Rh因子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/29 17:05 UTC 版)
輸血の対応
受血者の場合、単純に抗D試薬の直接凝集反応で陽性ならD陽性、陰性ならD陰性として扱う。
供血者の場合、ポリクローナル抗Dを用いたD陰性確認試験(間接抗グロブリン法)で陰性の場合のみD陰性、それ以外はすべてD陽性として扱う。
また、前述のD抗原が少なかったり一部が欠損しているWeak DやPartial D型の場合は、受血者のときはRh0(D)(-)、供血者としてはRh0(D)(+)として扱う。[4]。 D抗原を持たないRh−型の人にRh+型の血液を輸血すると、血液の凝集、溶血等のショックを起こす可能性がある。またRh−型の女性がRh+型の胎児を妊娠すると、病気・流産の原因となることがある。なお、ABO式血液型と違い、Rh−型の人はD抗原の自然抗体を持たない。そのため、Rh型不適合妊娠による胎児への影響は、第2児以降の出産かD抗原に何らかの形で感作した場合にしか起こらない。ABO式血液型不適合で起こりにくい胎児への悪影響がRh型で起こるのは、抗A抗体や抗B抗体がIgMで胎盤通過性を持たないのに対し、抗D抗体がIgGで胎盤通過性を持つからである。なお、予防のために初回出産時に抗Dグロブリン製剤を投与し、母体が抗D抗体を産生しないように予防するのが一般的である。E抗原の不適合妊娠が問題となることもある。[5]
- Rh+(D抗原陽性)
- Rh−(D抗原陰性)
Rh(D)免疫グロブリン (RhIg) の投与量計算
妊婦の場合
Rh(D)免疫グロブリン (RhIg) はRh(−)の妊婦がRh(+)児を出産した際に72時間以内に投与され、抗体産生を防ぐ。
RhIg1バイアル (300 µg) あたり30 mLのRh(+)胎児血球に効果があるので、例えば体重50 kg、循環血液量70 mL/kg、胎児血球が2.5 %残存しているとすると、50 kg × 70 mL/kg × 0.025 = 87.5 mLの血球が母親体内にある。87.5 ÷ 30 = 2.92なので、4バイアル必要。(小数点以下を四捨五入+1とする)
輸血の場合
Rh(−)の患者にやむを得ずRh(+)製剤を輸血した場合に投与され、抗体産生を防ぐ。
RhIg1バイアル (300 µg) あたり15 mLのRh(+)成人血球に効果があるので、例えばRCC1単位に100 mLの血球があるとすると、100 ÷ 15 = 6.67なので、8バイアル必要。(小数点以下を四捨五入+1とする)
半減期
半減期は21日となっているので、例えば63日後には12.5 %が体内に残る。
歴史
1937年にオーストリアの医学者カール・ラントシュタイナー及びアレクサンダー・ヴィナーがD抗原を発見して、1940年に発表したのが始まり。発見から発表まで約3年かかっているのは、抗Rh血清の製造法改善に時間がかかった為である。Rhは、実験に使用されたアカゲザル(独: Rhesusaffe、英: Rhesus monkey)の頭文字から。
- ^ 古畑種基『血液型の話』岩波新書、1962年、P75
- ^ 松尾 2009, p. 128.
- ^ 松尾 2009, pp. 130–131.
- ^ 北村聖、編集『看護のための最新医学講座』株式会社中山書店、2006年第2版、347P、ISBN 4-521-62511-8
- ^ 半藤保; 間部佑子; 柳瀬徹; 倉林工(日本語) 『血液型不適合妊娠の頻度と対応策の現況』新潟青陵大学、2008年3月。doi:10.32147/00001197 。2021年7月11日閲覧。
- ^ “Rh式血液型(Rh blood group)”. 日本赤十字社 東京都赤十字血液センター. 2013年7月2日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2013年5月26日閲覧。
- ^ Touinssi, Mhammed; Chiaroni, Jacques; Degioanni, Anna; De Micco, Philippe; Dutour, Olivier; Bauduer, Frédéric (2004). “Distribution of rhesus blood group system in the French basques: a reappraisal using the allele-specific primers PCR method”. Human Heredity 58 (2): 69–72. doi:10.1159/000083027. PMID 15711086.
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