抜隊得勝遺誡板木とは? わかりやすく解説

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抜隊得勝遺誡板木

主名称: 抜隊得勝遺誡板木
指定番号 69
枝番 2
指定年月日 1993.06.10(平成5.06.10)
国宝重文区分 重要文化財
部門種別 歴史資料
ト書
員数 1枚
時代区分 南北朝
年代
検索年代
解説文: 南北朝時代中心に禅宗発展背景として五山版ござんばん】の印刷出版盛行した五山版とは鎌倉時代から室町時代にかけて、京都五山鎌倉五山地方の諸禅院等が刊行した書籍の類である。五山版刊行中国版式の影響受けて印刷文化様式的な整備もたらし経典が主であった印刷外典にまで広げ書籍としての出版移行したことを示すもので、わが国印刷出版文化史注目すべき事象である。
 『塩山和泥合水集』上中三巻臨済宗向嶽庵(後に向嶽寺)の開山抜隊得勝道俗の禅に関する疑問答えた説示記したもので、漢字仮名交じり文仮名法語かなほうご】である。末尾に「于時至徳三年丙寅仲春十五日 始之/幹縁比丘明道」の刊記があり、抜隊晩年至徳三年一三八六)に後の向嶽寺第二世通方明道つうほうようどう】の募財により刊行したことを記す。
 抜隊得勝嘉暦二年(一三二七相模国生まれ出雲雲樹寺【うんじゆじ】の覚明こほうかくみよう】の室において開悟し、印可受けて抜隊道号付与された。諸国行脚した後、甲斐守護武田信成たけだのぶしげ】の帰依をうけて、康暦二年(一三八〇)塩山に向嶽庵を開き多く道俗教化した至徳四年(一三八七)二月二十日六一歳で示寂し、のち恵光大禅師勅諡された。ほかに『塩山抜隊和尚語録』や『塩山仮名法語』の著作がある。
 「抜隊得勝遺誡」は、「向岳遺誡」という表題をもち、三三か条からなる末尾に「至徳四年〈丁卯二月十九日 遺誡 略三十三箇条 向岳守塔比丘明道命工刊版」とあり、抜隊示寂前日遺誡残したという体裁を取るが、実際開版はそれ以後の通方明道住持在任であろう。『塩山向嶽禅庵小年代記』では康応元年一三八九二月二十四日開版とする。
 『塩山和泥合水集』板木は全四二枚のうち三七現存する板木表裏両面二丁ずつ計四丁刻するのが原則で、なかには表に二丁あるが、裏面には彫刻しないもの、表裏一丁ずつで横寸法が短いもの等もある。一丁一八行(半面九行)、四周単辺で、版心白黒口、上下魚尾で、書名略称「和泥」と巻数丁数がある。なかには題簽外題刻したもの、彫りかけの板木もある。把手)はかなりのものに残る。「抜隊得勝遺誡板木大型で、縦長に材を用い上下ホゾがあるが、失われている。文字大ぶりで、表裏それぞれ一〇行、一行三六字である。界線等はなく文字のみを刻する
 五山版用いた板木現存するもの少なく僧侶遺誡板木も稀で、ともに中世印刷文化禅宗寺院教化活動注目すべき遺品である。



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