RAW画像 レンズプロファイル

RAW画像

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/13 06:53 UTC 版)

レンズプロファイル

  • Adobe Lens Profile (*.lcp) - アドビ製ソフトウェアで使われている形式。オープンソースのRawTherapeeもLCP形式に対応している。
  • Lensfunのレンズデータベース形式 (*.xml) - オープンソースライブラリのLensfunで使われているレンズデータベース形式。多くのRAW現像ソフトウェアがLensfunライブラリを使用している。

RAW現像プロセス

デモザイク前の補正

多くのソフトウェアは、デモザイク前に、レンズキャスト・ゴミ・周辺減光を除去するためのフラットフィールド補正 (レンズキャスト補正、シェーディング補正)を行うことが可能 (RawTherapee[13]、CaptureOne、Adobe DNG Flat Field plug-inなど)。一部のソフトウェアでは、暗電流ノイズを除去するためのダーク補正(Dark-frame subtraction) にも対応している(RawTherapee[13]など)。

また、現代的なRAW現像ソフトウェアでは、デモザイクの前に色収差補正を行うことができる (Photo Ninja[14]、RawTherapee[13]など)。

デモザイクの前のノイズ除去方式として、ウェーブレットデノイズ[15]、FBDD[15][16]、機械学習ベースの手法[17]などが存在する。

デモザイク前にHDR合成を行うことができるソフトウェアも存在する (HDRMerge[18]など)。

デモザイク

RAW画像はカメラによって異なるRGB配列の画素を持っている (BGGRベイヤー配列、RGGBベイヤー配列、GBRGベイヤー配列、GRBGベイヤー配列、FujifilmのX-Trans、RGBW配列など)。デモザイクが不要なRAW画像もある (シグマのFoveon、多板方式のCCDカメラなど)。またカメラによって、RAW画像は原色 (RGB) の画素ではなく、補色 (CMYG) の画素を持っていることもある (補色CCD)。

特殊な配列の画像はそのままでは画像処理しにくいため、解像度を保ち偽色を防ぎながら一般的なRGB配列に変換する必要がある。デモザイクには、モアレに強い方式(AMaZE[19]など)や、ノイズに強い方式(IGVやLMMSEなど)、機械学習を用いたデモザイク法 (Adobe Lightroom/Adobe Camera Rawのディテールの強化[20]、demosaicnet[2]など) が存在する。また、デモザイクと超解像度を同時に行う機械学習ベースの方法も開発されている[21]

使用するRAW現像ソフトウェアとカメラのRGB配列の組み合わせによって、使用できるデモザイクの方式が異なっている。

なおベイヤー配列のカメラにおいても撮影時に手ブレ補正機構によるピクセルシフト撮影を行うことで、動かない部分のデモザイクが現像時に不要となる(オリンパスのHi-Res Shot、PENTAXのPixel Shift Resolution、ソニーのピクセルシフトマルチ撮影 (*.ARQ) など)。RAW画像内に動きが含まれている場合は、その部分だけデモザイク等の処理を行うこととなる。

ノイズ削減 (NR)

ノイズには、ポアソン分布のフォトンショットノイズ (ショット雑音)と、ガウス分布の暗電流ノイズや読み出しノイズ、一様分布に近い量子化ノイズ (量子化誤差)が存在する[22]。ノイズの特性はカメラ及びISO感度ごとに異なるため、それぞれのノイズプロファイルの用意されているソフトウェアが存在する (Darktable[23]など)。

暗電流ノイズはダークフレーム減算によっても補正することができる。

ハイライト復元

ハイライト復元 (ハイライト再構築) を使うことで、クリップ(頭打ち)していないチャンネルの情報のみを使って、クリップ(頭打ち)したチャンネルの情報を越えて、輝度を復元できる[24]。また、クリップ(頭打ち)したチャンネルの色を復元することも可能 (RawTherapeeのColor Propagation[25]など)。

色空間の変換

モニターへの表示(モニター色空間を持つ)や、共通の表示色空間(sRGBやAdobe RGBなど)での保存のために、画像の色変換が行われている。色変換では、変換元の色空間プロファイルと変換先の色空間プロファイルを、プロファイル接続空間(PCS)により接続する必要がある[26][27]。プロファイル接続空間には主に、ISO 3664 P2観視条件(ホワイトポイントD50、照度500lx、サラウンド反射率20%)の、CIE XYZ色空間とCIELAB色空間(LUT用)が使われている[26][27]。ただしCIELAB色空間には色相の非線形性が存在するため、新たにJzazbz色空間がハイダイナミックレンジ (HDR) 画像向けプロファイル接続空間として提案されている[28]

色空間の変換には、マトリクス、1D-LUT (一次元ルックアップテーブル)、3D-LUTなどの方式が存在し、それぞれ特性が異なっている。

マトリクス方式では、ホワイトポイントの変換方法として、単純なXYZスケーリング方式の他に、LMS色空間を考慮した単純な変換方式と、それに加えて複雑な色順応も考慮した変換方式が存在する。LMS色空間を考慮した単純な変換方式には、古くから使われるBradford変換や、CIELABに最適化したCAT02変換が存在する。また、複雑な色順応を考慮した変換方式には、Bradford変換を利用したCIECAM97や、CAT02変換を利用したCIECAM02が存在する。しかしながらCIECAM02方式でも色と光源に制限が存在しており[29]、2019年には光のスペクトルを考慮した変換方式が提案されている[29]

LUTでは、メモリ使用量の関係から実データよりも荒いテーブルが使われているため、様々な方法により補間が行われている。 LUTでは、PCSを仲介しないで直接変換することも行われている。

使用するRAW現像ソフトウェアと使用するカラープロファイルの対応具合によって、使用できる色変換方式が異なっている。

なお画像圧縮では表示色空間からYUV/YCbCrICtCpなどの圧縮に向く色空間へと変換される。

露光融合とHDR結合

一部のカメラは、二つの異なる露光量を含むRAW画像(Dual ISO RAW)の撮影が可能であり、それによって更に広いダイナミックレンジの撮影が可能となっている (Canon製カメラ+Magic lanternファームウェアなど)。また、一部のカメラは、RAW画像の露光ブラケット撮影英語版 (露光量を変えながらの連続撮影) に対応している。

複数の露光量のRAW画像を一枚へと合成するために、狭いダイナミックレンジで合成処理を行う露光融合英語版 という手法[30] (Enfuse、Darktable[31]、Photomatix Pro[32]などが対応) と、広いダイナミックレンジで合成処理を行うHDR結合 (HDR merge)という手法 (Lightroom[33]/Lightroom mobile[34]、Nik Collection by DxOのHDR Efex Pro、Photomatix Pro[32]、Aurora HDR、Magic lantern用のcr2hdrなどが対応) が存在する。複数枚の画像の合成は動きによってゴーストが発生する可能性があるため、機械学習による高度な合成アルゴリズムが開発されている (HDR-Transformer[35]など)。

HDR結合を行った場合は出力がHDR画像となるため、LDR画像へと変換する際にトーンマッピングが必要となる。ただし最近はHDRディスプレイが登場し、知覚的なHDRに対応するHEIF形式[36]AVIF形式、JPEG XL形式などの画像形式も登場している。また、HDR結合した画像を3DCGの画像ベースライティング (IBL)で使用する場合には、画像を光源として扱うために太陽光の強さなどを保存する必要があり、HDR画像のまま出力することが行われている。IBLにおけるHDR画像形式では、OpenEXR形式が望ましい[37]ものの、Radiance英語版 HDR形式も互換性目的で使われている[37]

主なRAW現像ソフトウェア

最近のOSは標準で多くのRAW画像形式の簡易現像ソフトウェアを搭載している (macOS/OS X Yosemite以降のPhotos、Windows 10以降の「フォト」[38]など)。

カメラメーカー純正ソフトウェア

更新停止中

サードパーティー製汎用ソフトウェア

モバイル向け

  • Snapseed (Google) - Android用。2.1でRAW画像の編集に対応した。
  • Adobe Lightroom mobile(アドビ)- iPhone、iPad及びAndroid用。RAW画像の撮影・現像に対応している[42]。2017年には、露光ブラケットおよびHDR結合によるRAW画像でのHDR撮影にも対応した[34]
  • RawDroid (RcketScientist) - Android用。
  • Raw Decoder (TS Systems) - Android用。

開発停止中

  • Pixmantec RawShooter(Pixmantec) - 2006年にアドビが買収し、Lightroomへ機能統合する計画を発表している。
  • ArcSoft Digital Darkroom(ArcSoft、日本語版発売元:ジャングル) - 過去にはArcSoft MediaImpressionやArcSoft PhotoImpression、ArcSoft PhotoStudioなども存在した。
  • ApertureApple)- OS X専用。開発終了[43]
  • iPhoto(アップル)- Mac OS X専用。Ver.5より対応。開発終了[43]
  • Picasa (Google) - 2016年、開発停止を発表[44]

オープンソースソフトウェア

GUI

  • RawTherapee英語版(Gábor Horváth及び開発チーム) - オープンソース。無償で利用でき日本語にも対応している。Windows、macOS、Linuxに対応。ICCプロファイルだけでなく、DNGカラープロファイル (DCP) にも対応している。
  • LightZone (Light Crafts) - オープンソース。ゾーンシステムを現像・画像処理に応用。JavaベースであるためWindowsとmacOS以外にLinuxにも対応。
  • Darktable - オープンソース。Linux、macOSに対応。非公式のWindows版もある。カメラの対応状況はまちまちだが、プリセットの追加方法が用意されている[45]

コマンドライン

  • dcraw英語版 (Dave Coffin) - フリーのコマンドライン式ソフトウェア。これをベースにしたGIMP用プラグイン「UFRaw」がある。
  • ImageMagick - フリーのコマンドライン式ソフトウェア。RAW形式の読み込みにも対応している。

  1. ^ http://www.microsoft.com/ja-jp/download/details.aspx?id=26829
  2. ^ ソニー、α9・α7R IIIの最新仕様を取り入れたベーシックモデル「α7 III」 Impress 2018年2月27日
  3. ^ sRGB インターナショナル・カラー・コンソーシアム
  4. ^ Adobe RGB (1998) インターナショナル・カラー・コンソーシアム
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  41. ^ Skylum Acquires Photolemur, Opens Up AI Lab Emerald Expositions 2018年5月23日
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  2. ^ (log2(160)+3)-(log2(0.5557)+3)=8.1695… (en:Exposure value#EV as a measure of luminance and illuminanceの式を使用)
  3. ^ フェーズワン社のデジタルバックはJPEG撮影・現像機能を持っていないため、JPEG画像にするには必ず当ソフトで現像しなければならない。
  4. ^ Windows 7及びVistaではMicrosoftカメラコーデックパックが、Windows XPではMicrosoft RAW Image Thumbnailer and Viewer for Windows XPが必要となっていた。






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