Self Control (TM NETWORKのアルバム) 背景

Self Control (TM NETWORKのアルバム)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/18 21:40 UTC 版)

背景

前作『GORILLA』リリース後、TM NETWORKは「TM NETWORK TOUR '86 FANKS DYNA☆MIX」と題したライブツアーを、6月10日の静岡市民文化会館から7月18日中野サンプラザまで13都市全15公演にて開催した。その後、8月23日にはよみうりランドEASTにて「TM NETWORK FANKS "FANTASY" DYNA-MIX」と題した野外ライブを開催した。このツアーと野外ライブの模様を収録したライブ・ビデオ『FANKS "FANTASY" DYNA-MIX』は12月1日にリリースされた。

同年11月21日には先行シングル第一弾となる「All-Right All-Night (No Tears No Blood)」をリリース、11月29日、12月7日にはイベントライブ「YAMAHA X-DAY」、12月1日には「SPECIAL LIVE」をマリアクラブにて開催、12月21日にはTBSテレビ開局35周年記念イベント「ANNIVERSARY ROCK FESTIVAL」に参加した。

1987年に入り、2月1日には先行シングル第二弾となる「Self Control (方舟に曳かれて)」をリリース、2月11日から12月20日までファンイベント「FANKS SUMMIT」が7都市において開催された。

録音

自分自身がプロデュースワークとして、プラスアルファの部分を引っ張り出せるようになっていったのは、このあたりで覚えていきましたね。
小室哲哉,
ぴあMOOK TM NETWORK 30th Anniversary Special Issue 小室哲哉ぴあ TM編[2]

レコーディングは1986年より音響ハウス、スマイルガレージ、スタジオセディック、CBSソニー信濃町スタジオCBSソニー六本木スタジオにて行われた。前作まで西門加里の名で作詞を担当していた小室みつ子は本作より本名名義に変更した。

小室は本作を「新曲によるベストアルバム」を意識して製作したという。サウンドのコンセプトは「『GORILLA』+『RAINBOW RAINBOW』」であり、ただ作りが厚いだけでなく、ライブでも再現・演奏が可能な音色を目指した。小室はそれ以外は何も用意しないでスタジオに入り、どんどん頭の中に浮かんでくるものを形にすれば良かったため、悩まずに速く終わった[3]。レコーディングの後半に至っては、7曲を7日で仕上げる程にスムーズに進んだ[4]

楽曲を制作する途中で歌い方・アレンジ・宣伝スタイル等の方向性ができて[3]、小室は「自制心」を考えながら制作していたが、小室みつ子が「時にはそれを破ってタイミングやチャンスを掴まなければいけない」という内容の歌詞を書いたため、次第に「守る」と「破る」がアルバムの2本の柱となった[5]。後に小室はこのことを「『昔は歌詞は基本的に音の世界のサポートになればいいと思っていたが、本作で音以上に歌詞がイニシアティブを握る場合もある』と歌詞に対する考え方が確実に変わった」と振り返っている[6]。対して木根は速くできなかったが、勢いで押し通した[3]。宇都宮は、息苦しさを感じさせる声にならずに、普通の声に聞こえるように神経を使った[3]

音色の作り方は「演奏した時に楽器から出た音色そのもの」より、「演奏した時に出てきた残響音・音の空間」をいつもより意識した[7]

ピアノパートは全て小室による生ピアノをKurzweil 250で一度サンプリングした後の素材を使用した[8]

アルバムに先駆け、2月1日に同名のシングル「Self Control (方舟に曳かれて)」が発売されたが、「Self Control」「Don't Let Me Cry」「Fighting (君のファイティング)」「Spanish Blue (遙か君を離れて)」「Here, There & Everywhere (冬の神話)」を宇都宮がいたく気に入ったため、どの曲を先行シングルにするかで議論があった[9]。「Self Control」は全くシングルを意識して作っていなかったが、当時の音楽雑誌の編集者がこの曲を聴いて、「これシングルにいいんじゃない?」と言った一言で決まった[10]

音楽性

小室は「ビートルズのアルバムの構成、曲の流れ、サウンド面からの影響が反映されている」と称している[11]。1曲目から5曲目まではアップナンバーを、6曲目から10曲目まで『Spanish Blue』を除いてバラードを配置している[3]

このアルバムは疾走感があるんですね。10代でも20代でも多感な期間を走り抜いている人たち、何か走ってる人たち。ちょっと行き急いでいるというか。そこからセルフコントロールという言葉が生まれて、タイトルにもなったんだと思います。
小室哲哉,
ぴあMOOK TM NETWORK 30th Anniversary Special Issue 小室哲哉ぴあ TM編[2]

1曲目「Bang The Gong (Fanks Bang The Gongのテーマ)」はライブを想定して製作された[2]。2曲目「Maria Club (百億の夜とクレオパトラの孤独)」は福岡に存在したディスコマリアクラブでのイベントに参加した際に製作された[2]。3曲目「Don't Let Me Cry (一千一秒物語)」の曲の構成に関して小室は「TMっぽい手法」と発言している[2]。4曲目「Self Control (方舟に曳かれて)」のタイトルは渡辺美里が出演していた深夜ラジオ番組内にて受験生に対し「セルフコントロール」という言葉を発した事から名付けられた[2]。曲調に関して小室は「メッセージ性は強いけど、ロックンロールの汗とは違うタイプの汗をかける」と表現し、同グループならではのロックを表現した曲になったと述べている[2]。5曲目「All-Right All-Night (No Tears No Blood)」もまた小室は「TM NETWORK風ロックンロール」と表現し、ブルー・ノート・スケールが使用されている事も特筆すべき点であると述べている[2]。6曲目「Fighting (君のファイティング)」は曲先行で製作された曲であり、木根が製作するバラードに比べて「木根さんほど優しいバラードにはならない」、「バラードなのにメロディが強い」と小室は述べている[2]。7曲目「Time Passed Me By (夜の芝生)」はデイヴィッド・フォスターからの影響が強く、小室は作曲した木根が喜びそうなアレンジを目指したという[2]。8曲目「Spanish Blue (遙か君を離れて)」は疾走感を重視した曲であり、この曲に限らずスタジオミュージシャンの力量によって本作は成立している事を小室は述べている[2]。9曲目「Fool On The Planet (青く揺れる惑星に立って)」は10ccケイト・ブッシュマイク・オールドフィールド山下達郎などからの影響で小室のコーラスは24回多重録音したものが使用されている[2]。10曲目「Here, There & Everywhere (冬の神話)」は小室が中学生の頃に自宅のエレクトーンで製作した曲である[2]

音楽誌『別冊宝島1532 音楽誌が書かないJポップ批評53 TMN&小室哲哉[ポップス神話創世]』にてライターのともえりょうのすけは、本作の音楽性に関して「シンプルなサウンドとティーンを励ますような歌詞」と指摘した[12]


  1. ^ 立東社刊「PLUM」1986年9月号 Vol.10「TM NETWORK SPECIAL 実現!宿願成就!てつや★キララ対談」p.84より。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 「TM NETWORK'S WORKS HISTORY 小室哲哉によるアルバム全曲解説!」『ぴあMOOK TM NETWORK 30th Anniversary Special Issue 小室哲哉ぴあ TM編』ぴあ、2014年5月30日、32 - 59頁。ISBN 9784835623269 
  3. ^ a b c d e 自由国民社刊『シンプジャーナル』1987年2月号「アルバム『Self Control』インタビュー『高まるボルテージのなかで'87年は』」15P-16P,「キーボード講座 第19回『今月は、エッセイ風に…』」106P-107Pより。
  4. ^ 立東社刊「PLUM」1987年1月号 Vol.14「TM NETWORK 小室哲哉の天才的曲づくりの謎」p.20より。
  5. ^ a b 自由国民社刊『シンプジャーナル』1987年4月号71P-72Pより。
  6. ^ 角川書店刊『月刊カドカワ』1991年10月号34P-36Pより。
  7. ^ 講談社刊「ホットドッグ・プレス」1987年6月25日号「TMネットワーク 小室哲哉 コンピュータはスペイシーな音源だ」p.245より。
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m 立東社刊『KB special』1987年3月号108P-109P「『Self Control』は"ほんの思いつき"アイディア集!?」より。
  9. ^ a b c d e f g h i 立東社刊「PLUM」1987年3月号 Vol.16「TM NETWORK ふたりの宇都宮隆」pp.124-125より。
  10. ^ ソニー・マガジンズ刊 『ギターブック』 1992年1月号109P-110Pより。
  11. ^ a b 自由国民社刊『シンプジャーナル』1987年5月号18Pより。
  12. ^ ともえりょうのすけ「PART 2 TM NETWORK/TMN ヒストリー&レビュー CHAPTER 1 タイムマシン、始動(1984年-1987年)」『音楽誌が書かないJポップ批評53 TMN&小室哲哉[ポップス神話創世]』別冊宝島 1532号、宝島社、2008年6月19日、42 - 43頁、ISBN 9784796662697 
  13. ^ a b TMN / セルフ・コントロール[再発]”. CDジャーナル. 音楽出版. 2019年8月18日閲覧。
  14. ^ a b c TM NETWORK / Self Control[Blu-spec CD2]”. CDジャーナル. 音楽出版. 2019年8月18日閲覧。
  15. ^ a b TM NETWORK/Self Control<完全生産限定盤>” (日本語). TOWER RECORDS ONLINE. タワーレコード (2009年4月8日). 2019年8月18日閲覧。
  16. ^ a b 梅本直志「PART 2 TM NETWORK/TMN ヒストリー&レビュー TM NETWORK / TMN オリジナルアルバム "WILD" レビュー #4」『音楽誌が書かないJポップ批評53 TMN&小室哲哉[ポップス神話創世]』別冊宝島 1532号、宝島社、2008年6月19日、48頁、ISBN 9784796662697 
  17. ^ a b c d e f g ソニー・マガジンズ刊『WHAT's IN?』1992年3月号「COMPLETE FILE TMN」52P-55Pより。
  18. ^ a b c 全音楽譜出版社刊「木根本」p.6,36より。
  19. ^ a b c d e M-ON! Entertainment社刊 TIME MACHINE BOX 1984>1994 P.100 書籍4520361701287
  20. ^ DREAMING MONSTER、木根尚登さんに『Self Control』の振り付け公認を獲得!!その経緯を、「DREAMING MONSTER/木根尚登/田辺晋太郎」の座談会を通して紐解こう!!”. Myuu♪ (2017年10月11日). 2024年5月15日閲覧。
  21. ^ 自由国民社刊『シンプジャーナル』1987年1月号73P-74Pより。
  22. ^ メディアファクトリー刊『まっすぐ進む 夢へのヒント54』木根尚登著25Pより。
  23. ^ 角川書店刊『月刊カドカワ』1996年7月号「木根尚登 スピリチュアル・メッセージ 違和感のない空間」223P-232Pより。
  24. ^ シンコーミュージック・エンタテイメント刊「ノイジー・ナイトに乾杯!」小室みつ子著pp.160-161より。
  25. ^ Rhapsody~ひ・と・り・ご・と~”. oricon ME inc.. 2024年5月18日閲覧。
  26. ^ TM NETWORK、80年代の8タイトルをリマスター&紙ジャケで再発”. CDジャーナル. 音楽出版 (2007年1月9日). 2019年8月13日閲覧。





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「Self Control (TM NETWORKのアルバム)」の関連用語

Self Control (TM NETWORKのアルバム)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



Self Control (TM NETWORKのアルバム)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのSelf Control (TM NETWORKのアルバム) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS