker(A∗A) = Ker(B) = Ker(B∗) に注意)。P として (A∗A)½ をとれば極分解 A = UP を得る。同様の論法が、正作用素 P' および U' が部分等距として A = P'U' を示すのにも有効であることを確認せよ。 H が有限次元のときには U はユニタリ作用素に延長できるが、これは一般には成り立たない(上述)。その代りに極分解は特異値分解の作用素版を用いて示すことができる。 連続汎函数計算(英語版)の性質により、極分解における絶対値 |A| は A の生成する C∗-環に属する。偏極部 U に対しても、同様だがより弱い主張が成立し、偏極部 U は A の生成するフォンノイマン環に属する。A が可逆ならば U は絶対値同様に A の生成する C∗-環に属する。
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極分解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/19 15:33 UTC 版)
詳細は「極分解(英語版)」を参照 可逆行列 A に対して、ユニタリ行列 U および正定値行列 P が一意に存在して A = UP と書ける。これを A の極分解と呼ぶ。この正定値行列 P は正定値行列 A*A の主平方根であり、U は U = AP−1 で求まる。 A が可逆でないときでも、適当な方法で P が定まれば(それは一意であり)極分解が定義される。極分解におけるユニタリ作用素 U は一意ではないが、以下のようにして「自然な」ユニタリ行列は求められる: AP+ は A の値域からそれ自身への作用素であり、これは A* の核上自明に延長してユニタリ作用素 U にできるから、この U を極分解に用いればよい。
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