トファシチニブとは? わかりやすく解説

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トファシチニブ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/29 03:00 UTC 版)

トファシチニブ
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
販売名 ゼルヤンツ, Xeljanz, Jakvinus
胎児危険度分類
  • US: C
法的規制
  • US: -only
  • 劇薬、処方箋医薬品
投与経路 経口
薬物動態データ
生物学的利用能74%
血漿タンパク結合40%
代謝肝代謝 (CYP3A4 および CYP2C19による)
半減期3時間
排泄尿中排泄
識別
CAS番号
477600-75-2
ATCコード L04AA29 (WHO)
PubChem CID: 9926791
DrugBank DB08183
ChemSpider 8102425
UNII 87LA6FU830
KEGG D09970
ChEBI CHEBI:71200 
ChEMBL CHEMBL221959
別名 CP-690550
化学的データ
化学式C16H20N6O
分子量312.369 g/mol
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トファシチニブ (Tofacitinib)は、ヤヌスキナーゼ阻害剤であり、免疫抑制剤分子標的薬のひとつ。製品名はゼルヤンツ、XeljanzやJakvinus。ファイザーにより開発され、日本では武田薬品工業が販売している。

薬理

トファシチニブは、ヤヌスキナーゼの強力な阻害薬である。in vitroでは、トファシチニブはJAK1、JAK2、JAK3をともに阻害する。細胞内では 2 分子のJAKが介在してシグナル伝達が行われるが、トファシチニブは主としてJAK3またはJAK1に会合するヘテロ二量体受容体によるシグナル伝達を強力に阻害する。JAK1およびJAK3の阻害により[1]IL-2IL-4IL-7、IL-9、IL-15およびIL-21を含む数種類のサイトカイン受容体を介した細胞内シグナル伝達が遮断される。これらのサイトカインは、細胞核でのDNA転写[2]リンパ球の活性化・増加・機能発現に不可欠であることから、これらのシグナル伝達の阻害により免疫を抑制できると考えられている。

効能・効果

禁忌

以下の患者には禁忌である[4]

  • 重篤な感染症敗血症など)の患者
  • 活動性結核の患者
  • 重度の肝機能障害を有する患者
  • 好中球数が500/mm3未満の患者
  • リンパ球数が500/mm3未満の患者
  • ヘモグロビン値が8g/dL未満の患者
  • 製剤成分に対し過敏症の既往歴のある患者
  • 妊婦または妊娠している可能性のある婦人

副作用

添付文書に記載されている重大な副作用は、帯状疱疹肺炎ニューモシスティス肺炎などを含む)、敗血症、結核などの重篤な感染症、消化管穿孔、好中球減少、リンパ球減少、ヘモグロビン減少、肝機能障害、黄疸間質性肺炎である。

全例市販後調査のためのトファシチニブ使用ガイドライン(PDF)が策定され運用されている。同ガイドラインを逸脱した投与例では死亡例が報告されている[5]

特徴

  • ORAL-start試験において、トファシチニブはSharp-core, ACR70ともに、メソトレキセートよりも優れていた[6]

他疾患への適用

  • 標準治療に抵抗性の中等症・重症アトピー性皮膚炎6例に対してトファシチニブを投与したところ、全例で炎症を有する皮膚の面積が減少し、同時に紅斑・浮腫・苔癬化・擦過傷の軽減が見られた[7]。またSCORAD(Scoring Atopic Dermatitis)スコアは8~29週の治療後に66.6%減少した(36.5から12.2へ)。
  • 潰瘍性大腸炎に対する開発第3相試験のひとつ、OCTAVE Sustain 試験においてえ、52週の時点における寛解率は、トファシチニブ5mg群 34.3%, 10mg群 40.6%に対し,プラセボ群 11.1%であり、トファシチニブは有意に有効であった(プラセボ群との比較でいずれも P<0.001)[8]

関連項目

出典

  1. ^ Ghoreschi, K. (2011). “Modulation of Innate and Adaptive Immune Responses by Tofacitinib (CP-690,550)”. J Immunol. 186 (7): 4234–4243. doi:10.4049/jimmunol.1003668. PMC 3108067. PMID 21383241. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3108067/. 
  2. ^ “Tasocitinib”. Drugs in R&D 10 (4): 271–284. (2010). doi:10.2165/11588080-000000000-00000. PMC 3585773. PMID 21171673. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3585773/. 
  3. ^ https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2018/2018_05_25.html
  4. ^ ゼルヤンツ錠5mg 添付文書” (2015年1月). 2015年6月30日閲覧。
  5. ^ JAK阻害薬,ガイドライン非適合患者で死亡”. MTPro (2015年5月19日). 2015年6月30日閲覧。
  6. ^ Lee EB, et al. (June 19, 2014.). “Tofacitinib versus Methotrexate in Rheumatoid Arthritis.”. N Engl J Med 370: 2377-2386. doi:10.1056/NEJMoa1310476. 
  7. ^ Levy LL, Urban J, King BA (2015-07-17). “Treatment of recalcitrant atopic dermatitis with the oral Janus kinase inhibitor tofacitinib citrate.”. J Am Acad Dermatol.. doi:10.1016/j.jaad.2015.06.045. PMID 26194706. http://www.jaad.org/article/S0190-9622%2815%2901851-4/abstract 2015年8月15日閲覧。. 
  8. ^ Sandborn WJ, et al. Tofacitinib as Induction and Maintenance Therapy for Ulcerative Colitis. N Engl J Med 2017; 376:1723-1736. DOI: 10.1056/NEJMoa1606910

トファシチニブ(Tofacitinib、ゼルヤンツ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/02 01:33 UTC 版)

分子標的治療」の記事における「トファシチニブ(Tofacitinib、ゼルヤンツ)」の解説

炎症性サイトカイン細胞内へのシグナル伝達を担う細胞膜上にあるヤーヌスキナーゼ (JAK) を阻害し関節リウマチ潰瘍性大腸炎治療用いられるクローン病対す治験進んでいる。

※この「トファシチニブ(Tofacitinib、ゼルヤンツ)」の解説は、「分子標的治療」の解説の一部です。
「トファシチニブ(Tofacitinib、ゼルヤンツ)」を含む「分子標的治療」の記事については、「分子標的治療」の概要を参照ください。

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