平安道
平安道
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 01:48 UTC 版)
麺類では、小麦の生産がさかんな南部でカルグクスが発展したのに対し、ソバやジャガイモの生産がさかんな北部では冷麺が発展した。ソバの実を使った麺を冷麺といい、ソバの殻を使った麺をマッククスという。北部の冷麺にも地方ごとにさまざまな特色があるが、とりわけ有名なものが平壌冷麺である。この平壌冷麺と開城湯飯そして全州ビビンバの3つが、李氏朝鮮時代の三大料理とされる。冷麺のスープには大同江の水が使われ、その水のおいしさが冷麺の味の秘訣とされる。冬に食べる冷麺の味が最高とされ、「以冷治冷(イネンチネン)」すなわち冷たさで寒さを治める食べ物とされた。1920年代にはすでに平壌市内に冷麺を売る店があり、麺だけ買って家でスープをかけて食べられることも多かった。韓国には、朝鮮戦争によって北側から南側に移り住んだ人々が冷麺店を次々に始めたため、急速に広まった。現在でも、韓国の冷麺店では郷土を懐かしむ北部訛りの人々が集まるという。平壌で最も有名な冷麺店は「玉流館」であり、料理人三百人、一日一万食を売るという大店舗である。脱北者によると「玉流館」で食事をするのは軍や党の幹部以外の一般庶民にとって容易ではなく、職場で食券の配給を受ける必要があったという。食券のない者は朝から当日券のために並ぶ必要があり、そのためのダフ屋もいた。1999年、「玉流館」がソウルに支店を出店して話題となったものの現在は閉店している。北朝鮮の味付けは淡白、薄味が好まれるとされ、この平壌冷麺も拍子抜けするほどあっさりしたスープの味が本物に近いという。玉流館で修行経験がある料理人が2000年に脱北し、現在、ソウルで玉流館レシピで作る平壌冷麺の店を経営している。
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