暗黒物質
別名:ダークマター、Dark matter
宇宙における一定の質量を占める物質とされながらも、光学的に観測できず、実際に存在するのかどうか確認されていないもの。欧州合同原子核研究機関(CERN)によると、暗黒物質の謎が解明されれば、宇宙に関するより多くのことが解明できるとされている。
宇宙の組成のうち、原子は全体の5%のみで、残りは見ることのできない物質である。そのうちの約24%が「暗黒物質」とされている。
2013年4月5日のCNNの記事によると、欧州合同原子核研究機関(CERN)が暗黒物質に関する痕跡を発見したと発表。国際宇宙ステーションに設置されているAMS(Alpha Magnetic Spectrometer・アルファ磁気分光器)で暗黒物質の存在に関係する陽電子を計測したと発表した。
関連サイト:
Dark matter - CERN
宇宙の「暗黒物質」の痕跡か 国際チームが観測 - CNN.co.jp
ダーク‐マター【dark matter】
読み方:だーくまたー
⇒暗黒物質
ダークマター
目に見えないダークマターは質量からしか予測できない
ダークマターとは宇宙にある見えない物質のことで、ミッシングマスとも呼ばれています。光も電波も発することがないため、可視光線や赤外線、X線でも見えませんが、質量からその存在が予測される物質です。銀河系団の質量は、構成する各銀河の明るさから推定される値よりも、各銀河の運動から求めた質量のほうが10~100倍も大きいことが50年ほど前からわかっていました。また、渦状銀河では、星の数から期待される質量より、回転速度から求めた質量のほうが大きく、見えない物質が個々の銀河から宇宙全体にわたって存在することが明らかになったのです。ダークマターは銀河形成や宇宙が閉じているかどうかといった問題の解決に向けて重要な役割を担っていますが、正体はまだよくわかっていません。
なぞに包まれるダークマターの構成要素
私たちのまわりにある物質は陽子や中性子などのバリオンとよばれる物質からできています。普通の星もこのバリオンからできています。ダークマターはバリオンではないといわれ、その正体については質量を持ったニュートリノ説や超対称性粒子説、モノポール(磁石のN極、あるいはS極のいずれかのみの極を持った素粒子)説、原始ブラックホール説、アクシオン、宇宙のひも(コスミック・ストリング)説などが考えられています。
ビッグバン宇宙論を支えるダークマターの存在
ビッグバン宇宙論では、宇宙の質量の90~95%をダークマターが占めると考えられています。1993年1月、X線天文衛星ROSATは、地球から約1億5,000万光年離れたNGC2300グループと呼ばれる銀河集団を取り巻くガス雲を観測しました。このガス雲の温度は1,000万℃、直径は約130万光年、質量は太陽の5,000億倍に相当します。このガス雲はダークマターではないかと考えられており、ビッグバン理論を支える有力な論拠となっています。
暗黒物質
(ダークマター から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/12 04:28 UTC 版)
暗黒物質(あんこくぶっしつ、英: dark matter、ダークマター)は天文学的現象を説明するために考えだされた仮説上の物質。
注釈
- ^ ツビッキーはかみのけ座銀河団までの距離を 50 Mpc と推定したが、当時知られていたハッブル定数の不正確さのために、この距離の推定値は現代の推定値の2分の1である[10][11]。
- ^ 暗黒物質が不安定であり膨張している可能性を論じたアンバルツミャンの論文は査読を通過しなかった[14]。
- ^ 1992年のWMAPのCMBの観測以前は、ハッブル定数は 50 - 100 km/s/Mpc というおおまかな値が与えられていた。なお、2014年までの理論では、ハッブル定数は過去から一定ではなかった(宇宙の加速)とされている。
- ^ ビッグバン仮説に修正を迫る観測事実としては2013年に発見されたヘルクレス座・かんむり座グレートウォール、U1.27の発見がある[32]。ビッグバン直後の均質な宇宙において初期揺らぎから最初に銀河が生まれ、発生した銀河が規模と数を増しつつ宇宙へ拡散し、銀河団、超銀河団、宇宙の大規模構造へと進化したとするボトムアップ説を採用するビッグバン仮説では比較的初期の宇宙(現在から100億年前、宇宙誕生から38億年後)にヘルクレス座・かんむり座グレートウォールのような全長100億光年にも達する超巨大な構造が形成されるに至ったメカニズムが理論の修正なくして説明不能である[33]。逆に比較的初期の宇宙に100億光年に達する巨大構造が形成されていたという事実は大規模構造となる巨大なガスのかたまりが最初に生まれ、その次に超銀河団のもととなる塊が分裂し、銀河団、個々の銀河へとスケールダウンするように小さい構造が作られたとするトップダウン説を採るプラズマ宇宙論に有利な観測結果と言える。
出典
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ダークマター(暗黒物質、暗黒エネルギー)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 05:00 UTC 版)
「宇宙の法-エローヒム編-」の記事における「ダークマター(暗黒物質、暗黒エネルギー)」の解説
宇宙空間に存在する反物質で、暗黒エネルギーとして地球の物質を破壊するもの。
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