取り巻く環境
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 03:46 UTC 版)
資本主義国家では多くが民間企業で構成されているが、それ以外の体制下では国家機関が軍需産業を構成している場合がある。軍需産業は国家防衛という国家が行なう軍隊の活動を生産面でサポートする産業であるため、完全に自由な民需産業とはなり得ず、政府の恣意的な保護政策や時に強制的な政策が行使され、軍事機密の保護のために個人の移動制限や輸出の制限が加えられる。こういった環境にある産業であるため、新規参入は結果として強く制限される反面、最新の情報通信技術のような「新兵器」が生み出せる技術を持った企業が急成長する産業でもある。 発注者が国家そのものという事で契約履行がほぼ安定しており、受注が得られれば民間企業としては経営が安定できる。現在の世界の多くの財閥や巨大企業がその繁栄期には戦争特需で急成長した時期があったように、戦争によって繁栄しうる。しかし、現代戦は国家財政を大きく消耗させてしまうため長期的な需要とはなりづらい。逆に戦争終結で投資が無駄になることも多い。「軍需産業にとって好都合なのは冷戦のような軍備拡張競争である」などと言われる。現在は冷戦終結後の軍縮で兵器市場が縮小し、軍需産業の統合が進んでいる。 全世界の軍事費合計はソ連崩壊前の1985年には1兆2535億ドルあったが、ソビエト連邦の崩壊後の1995年には9,162億ドル、2000年には8,115億ドルと激減しており、予定されていた装備の調達が大幅に削減されることが多くなった。こうした状況下、冷戦期に拡大した軍需産業界は危機を迎え、1994年にノースロップがグラマンを、1997年にはボーイングがマクドネル・ダグラスを買収するなど、1990年代には多くの企業・部門が統廃合に追い込まれた。2006年現在存在するボーイング、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマン、レイセオン、EADSといった巨大な軍需企業は1985年には少なくとも20以上の個別の企業あるいは軍需部門であった。 こういった軍需に関わる企業では、軍事機密などを口実として情報開示を行わず、透明な環境での監視や競争原理が働かないまま、国家から多額のお金を得ている。このため、政治家・民間会社・軍官僚の間での癒着(賄賂など)や不法行為の温床となることがある。(詳細は軍産複合体及び天下りを参照) 2006年度は地球全体で9,000億ドル以上が軍需産業に使用され、世界のあらゆる工業国では国内の軍需産業界が発達している。アムネスティ・インターナショナルによって設立されたコントロール・アームズによると、98以上の異なった国に拠点を置く1,135以上の会社がそれらの様々なコンポーネントと弾薬と同様に小火器を製造している。 技術革新が進み、武器が高価になるにつれ、武器の開発や生産は国際共同が主流となりつつあり、1つの国で軍需産業を維持、発展させることは困難となりつつある。
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