JR四国8600系電車
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改良・改修
量産先行車による走行試験時に、曲線が連続する区間で元空気溜圧が想定以上に低下する事象が発生した。このため、以下の改良が量産車で行われ、量産先行車についても改修が行われている[14]。
- 傾斜を行う曲線の見直しなど、制御を行う区間の見直し
- 空気タンクを330リットル/両から710リットル/両となるよう増設
- 台車補助空気室の容量変更(45リットル→35リットル)
この改良に伴い、8600形、8750形では空車重量が量産先行車落成時と量産車とでそれぞれ0.3tずつ増加している[7][8]。
運用
2022年3月12日ダイヤ改正時点では、本系列は「しおかぜ」「いしづち」の宇多津駅 - 松山駅間併結列車(以降、「しおかぜ・いしづち」と記述)と「いしづち」単独列車の上り2本、下り1本、「モーニングEXP松山」下り1本に使用される。
うち、「しおかぜ・いしづち」については所定の編成が7両編成(7号車が欠車)となっている列車に3+2+2両で、「いしづち」単独列車については102号と103号が2+2の4両編成、106号と「モーニングEXP松山」が「しおかぜ」用の3両編成で運用される。
ただし、予備車が3両1編成しかないため、「いしづち」となる2両編成が検査で欠けるときは3両編成で代替した3+2+3の8両編成で運転される(そのため、この場合グリーン車が2両となる)[20]。
また、ゴールデンウィークやお盆などの多客期は輸送力確保の観点から「しおかぜ」8両編成をそのまま岡山に直通させるため、予備車を使っても8両編成で運転できない列車については8000系の8両編成が代走し、代走で余った車両や高松運転所所属の特急用車両が「しおかぜ」・「南風」との分割併合を中止された「いしづち」・「しまんと」の高松駅 - 宇多津・多度津駅間に2・3両編成で充当される[21][22]。
四国以外でもJR西日本においても入線実績があり、2017年には宇野線を経由して伯備線において新型車両導入を前提としたデータ取得のための試験車両として借り出された[23]ほか、2019年には営業運転で初めて備中高梁駅まで運行された[24]。
2024年(令和6年)3月3日より、「瀬戸大橋線ご利用3億人キャンペーン」の一環として、同キャンペーンのロゴを当車両の側面に掲出。掲出期間は、同年12月頃まで(予定)。なお、掲出対象は当列車の8701~8703号 である[25][26]。
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8600系で運用される「いしづち」/「しおかぜ」(2016年3月28日)
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多客期には8両編成で岡山に直通する「しおかぜ」(2022年1月2日)
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8600系で運用される「いしづち号」(2023年5月28日)
沿革
- 2014年(平成26年)
- 2月27日:量産先行車2両編成2本が川崎重工業で落成し、同日から2月28日にかけて高松貨物ターミナル駅まで甲種輸送[27][28]。
- 3月5日:高松運転所で報道公開。翌3月6日付で松山運転所に配置。その後、各路線において基本性能の確認のための走行試験や曲線通過性能の確認とブレーキ試験のための走行試験を実施[29]
- 6月23日:高松駅 - 松山駅間の特急「いしづち」1往復(103・104号)で営業運転を開始[30]。ただし、車両の試験や検査等の関係から、7月1日以降は原則として水曜・木曜の「いしづち103号」と、火曜・水曜の「いしづち104号」は2000系が代走することとした[4]。
- 9月:同月末からは車両試験でデータの取得が完了したことから、運休日をなくして平日4両編成、土休日2両編成で運用[4]。
- 2015年(平成27年)
- 2016年(平成28年)
- 2017年(平成29年)
- 2018年(平成30年)
- 2022年(令和4年)
- 3月12日:同日のダイヤ改正により、充当列車が「しおかぜ・いしづち」4往復、「いしづち」102・103・106号、「モーニングEXP松山」に変更される。
- 2023年(令和5年)
- 4月9日:瀬戸大橋開業35年を記念して8701の車体側面に記念ラッピングが施された。
注釈
- ^ 量産先行車は空車編成重量79.9t
- ^ このほか、量産先行車では各車側面窓上に「SHIOKAZE / ISHIZUCHI EXPRESS」・「SHIKOKU RAILWAY COMPANY」のロゴが入っていたが、量産車では省略された。
- ^ 8000系の蛍光灯照明と比較して56%程度の消費電力削減を図っている。
- ^ 全閉外扇形三相かご形誘導電動機は、東洋電機製造製としては初の量産型である。
- ^ 一般に曲線通過中の左右定常加速度が0.08Gを超えると立った人の5~10%が「乗り心地が悪い」と感じるとされている。
- ^ 本則とは、国鉄の運転取扱基準規程第121条2項の線路の分岐に接続しない曲線における曲線半径別制限速度を指す。JRの運転規則においては、曲線における電車・気動車の基本の速度、あるいは基本の速度イに相当する。
- ^ キハ201系・261系では後年運用の見直しにより、車体傾斜装置を停止・非搭載としている。
- ^ 制御付自然振子車両では、あくまで車体傾斜は遠心力を利用し、制御は自然振子の挙動の補助に用いるため、仮に制御が行われない、あるいは誤った制御指令がなされた、としても逆側へ動作することはなく、単に車体傾斜に振り遅れが生じるのみで、乗り心地の若干の悪化にとどまる。
- ^ 過去に基本編成に4両編成が存在し、後年の改造で付属編成は2両編成でも運用されている。
- ^ 量産先行車落成時は41.6t
- ^ 量産先行車落成時は38.3t
- ^ これに伴い、2000系を使用していた「しおかぜ」「いしづち」の宇和島駅直通列車は松山駅で「宇和海」と系統分割された。
出典
- ^ a b c d 『東洋電機技報』通巻130号、p.22
- ^ a b c d e f g h i 『東洋電機技報』通巻130号、p.24
- ^ 『特急形直流電車の新製について』(プレスリリース)四国旅客鉄道、2013年11月25日。 オリジナルの2013年12月4日時点におけるアーカイブ 。
- ^ a b c d e f 『鉄道ジャーナル』通巻585号、pp.24-35
- ^ a b 『鉄道ジャーナル』通巻571号、p.58
- ^ “JR四国8600系特急型直流電車(量産先行車)を公開。(インターネットアーカイブ)”. 鉄道ホビダス 編集長敬白 (ネコ・パブリッシング). (2014年3月7日) 2014年11月7日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 『鉄道ファン』通巻638号、pp.60-66
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab 『鉄道ファン』通巻657号、pp.65-69
- ^ a b c d “8600系<特徴>” (PDF). 8600系. 四国旅客鉄道. 2017年6月17日閲覧。
- ^ 『東洋電機技報』通巻130号、p.23
- ^ a b c d e 『鉄道ジャーナル』通巻571号、p.59
- ^ a b 『三菱電機技報』第89巻第1号、p.10
- ^ a b c d e 『東洋電機技報』通巻130号、p.25
- ^ a b c 『鉄道ジャーナル』通巻602号、pp.40-43
- ^ 『鉄道ジャーナル』通巻602号、pp.44-56
- ^ a b 『計測と制御』第56巻第2号、pp.123-126
- ^ 『新型特急形直流電車のデザイン及び主な仕様』(プレスリリース)四国旅客鉄道、2013年11月25日。 オリジナルの2013年12月4日時点におけるアーカイブ 。
- ^ “JR四国8600系特急形直流電車の量産車報道公開。(インターネットアーカイブ)”. 鉄道ホビダス 編集長敬白. (2015年10月21日) 2016年2月20日閲覧。
- ^ a b 米澤 和志 (2018年1月30日). “JR四国8600系E3編成が甲種輸送される”. railf.jp(鉄道ファン) (交友社) 2018年3月2日閲覧。
- ^ a b 西山 公章 (2018年3月14日). “JR四国8600系が8両で運転される”. railf.jp(鉄道ファン) (交友社) 2018年3月17日閲覧。
- ^ a b “8600系による特急"しまんと"運転”. railf.jp(鉄道ニュース). 交友社 (2015年8月15日). 2016年8月17日閲覧。
- ^ a b “【JR四】予讃線・繁忙期の話題”. 鉄道ホビダス(RMニュース). ネコ・パブリッシング (2016年8月19日). 2016年10月19日閲覧。
- ^ “カーブ克服して速度アップ「振り子式車両」の進化 新技術搭載の「やくも」は従来車とどう違う?”. 東洋経済新報社 (2023年11月24日). 2023年11月24日閲覧。
- ^ 内田 貴雄 (2019年2月18日). “JR四国8600系による団臨が伯備線に入線”. railf.jp(鉄道ファン) (交友社) 2019年6月20日閲覧。
- ^ “瀬戸大橋線ご利用3億人キャンペーンの開催について”. JR四国(四国旅客鉄道株式会社). 2024年1月31日閲覧。
- ^ “マリンライナーなど 瀬戸大橋線利用3億人ヘッドマーク・ロゴ 掲出”. 鉄道コム. 2024年1月31日閲覧。
- ^ “JR四国8600系の量産先行車が甲種輸送される”. railf.jp 鉄道ニュース (交友社). (2014年2月28日) 2014年11月7日閲覧。
- ^ “【JR貨+JR四】新型特急車輌8600系甲種輸送される”. 鉄道ホビダス RMニュース (ネコ・パブリッシング). (2014年2月27日) 2014年11月7日閲覧。
- ^ “JR四国8600系の試運転が始まる”. railf.jp 鉄道ニュース (交友社). (2014年3月7日) 2014年11月7日閲覧。
- ^ 『新型特急電車「8600系」の営業運転開始、試乗会並びに展示会の実施について』(プレスリリース)四国旅客鉄道、2014年5月21日。 オリジナルの2014年5月21日時点におけるアーカイブ 。
- ^ “特急“いしづち”104号が8600系6両編成で運転される”. railf.jp 鉄道ニュース (交友社). (2016年2月7日) 2016年2月8日閲覧。
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- ^ 行俊 嘉洋 (2017年7月29日). “JR四国8600系E1編成が伯備線で試運転”. railf.jp(鉄道ファン) (交友社) 2017年8月2日閲覧。
- ^ 松崎 大輔 (2017年9月14日). “JR四国8600系が再び伯備線で試運転”. railf.jp(鉄道ファン) (交友社) 2017年12月4日閲覧。
- ^ 二宮 幸嗣 (2018年2月15日). “8600系E3編成が営業運転を開始”. railf.jp(鉄道ファン) (交友社) 2018年3月2日閲覧。
- ^ 『平成30年3月ダイヤ改正について』(PDF)(プレスリリース)四国旅客鉄道、2017年12月15日 。2017年12月16日閲覧。
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