ショパン:ノクターン 嬰ハ短調
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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ショパン:ノクターン 嬰ハ短調 | Nocturne cis-Moll (Lento con gran espressione) KK.IVa/16 CT127 | 作曲年: 1830年 出版年: 1875年 初版出版地/出版社: Leitgeber |
作品解説
Nocturne cis-moll Op.posth.
1830年にウィーンで完成され、ショパンの姉ルドヴィカに送られた作品。慣例的にノクターンの1つに数えられているが、これは、ルドヴィカの編纂したショパンの未発表作品の目録の中で「ノクターンの様式のレント」と記されているからであり、恐らく、ショパン自身はノクターンと命名しなかったと推測されている。そのため、速度表示の「Lento con gran espressione」がそのままタイトルとして使われることも多い。ルドヴィカに送られた手稿は、後にショパンの父の友人で、民俗学者・音楽家のOskar Kolbergによって筆写され、それをもとに1875年に初版が出版された。
曲は、大きく分けると、前奏-A-B-A’-コーダとなる。最初のAでは、いかにも歌唱的な旋律が印象的だが、メロディーの最低音と最高音の幅は、3オクターヴと半音であり、実際に歌うことは無理である。また、Aの最後にはさりげなく半音階的和声が使われ、微妙な陰影が与えられている。
続くBは、Aと同じ伴奏型が続く前半と、3/4に拍子が変わる後半とに分けられ、ショパン自身の《ピアノ協奏曲》第2番、及び彼の歌曲《乙女の願い》のモチーフが引用される。
譜例1 第23~24小節
譜例2 《ピアノ協奏曲》第2番 第1楽章 第41~42小節
譜例3 第21~23小節
譜例4 《ピアノ協奏曲》 第2番 第3楽章 冒頭
この部分の前半で、ショパンは当初、左手4/4拍子1小節に対し、右手3/4拍子2小節という書き方をしていたが、難しすぎると判断したのか、ルドヴィカに送られた手稿では、両手とも2/2拍子で弾けて、リズムも簡略化されたものになっている(譜例3; 通常この簡略化された形で演奏されるが、これをショパンの妥協と考えたのか、当初の複雑な形で演奏する人もいる)。
A’に戻って第53小節目に入ると、音楽がVに半終止して落ち着くかと思わせたところで、旋律は一気に上昇し緊張を高め、次の小節でバスがfisisに下がり減七の和音になると、緊張は頂点に達する。この53小節目の旋律最後の音であるfisと54小節目の左手冒頭のfisisの間には、和声学で避けることが望まれる対斜が生じている。(譜例5)。
譜例5 第50~52小節
そして、旋律は下降を続けI度に落ち着くと、伴奏はI度とその刺繍和音の2種類を延々繰り返す。右手もまた、同じことを何度もつぶやくが如く、音階の上昇と下降を4回繰り返し、最後に突然同主長調になってピカルディ終止する。
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