学術調査と土地開発行為にともなう調査(緊急調査)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/19 03:59 UTC 版)
「発掘調査」の記事における「学術調査と土地開発行為にともなう調査(緊急調査)」の解説
平城宮跡や藤原宮跡など、範囲が判明し、その重要性が指摘されている遺跡は、特別史跡や史跡などの文化財指定がなされ、学術調査がなされる。学術調査は、通常、年度をまたぐ調査計画が立てられ、計画にもとづき、遺跡保存を前提にしておこなわれる調査である。その多くは公有化が進められ、研究成果にもとづき往時の姿に復元される。遺構や遺物には保存の措置が講じられ、史跡公園などとして国民にひろく公開されることが多い。 いっぽう、建築物を建てる際や道路、鉄道などを通す際の土地の再利用の際に破壊が予測される遺跡を記録保存するために地方公共団体、財団法人の埋蔵文化財調査事業団もしくは埋蔵文化財センター、地方公共団体が大学教授などに依頼して組織された発掘調査団、遺跡調査会などがおこなう発掘調査を特に緊急発掘調査(あるいは単に緊急調査)と呼ぶことがある。学術目的の調査は、予算・期間・組織的な制約もあって小規模なものであったが、各種開発工事にともなう発掘調査は、場合によっては数万平方メートルにおよぶ大規模なものも稀ではなく、おびただしい数の考古資料が検出されたので、いきおい考古学のあり方そのものを変質させたし、調査方法や調査体制も変化した。 埋蔵文化財包蔵地でなくても工事中に偶然遺跡が発見される(不時発見)ことがしばしばあるが、多くは発掘調査終了後に記録として保存されるのみで遺跡は破壊される場合が多い。しかしその中でも本来の計画を変更し、歴史公園などとして保存する例もある。そういった例では、工業団地造成のための発掘調査で大規模な集落跡が見つかった佐賀県の吉野ヶ里遺跡が特に有名である。同様に、青森市の三内丸山遺跡は野球場建設、大阪府藤井寺市のはさみ山遺跡(梨田地点)は住宅建設にともなう調査であり、いずれも保護措置(現状保存)がとられた。 なお、団地造成により発掘調査のおこなわれた遺跡には、鳥取県米子市の青木遺跡や福市遺跡、青森県八戸市の長七谷地貝塚、茨城県つくば市の平沢官衙遺跡、岩手県一戸町の御所野遺跡、岡山県倉敷市の楯築遺跡ほかがあり、枚挙にいとまがない。これらは史跡などに指定され、保存と活用がはかられている遺跡である。 一方で、2008年に古市古墳群内で新たに、前方後円墳が発見されたにもかかわらず、開発業者によって破壊されてしまった例がある。
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