響きと怒り
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/26 04:08 UTC 版)
文学的重要さと読者の受け入れについて
この小説は批評家から絶賛され、アメリカの小説の中でも最高傑作の中に据えられている。ウィリアム・フォークナーが1949年にノーベル文学賞を受賞する要因になった。
この小説が受け容れられたのは、フォークナーが人の心の思考パターンを再生するために使った構成テクニックに由来するところが大きい。それは意識の流れと呼ばれる技法の基本を発展させたものだった。
フォークナーの作品の大半と同様、『響きと怒り』は南部を全体的に象徴化するものとして読まれてきた。フォークナーは古き南部の理想とするものが南北戦争後の時代に維持され保存されるかという疑問に関わってきた。この見方では、コンプソン家の崩壊は伝統的な道徳の浸食に関する試験であり、現代の無力感によってのみ置き換えられると解釈できる。最も人の心に訴える登場人物はキャディとクウェンティンであり、最も悲劇的でもある。この2人は生きてきた社会の価値を拒絶してその流れの中では生き残れない。残ったのは魅力は無いが完全に実用的なジェイソンであり、小説の終幕で描かれるように以前の姿を維持している。
ジャン=ポール・サルトルがフォークナーに関するその有名な随筆の中で述べているように、この小説には実存主義の香りもある。登場人物の多くは古典文学、聖書など文学作品に出典を求められる。クウェンティンは(『死の床に横たわりて』のダールと同様)ハムレットに、キャディはオフェリアにヒントを得たと考える者がいる。ベンジャミンという名前は創世記に出てくるヨセフの弟から採られている。
映画化について
『響きと怒り』は何度か映画化されている。最初の作品は1959年に公開された。監督はマーティン・リット、出演はユル・ブリンナー、ジョアン・ウッドワード、マーガレット・レイトン、スチュアート・ホイットマン、エセル・ウォーターズ、ジャック・ウォーデンおよびアルバート・デッカーである。日本公開題は『悶え』。この映画は小説とほとんど似ていなかった。また、2014年にはジェームズ・フランコが監督と主演を兼任して映画化された。
脚注
出典
- ^ シエークスピヤ「第五幕 第五場」『沙翁傑作集(マクベス)』 10巻、坪内逍遙 訳、早稲田大学出版部、172頁。doi:10.11501/979379 。2022年11月26日閲覧。
- ^ "マクベス:第五幕 第五場". 物語倶楽部. 2004年9月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2004年9月28日閲覧。
- ^ フォークナー 1971, p. 421.
- ^ フォークナー 1971, p. 334.
- ^ フォークナー 1971, p. 551.
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