シー汁(しーじる)
コメを長期間浸し細菌が生え、酸っぱくなった水のこと。こうしてコメを漬ける方法をシー汁浸漬といい昭和三〇年代半ばまで、泡盛の原料米の処理に用いられていた。明の宋応星の書『天工開物』(1637)に、丹麹(たんさく)(紅麹(あんかー))用せん稲(せんとう)米(粳(うるち)米)を精白し、7日間水に漬け、鼻もちならぬほど臭くなったところで川の流水にさらし、蒸すと悪臭が芳香にかわるとあり、丹麹は元朝以降中国南部から台湾にかけ紅酒(あんちゅう)製造似よくつくられているところから、その方法が泡盛麹に採用されたとみるべきであろう。シー汁浸漬したコメは蒸しあがりの色が白く、硬質のインド種のコメが軟らかくなる。沖縄では浸漬水に前回のシー汁を種として加え、夏期には17~8時間、冬期は22~3時間浸漬すると乳酸菌などが繁殖し、液は粘りが出て酸性となる。シー汁が充分発酵していない場合を「疎酸(うるしー)トーン」といい、浸漬時間を延ばした。泡盛麹の製造に回転ドラム式製麹機が導入され始めた昭和四二年ころからシー汁浸漬法はしだいに廃止された。
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