実際の構成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/27 06:10 UTC 版)
「ダイレクトコンバージョン受信機」の記事における「実際の構成」の解説
単純に受信信号と同じ周波数の局部発振出力とを混合する方式は、搬送波を中心に対称な周波数成分を持つ単純な変調方式ではそのまま使えるが、複雑な変調方式では問題が発生する。例えば、局部発振周波数が14.000MHzの場合、周波数が14.001MHzの信号成分はその差の1kHz(0.001MHz)に変換されるが、周波数が13.999MHzの信号も同じように1kHzに変換されるため混信が起こる。これはスーパーヘテロダイン方式で問題となるイメージ混信で中間周波数を0Hzとした場合に相当する。 この問題を解決するため、現在の一般的なダイレクトコンバージョン受信機では直交ミキサ(quadrature mixer、複素ミキサとも言う)を使用する。これは2つのミキサを用いそれぞれに90°位相の異なる局部発振出力を加えることで2つのベースバンド信号を得るもので、各信号はそれぞれI(In-phase)信号、Q(Quadrature-phase)信号と呼ばれる。I/Qの2つの信号を用いればイメージ混信の影響を受けることなく受信対象の信号のみを復調できる。 受信した信号のある時刻での振幅 mtと位相 φtは、I/Q信号のIt、Qtから以下の計算で求まる。 m t = I t 2 + Q t 2 {\displaystyle m_{t}={\sqrt {{I_{t}}^{2}+{Q_{t}}^{2}}}} ϕ t = arctan ( Q t I t ) {\displaystyle \phi _{t}=\arctan \left({\frac {Q_{t}}{I_{t}}}\right)} 信号の振幅と位相がわかれば、振幅変調、位相変調、周波数変調、あるいはそれらの組み合わせ(例えばQAM)など、どのような変調方式の信号も処理することができる。これらの処理をアナログ回路のみで行うのは一般に難しいため、現在の多くのダイレクトコンバージョン受信機は I/Q の各ベースバンド信号をA/D変換した後デジタルシグナルプロセッサなどを使って復調する。 実際の受信機では、アンテナと直交ミキサの間に高周波用の低雑音増幅器(Low Noise Amplifier、LNA)が、直交ミキサとローパスフィルタの後には微弱な復調信号をベースバンド処理に必要なレベルまで増幅する低周波増幅器を設けるのが一般的である。増幅器には外部からの制御で増幅度が変えられる可変利得増幅器(Variable-Gain Amplifier、VGA)が使用され、電波の伝搬経路や距離により大幅に受信信号レベルが変わってもベースバンドの信号レベルを一定範囲内に収める自動利得制御(Automatic Gain Control、AGC)が行われる。
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