RISC 主なRISCプロセッサ

RISC

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/16 20:11 UTC 版)

主なRISCプロセッサ

現行のプロセッサ

SPARCサン・マイクロシステムズ富士通
バークレーでの研究は直接製品化されることはなかったが、サン・マイクロシステムズはRISC-IIのデザインを使ってSPARCを開発した。また、Pyramid Technologyもミッドレンジのマルチプロセッサ機に使用した。他にも多くの企業がRISC-IIのデザインを利用した。これはサンの新たな機種で広く使われ、RISCの効果を世に知らしめた。これにより、サンは急速に成長し、ワークステーション市場をほぼ独占することになった。しかし1990年代後半にワークステーション市場はX86アーキテクチャのPCに敗れ去り消滅した。現在では同社および共同開発の富士通サーバ専用に少数が生産されている。
MIPS
ジョン・ヘネシーは一時期スタンフォード大学を離れてMIPSの商用化設計にとりかかるためミップス・コンピュータシステムズという企業を設立した。最初の製品は第二世代のMIPSチップR2000であった。MIPSのデザインはプレイステーションNINTENDO64などのゲーム機でも使われ、最も多く出荷され使われたRISCチップとなった。現在では組み込みシステム用のハイエンドのプロセッサとして有名である。
POWERPowerPCIBM
IBMはRT PCでの失敗を教訓として次期マシンRS/6000のベースとするためにPOWERアーキテクチャを設計した。POWERを小規模化したPowerPCでは、IBM固有の様々な命令が排除されてシングルチップ化された。PowerPCはデスクトップ向けでは1994年より2006年までMacintoshに使われた。PowerPCコアは、東芝などと共同開発のCellを含め、スーパーコンピュータから組み込みシステムまで幅広く展開し、据え置きのゲーム機にも多く使われている。
ARM (Acorn→ARM Ltd)
ARM1~3がAcornArchimedesなどに搭載された後に、AppleNewton向けプロセッサの共同開発を進めるためプロセッサ開発部門がARMとして独立。RISC-CPUの中でも特に低消費電力に注力した設計をもつ。組み込みシステム向けとして各社にライセンス展開し、Androidスマートフォンをはじめとした組み込み向け市場では圧倒的なシェアを誇る。サーバファームニンテンドーDSなどの携帯ゲーム機にも利用される。
SuperH日立製作所ルネサス エレクトロニクス
組み込みシステム向けで、SH-1~SH-5がある。コードサイズの効率化を狙って固定命令長を16ビットとした。このコンパクトな命令セットは他社の命令セットにも影響を与えた。セガのゲーム機にも使用された。
OpenRISCOpenCoresコミュニティ)
オープンソースハードウェア。ハードウェアのデザインはGNU LGPLで、モデルとファームウェアがGNU GPLでそれぞれ公開されている。
RISC-V (カリフォルニア大学バークレイ校)
オープンでフリーの命令セット。ハードウェアの実装は、企業、開発者によって行われている。
V850NEC→ルネサス エレクトロニクス)
M32R (三菱電機→ルネサス エレクトロニクス)
Atmel AVR
ESi-RISC

終息したプロセッサ

  • ROMP (IBM):世界初の商用RISCチップとしてRT-PCに搭載されたが普及せず、後のPOWERに引き継がれた。
  • i860/i960インテル
  • 88000モトローラ):ほとんど売れなかったため、モトローラはほどなくIBMのPowerPCの製造に参加した。
  • 29000 (AMD):1990年代初頭、ポピュラーなRISCプロセッサのひとつだった。PostScript プリンタのインタプリタ処理プロセッサとして広く使用された。
  • PA-RISC (HP):同社のワークステーションで使用された。Itaniumへの移行に伴い、PA-RISC搭載マシンの出荷は停止しているが、古いシステムでは2011年現在も利用されていることもある。
  • Alpha (DEC):64ビット構造を取るCPUで、ワークステーションや組み込み用途向け。RISC-CPUの中でも最速を誇ったが、1997年にインテルから11件の特許侵害を訴えられ約15億ドルの買収で和解した[8]。また同社がコンパックに買収された後、さらにコンパックはHPに買収され縮小の一途を辿った。インテルに譲渡された開発チームは各社に散り、それぞれ別のRISC CPUに携わっている。2016年6月に世界最速と評価されたスーパーコンピュータ神威太湖之光に使用されている中国製CPUのベースとなっている。

RISCライクなプロセッサ


注釈

  1. ^ 例えば、カウンタレジスタをデクリメントし、減算結果が非ゼロであればジャンプし、ゼロであれば後続の命令を実行する、ループを構成するのに便利な命令や、文字列を転送するストリング命令など
  2. ^ データの退避や復帰、割り込み発生時のレジスタの退避、サブルーチンからリターンする際のアドレスの保存など。
  3. ^ これは特別な同期命令を実行するまで、コードが存在する位置のメモリを書き換えても命令実行に影響しないということである。なぜならCPUは分離された命令キャッシュとデータキャッシュを持っているため
  4. ^ 通常のCPUでは、サブルーチンコール時にレジスタの内容をメモリのスタック領域に退避させ、復帰するときにメモリからレジスタに戻す

出典

  1. ^ RISCムーブメントが「IBM以外」で起きた、その理由 - ITMedia
  2. ^ "RISC I: A REDUCED INSTRUCTION SETVLSI COMPUTER"
  3. ^ a b ヘネシー&パターソン, p.478
  4. ^ Hisa Ando 2011, p. 128.
  5. ^ 五島正裕「20世紀の名著名論」『情報処理』46巻3号、317頁、情報処理学会、2005年3月。 これは原論文(下記)の評論である。
    David A. Patterson and Carlo H.Sequin, “RISC I:A Reduced Instruction Set VLSI Computer” Proc. Int`l Symp. On Computer Architecture, 1981, pp. 443-457.
  6. ^ Hisa Ando 2011, p. 127.
  7. ^ Hisa Ando 2011, p. 129.
  8. ^ 後藤弘茂 (1997年10月31日). “IntelとDEC、電撃提携でMPUの勢力地図が変わる”. IMPRESS PC Watch. インプレス. 2020年9月28日閲覧。


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