棲み分け理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 17:02 UTC 版)
可児藤吉と共同で行ったカゲロウの生態学的研究と植物相に関する生物地理学的な研究を通じ「棲み分け理論」を提唱した。1933年に、川の流速に対応して生活形が分離すること、すなわち川岸から流心にかけて種ごとに異なる分布を形成すること,を加茂川で発見し、これが本理論を発意するきっかけとなった:17。今西の英語で執筆された学術論文において「棲み分け」は「habitat segregation」に訳された。 「棲み分け」は種同士の社会的関係を表す概念である。たとえばカゲロウ類の幼虫は渓流に棲むが、種によって棲む環境が異なると同時に、異なる形態をしている。 流れが遅く砂が溜まったところに生息する種は、砂に潜れるような尖った頭をしている。 流れのあるところに生息する種は、泳ぐことに適した流線型の体をしている。 流れの速いところに生息する種は、水流に耐えられるように平たい体をしている。 このようにそれぞれが棲み分けた環境に適応し、新たな亜種が形成されると考えた。 なお、生物種がニッチを選択している現象を指摘する事自体は今西の独創ではなく、チャールズ・ダーウィンの時代から知られていた。今西の独自性は、個体ではなく、今西固有の用語である種が選択の単位になっていることである。これは分類学上の種とは異なり、実際の生物個体の認知機構と実際のコミュニケーション、または働きかけによって構成されたものであり、同種個体はそれによって種社会を形成する:17。この種社会が種の実体である。そして種が異なるという認識によって棲み分けが行われ、同位社会が組織・形成され棲み分けがなされるという、今西の動物社会学・進化論の基礎になった。 したがって、ただ異なる種の個体が生息地を分けて分布していることを指す「生息地分割としての棲み分け」と、今西が主張する個体ではなく種社会を主体とした共時構造としての「棲み分け」を区別する必要がある。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}前者の棲み分けの考えは生態学の中で使われてきた考えであり、今西の独自の考えである後者の棲み分けは、現代の生態学では受け入れられていない。[要出典]
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