ベートーヴェン:五重奏曲 変ホ長調
英語表記/番号 | 出版情報 | |
---|---|---|
ベートーヴェン:五重奏曲 変ホ長調 | Quintett Es-Dur Op.16 | 作曲年: 1796年 出版年: 1801年 初版出版地/出版社: Mollo |
作品解説
Op.5と同じくベルリン旅行中に作曲された。このピアノと管楽器の五重奏編成はベートーヴェンの全作品中でOp.16のみである。作曲動機は不明だが、編成と調性が同じで、序奏つきのソナタ形式楽章やロンド形式の終楽章という点も共通するモーツァルトのK.452からの影響が指摘されている。
作品全体はピアノを主体とする。主題は概ねピアノが示し、管楽器が繰返す。またピアノの華麗な走句に、管楽器が補佐的に和音を加える箇所が目立ち、協奏曲に特徴的な要素が多い。第1楽章のコーダ直前のカデンツァはその筆頭である。初演のピアノは作曲者自身が弾いたというから、自身の技量の誇示を意識した可能性は高い。第1楽章の序奏は厳かなユニゾンで始まり、声部間の模倣とピアノのスタッカートの歩みに乗って進む。Allegro主部では、ピアノが示す和音進行を中心とした主要主題と副主題の簡潔さと主題確保以降の装飾的な音形が対照的。調性はほぼ型通りだが、展開部には下属調で主題の疑似再現が現れ、長い属音に続いてピアノが当時の鍵盤のほぼ全域を駆け上がり、主調主題の再現を導く。
第2楽章はABACAコーダのロンド形式。B、Cは短調の陰りやファゴット、ホルンへの主旋律パートの交替によってAと対比される。ロンド主題は回帰するたび、より複雑な装飾変奏へ発展する。
第3楽章では、ロンド主題動機の紡ぎ出し技法や、第1クプレの高音へ固めたピアノと低音ファゴットの組合せといった全体の響きのバランスとその多様性も注目される。
作曲家自身によるピアノと弦楽器のための四重奏編曲では、対旋律の追加(ex.第2楽章主題のヴィオラ)やピツィカート伴奏(第45小節?)など、原曲とは別の創作的試みが伺える。
- 五重奏曲 変ホ長調のページへのリンク