家事調停の主催者 (日本)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 04:00 UTC 版)
「家事調停」の記事における「家事調停の主催者 (日本)」の解説
家事調停を主催する調停機関は、原則として調停委員会である(家事事件手続法247条)。調停委員会は、裁判官 1名と、その裁判官が事件毎に指定する家事調停委員(体験記に散見される「調停員」は誤記である。)2名以上で組織する(同法248条1項、2項)。 家事調停委員は、非常勤の国家公務員であり(家事事件手続法249条)、その任期は2年(民事調停委員及び家事調停委員規則3条)で、再任可能である。家事調停委員は、弁護士、司法書士、税理士、不動産鑑定士、社会保険労務士などの「専門的知識経験を有する者」(民事調停委員及び家事調停委員規則3条)から任命される者も多いが、「社会生活の上で豊富な知識経験を有する者で、人格識見の高い」(同条)ものとして任命される者も多い。家事調停委員は各自が特定の家庭裁判所に所属し、裁判官は、同じ裁判所に所属する家事調停委員の中から事件毎に適任者を選んで、調停委員会を組織する。調停委員会を組織する家事調停委員は、男女各1名が指定されることが多いが、財産分与対象財産が大量にある離婚調停や遺産分割などの事件類型では、男女の均衡よりも専門的知識の有無を重視した人選がされることもある。 家事調停委員に対しては、汚職が指摘されることはほとんどない。その反面で、東京家庭裁判所を除けば、家事調停委員の任命希望者はおおむね不足がちと言われている。また、家事調停委員に対する体系的な訓練を実施していない家庭裁判所が多い。傾聴と調整の能力が不足する家事調停委員もいるのはそのためである、という指摘は絶えない。 現職又は元職の家事調停委員は、職務上取り扱ったことにより知り得た他人の秘密を漏らしたり、評議における調停委員会の構成員各自の意見や多少の数を正当な理由なく漏らしたときは、処罰される(家事事件手続法292条、293条)。家事調停委員の守秘義務は、おおむね順守されている。当事者は、名誉毀損罪や侮辱罪に該当する行為や、当事者間の特約に違反する行為を除けば、調停手続や協議内容について守秘義務を負わない。 調停手続は、裁判官が指揮するのが建前である(家事事件手続法259条)が、実際には裁判官の多くが、調停委員会で調停手続をおこなうときは家事調停委員に指揮を任せてしまい、裁判官が当事者の前に現れるのは、協議が難航したときや合意ができて当事者に対する意思確認を行うときくらいである。
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